BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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徳山クイクラTOPICS 5日目

シリーズ戦・準優ダイジェスト

若さゆえ

8R
①喜多須杏奈(徳島) 16
②堀之内紀代子(岡山)05
③魚谷香織(福岡)    05
④落合直子(大阪)    07
⑤中川りな(福岡)      14
⑥向井美鈴(山口)      16

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 地元の選手班長・向井が3度目の6号艇も前付けに動いたが、内5人がすべて抵抗するのを見てダッシュ戦法にスイッチ。1234/56の枠なり4対2に落ち着いた。こうなるとインが有利としたものだが、喜多須がスタートで後手を踏む。コンマ16だからとして遅れたわけではないのだが、外のスロー3艇がゼロ台まで突き抜けてしまった。

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 ↑こんなスリット隊形になってしまえば、まくり屋・堀之内の血が騒がぬわけはない。1艇身近いリードを保ちながらジリジリ喜多須に艇を被せ、ハンマーで脳天をカチ割るようなジカまくりを決めた。さすがのまくり屋・堀之内、40歳にして惑わず!
 準優のハイライトと言うべき2着争いは、4コースから最内を差した落合が力強く抜け出した。3本の引き波を越えてから出て行くレース足は、一番差しの魚谷のそれを上回っていた。

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 そして……1マークで叩かれつつ必死に追い上げた喜多須は、2周1マークのハンドルに焦りが伝わり大きくバランスを崩して落水。罰ゲームではないが、自力でボートに再乗艇してすごすごとピットに帰還した。スタートもこの落水も、経験の浅さが露呈したと言うべきか。この苦い経験をびしょ濡れの身体に詰め込み、明日からのスキルアップの糧としてもらいたい。

Zombie22

9R
①池田紫乃(長崎)     08
②金田幸子(岡山)     12     
③平田さやか(東京) 09
④渡辺千草(東京)     09
⑤竹井奈美(福岡)     10
⑥水口由紀(滋賀)     14

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 妙な光景を目の当たりにしてしまった。1マークで3コースの平田が完全にまくりきった、はずだった。それはツケマイ気味のまくりだったから、これをモロに喰らったイン選手は引き波に足を取られてズルリ失速する、はずだった。

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 だがしかし、ツケマイを浴びた池田は直後に何事もなかったかのように加速して行った。ぐんぐん加速して、まくりきったはずの平田を2マークの手前で楽々捕えきっていた。ちょっとありえない。死んだ人間が蘇って他の人間に襲い掛かるゾンビ映画のような光景だった。その不自然な現象に理由を付けるならばただひとつ。

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 圧倒的なパワー差。
 これしか考えられない。2連率が26%しかなかった池田22号機は、今節がはじまってから日に日にモンスター化し、ついには無敵のゾンビになった。常に中堅上位レベルで戦ってきた平田は、わずか200mほどの直線で餌食になってしまった。追いかけてきた相手が池田だと知った平田は、背筋にサブイボを立てたかも?(笑)
 さてさて、ありえないほどのパワー差で逆転の1着をもぎ取った池田。とは言え、10Rの山川が逃げきってしまえば、優勝戦は2号艇止まりだったのだが……。

ピグモンの限界

10R
①山川美由紀(香川)11
②細川裕子(愛知) 14
③川野芽唯(福岡) 16
④廣中智紗衣(東京)20
⑤藤崎小百合(福岡)17
⑥出口舞有子(愛知)16

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 山川が逃げきればファイナル1号艇。それを知っている全国のファンは、もちろん山川のアタマ舟券に群がった。そして、絶妙なトップスタートから例によって悠然と逃げきったかに見えたのだが……。
 ここにも驚くほどのパワーを秘めた人機が存在した。細川53号機! 1マークを先取りして旋回した山川と2コースから差した細川の出口での差は約2艇身。イン逃げではよくある差で、逆に言えば逆転がほぼありえない差だった。

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 そこからだ。細川の舳先だけが伸びるわ伸びるわ! スリット裏あたりで舳先をぶっ込み、さらにグイグイとこじ入れ、2マークではほぼ同体。この怪パワーは直後の攻防でも発揮される。2マークに寄り過ぎた細川がハンドルを切り直し、山川が百戦錬磨の差しハンドルで肉薄。完全に再逆転するパターンに見えたものだが、そこから嘘のように伸びて行ったのは細川の方だった。

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 はい、このレースには私が前検から「怪獣パワー」と謳った芽唯32号機も混ざっていたのだが、真の大怪獣パワーは細川53号機だったと認めますっ!! 芽唯=ピグモンに対して、コッチはキングギドラ級の行き足でありました。で、この大怪獣が暴れ回ったことで、明日の1号艇は山川→池田にシフトした。イン戦での取りこぼしが多い池田のゾンビパワーに対して、細川キングギドラがどんな攻撃を仕掛けるか。優勝戦がスリット同体になったら、1~2マークあたりで『ゾンビvsキングギドラ』の激突を目の当たりにすることになるはずだ。かなりB級映画っぽいタイトルではあるな。

 

トライアル第3戦ダイジェスト

スピード決着!!

11R 並び順
日高逸子(福岡)07
②守屋美穂(岡山)28
③田口節子(岡山)19
④遠藤エミ(滋賀)08
⑥大山千広(福岡)08
⑤香川素子(滋賀)11

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 守屋か遠藤が1着を獲ったら得点トップ確定。「事実上のファイナル1号艇決定戦」と目されていたこのレース、ふたりの直接対決はあっけないほどシンプルにケリがついた。スリットラインで↑御覧のとおり守屋がドカ遅れ! 行き足のない3コース田口も遅れてしまっては、ゼロ台まで踏み込んだ4カド遠藤がこのチャンスを逃すはずもない。スリットから迷うことなく遅れた2艇を絞めまくり、インの日高を先に回して正確無比なまくり差しハンドルをぶっ込んだ。

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 ファイナル1号艇、確定!!
 グランプリの石野がそうだったように、こちらのトライアルも遠藤がカドから自力の猛攻撃でポールポジションを鷲づかみにした。
 混戦の2着争いから抜け出したのは、インからしぶとく粘った日高。が、2着=トータル19点ではボーダーには届かない。その後方では、16点で並ぶ大山と香川が熾烈な3着争いを演じた。圧巻は3周1マーク。5艇身ほど先行した大山に対して、香川が絶妙な切り返しで反撃。その1周前の2周1マークでは香川の切り返しを全速の抱きマイで交わした大山だったが、ここは完全に迷った。握るか、差すか。レバーを握る手がフリーズしている間に、前を遮った香川が悠々と3番手を取りきった。それほど香川の切り返しは巧妙にして老獪だったし、ファイナルの枠番を踏まえても大きな逆転劇と言えるだろう。

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 勝てばファイナル1号艇だった守屋は、見せ場すら作れず4着に敗れた。痛恨すぎるスタート遅れではあったが、最終ターンマークで大山をギリギリ交わしたのは目立たぬファインプレイ。12Rの結果を踏まえて言うなら、ファイナル5号艇→2号艇に大ステップアップする“ハナ差”の4着となった。なんとなんと、明日は4戦連続の2号艇!! 今日の反省&悔しさも水面に反映されるはずで、怖い怖い黒カポックと言えるだろう。
 そして、3戦連続の3号艇3コースだった田口は、今日もまったくレースに参加できずに6着大敗。前評判の高かった75号機は、一度たりとも高らかな咆哮を発することなくV戦線から消え去った。

ド根性のイン逃げ

12R
①今井美亜(福井)02
長嶋万記(静岡)08
③小野生奈(福岡)09
松本晶恵(群馬)11
⑤平高奈菜(香川)08
⑥寺田千恵(岡山)18

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 予想はしていたが、北陸の女勝負師はスタート勝負に打って出た。コンマ02の大博打! そして、このパワー劣勢を自覚してのギャンブルは、しっかりとスリット~1マークに反映された。半艇身近く遅れた2コース長嶋がグングン行き足を伸ばしたが、舳先を並べたところで1マークに。その長嶋を壁にしてターンマークを先取りした今井が、出口で2艇身ほどのアドバンテージを築いた。その後の長嶋の猛追撃を振り切ったのも、コンマ02があればこそ。初戦の「見る前に飛ぶ5コースまくり差し(2着)」も含めて、よくぞこの劣勢パワーでファイナルに進出できたものだ。凄まじい勝負根性に拍手を送るしかない。

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 今井が1着の安全圏に到達し、ファイナルのチケットは5人の手に配分された。11Rの遠藤、守屋、香川と、このレースの寺田と1着濃厚な今井。残る1枚を巡る勝負駆け条件は「小野と平高が②着、松本は大逆転の①着」という感じで、もちろん諦める選手はいない。2マークでは松本が強烈な切り返しで長嶋に迫ったが不発。4番手の小野もあの手この手で飛び級の2着を狙う勝負手を繰り出していた。そのすべてが不発で、最終コーナーではターンマークに衝突し、後続の寺田にも抜かれて5着。F2で苦しみ続け、長期休養明けで臨んだ今節の小野は、レース感覚を取り戻すヒマもなくV戦線からこぼれ落ちた。来年こそは、生奈らしい粘り強くてキレのあるレースを魅せてくれることだろう。

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 5番手から最後に4着まで浮上した寺田61号機は、その逆転で同じくファイナル5号艇→4号艇に“出世”した。前付けのない寺田だけに、このワンランク昇格はかなり大きい。明日は4カド想定からどれだけ61号機の自慢の行き足を活かしきれるか。5コースよりはるかに怖い存在と言えるだろう。

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 さてさて、小野、平高(見せ場なく6着)、松本らの勝負駆けが失敗に終わり、ラストチケットは11R5着で結果待ちだった大山千広に手渡された。賞金ランク1位の大山としては最低限のノルマを果たしたとも言えるが、もちろん最後のそれは6号艇。でもって現状のパワー評価は、優出6人の中では5、6番手だと見積もっている。ここ一番の勝負強さと天性のスピードを武器に、これらの逆境からどこまで諸先輩を打ち倒せるか。23歳の挑戦を見守るとしよう。(photos/シギー中尾、text/畠山)