BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎バトルトーナメントTOPICS 2日目

 まずは、復活戦のMVPから。

今日の復活ヒーロー
☆徳増秀樹(静岡) 7R3号艇=1着

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 あの濃いぃ男が地獄から還ってきた! 昨日のトライアル4着で復活戦に“降格”した徳増秀樹。1着ならばファイナル6号艇のチャンスが生じる7Rは、④西島の前付けを招き入れて4カド選択。他の5艇がコンマ12前後の横並びの中、ただひとりコンマ04!!(おそらく全速)まで突っ込み、そのまま一気に絞め込んでイン木下翔太まで呑み込んだ。これぞ1着勝負駆け!
 すでに速報でアップした通り、続く8Rで徳増と並ぶチャンスを有していた2選手が脱落。⑥山本浩次に至っては、回り直しの6コース単騎ガマシから気合が入り過ぎてのフライング欠場。しかもコンマ06のハミ出しで、残念ながら即日帰郷となった。
 この結果を受けて、誰よりも早く徳増のファイナル入りが確定。6号艇というもっとも険しい枠番ではあるが、「大一番の緑カポック」はお手の物。明日も特訓&スタート展示から前付けに動き、十八番の枠なりオールスロー、はたまたセンターあたりまで潜り込んで優勝を目指すことだろう。とにもかくにも、天晴れすぎる起死回生のカドまくりに拍手を送りたい。

 でもって、セミファイナルのダイジェストへ。

地元サバイバル

9R
①白石 健(兵庫)18
②野村 誠(群馬)18
③毒島 誠(群馬)22
④新田雄史(三重)13
⑤篠崎仁志(福岡)24
⑥金子龍介(兵庫)32

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 昨日に続く前付けが予想された選手班長・金子は、内艇の徹底抗戦を見てギブアップ。すんなりの枠なり3対3に落ち着き、4カドを得た新田が突出したスタートを見せた。
 すわ、7Rの徳増ばりの大技炸裂か!?

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 そんなスリット隊形ではあったが、カド受けの毒島が舳先ひとつで新田の猛攻をブロック。2~4コースが玉突き状態になっている間に、地元の白石がインコースから鮮やかに抜け出した。この1着でファイナル1~4号艇の抽選権をGET。12R後のスーパーあみだマシーンに身を委ねることになった。尼の番長、もとい、選手班長の金子はまさかのドカ遅れで圏外に去ったが、地元の後輩のファイナル入りにホッと胸を撫で下ろしたことだろう。
 一方、ファイナル5号艇を巡る2着争い(昨日のトーナメント着順上位者が有利)は、接戦の末に新田が先着。ただし、昨日の新田は3着(セミファイナル組では最下位)だったため、極めて厳しい結果待ちを余儀なくされた。

サプライズボーイ

10R
①浜先真範(広島)26
②末永祐輝(山口)29
吉川元浩(兵庫)27
④福田宗平(大阪)19
⑤柳沢 一(愛知)17
⑥桑原 悠(長崎)20

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 9Rの4カド新田は不発に終わったが、このレースの福田は豪快な大技を決めた。スロー3騎が揃って凹んだ(9Rあたりから吹きはじめたホーム向かい風の影響か)のを横目に、4カドから地元の吉川を体当たりで蹴散らす絞めまくり! 新概念データによれば、直近1年間の福田の4コースは【まくり0勝/差し1勝】とかなり冴えない数字なのだが、全国発売の檜舞台で会心の「まくり1勝」を記録したわけだ。

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 意外性の男。
 そう、確かに福田宗平はこうしたサプライズな一面を持っている。2013年6月にはデビュー1年ちょいで初優出&初優勝! 6コースからコンマ04、豪快なまくり一撃で鳴門の観衆を驚かせた。同県同期の花形スター上條暢嵩の初優出が2015年、初優勝が2016年だったことを考えれば、まさに超サプライズな水神祭ではあった。
 去年のヤングダービーでのファイナル2号艇(3着)もあっと驚くような躍進ぶりだったし、「色物シリーズ」で火事場の馬鹿力を発揮するタイプなのかも? 12R後のあみだ抽選で、またしても2号艇となった福田。この「ボートレース界でもっとも有名な一般シリーズ」で、全国のファンを驚嘆させるスーパープレイをやらかすかも??
 さてさて、ファイナル5号艇を巡る2着争いは、9Rの新田と同じく昨日3着だった柳沢が競り勝った。これまた首筋の寒い結果待ち。11Rか12Rで昨日のトーナメントの1・2着選手が2着に入った時点で権利は消滅してしまうのだが……。

トリプルエース!

11R
①栗城 匠(東京)16
②竹井奈美(福岡)21
③遠藤エミ(滋賀)15
④興津 藍(徳島)16
菊地孝平(静岡)16
三嶌誠司(香川)21

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 昨日に続いて栗城が危なげなく逃げきった。もちろん2戦ともに枠番抽選に恵まれたインコースではあったが、24歳の度胸満点の逃げきり連発は賞賛に値する。
 スタート&度胸。
 そう、これが私の胸中にある「栗城匠」という小さな引き出しの大部分を占めている。同県(都)同期のエリート宮之原輝紀は、天性のスピードと冷静沈着な判断力で成績を伸ばした。一方の栗城はやまと学校の時代からFや転覆などの事故を多発し、デビューしてからもそれらを恐れることなくスリットのキワ、ターンマークのキワまで攻めるレースに徹した。その刹那的なレースっぷりは私の好むところでもあり、勝手に心の中で「宮之原は太陽、栗城は月」などと思うようにもなった。そんな栗城がF2持ちで……

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 おっと、小さな引き出しの中身を、今日の時点で使い果たすわけにはいかないぞ。レース後のあみだ抽選で、栗城は3戦連続の白玉を引き当ててしまった。明日の1号艇はこの2戦よりはるかにハードルの高い戦いになるはずだ。一般シリーズとはいえ全国発売のスペシャルな優勝戦、逃げればデビュー初V&年末のプレミアムGI権利獲得、外枠に聳えるGP覇者の二枚看板……3日前までついぞ直面するとは思っていなかったであろう重圧が、24歳のA2レーサーに襲い掛かる。これに耐えられるか。
 耐えられる。
 私はそう思う。栗城匠はスタート&度胸の男なのだから。明日のために、小さな引き出しを出し惜しみする価値はきっとある。うーーん、こう書いた時点で明日の◎が決まったようなものだが(笑)、今日のところは話の途中で勘弁していただきたい。
 さて、2着=ファイナル5号艇争いは、このレースで転機を迎えた。昨日のトーナメントで2着だった興津と遠藤がデッドヒートを演じ、最後の1周で興津が競り勝った。この時点で9R新田と10R柳沢の権利が消滅し、「興津か12Rの2着選手」のどちらかに絞られた。その勝負駆けは速報でもアップしたとおり
★12Rのファイナル5号艇勝負駆け
 昨日1着だった③落合、⑥峰は2着を獲れば自力確定
 昨日2着だった①石野、⑤瓜生が2着なら興津と抽選
 という感じだったのだが、最後に生き残ったのは??

アロハすぎる男

12R
石野貴之(大阪)15
②吉田拡郎(岡山)20
③落合直子(大阪)28
中越博紀(香川)19
瓜生正義(福岡)14
⑥峰 竜太(佐賀)07

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 こ、こ、これぞ千両役者、これぞお祭り男、これぞMr.バトルトーナメント!! 昨日に続いて峰がミラクルな勝負駆けをやってのけた。まず、ピットアウトから前付けに動いてみたが、他艇のブロックを浴びてダッシュへ作戦転換。峰につられて内4艇が早めにホーム水面に侵入したため、最終隊形は1234/56となった。
 そして、峰は行った。6コースから怒涛のコンマ07!! すぐに中凹みの隊形に気づいたであろう峰は、スリットで覗いた瞬間に舳先を左に傾けた。2着でも明日の5号艇が確定する身の上ではあったが、もちろん1着しか狙っていなかったはずだ。
 まくられたら一巻の終わりの5カド瓜生も黙ってはいない。峰の絞めまくりを身体半分でブロックしつつ、自らがロケット砲となって中凹みのスロー勢に襲い掛かる。さすがの速攻力。瓜生がイン石野まで叩き潰し、それに連動した峰がマーク差しを捩じ込んでバックは一騎打ち。ストレートの伸び比べは明らかに峰が上回り、舳先をズンズン突き入れて2マークを豪快にぶん回した。

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 2戦連続の6号艇1着! 形としてはマーク差しになったが、超絶のスタートを決めて瓜生を圧迫して強引に攻めさせて空いたスペースにズドンと舳先を突っ込んで……演出・主演ともに峰竜太としか言いようのないワンマンショーだった。連日、これだけド派手な活躍をしながらファイナルの枠番抽選が4号艇(今日の1着選手の中では大外!)というのも峰らしい。もちろん、そろそろこの特別な一般シリーズの頂点に立って「真のMr.バトルトーナメント」と呼びたい気持ちも山々なのだが、なんとなく明日も準V止まりな気がしてならないのは私だけだろうか(笑)。

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 一方、峰の伸び足に屈して2着に甘んじた瓜生は、11Rの興津と同じ「2着→2着」に。レース後の抽選でギリギリなんとか「当たり」をゲットし、ファイナル5号艇の座を掴み取った。明日も6号艇の徳増をブロックしつつ、という気苦労の絶えない最終バトルになりそうだが、「峰の外」という逆の立ち位置からリベンジ可能な枠番とも言えるだろう。(photos/チャーリー池上、text/畠山)