BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

整備も試運転も全力投球の初日後半のピット

f:id:boatrace-g-report:20200303175325j:plain

f:id:boatrace-g-report:20200303175341j:plain

 鳴門ピットのボートリフトは2艇しか乗ることができず、レース後は3回に分けて帰還することになる。それも装着場のずっと奥にあるので、特に何事もなければ1着と2着、3着と4着、5着と6着が揃って奥のほうから戻ってくるかたちとなるわけである。
 9R、2組目で戻ってきたのは土屋実沙希と喜多須杏奈。エンジン吊りが終わると、二人は言葉を掛け合ってカポック着脱場へと向かった。このレース、1周2マークで先行する土屋に喜多須が突進を仕掛け接触、先頭をうかがっていた土屋は後退している(喜多須は不良航法)。その当事者同士が、遺恨なく会話を交わしていたのだ。
 リプレイを映し出したモニターの前にも揃ってあらわれた二人。問題の1周2マークを映し出し、その様子を見た喜多須が即座に「ごめんごめん」と謝った。うなずく土屋。その後は二人で感想戦に突入。お互いに、あれはレースのアヤだったとわかっていて、完全にノーサイド状態なのだ。

f:id:boatrace-g-report:20200303175404j:plain

f:id:boatrace-g-report:20200303175420j:plain

 似たようなシーンは、10Rでもあった。小野生奈と中谷朋子だ。小野は3着、中谷は5着だったので、戻ってくるタイミングは別々ではあったが、モニターの前には自然と並んで立っていた。1周2マーク、小野が展開を突こうとターンマーク際を旋回した時、内から小回りに来ていた中谷とわずかに接触したのだ。その場面が流れると、まず小野が中谷に頭を下げた。すると中谷も小野にゴメンと言葉をかけている。小野は「いえいえいえ」と返し、やはり完全ノーサイド。1つのターンマークを複数艇が旋回するのだから、いろんな事象が起こる。それを認識している選手たち、相手に他意がないと知れば納得して終われるということだろう。

f:id:boatrace-g-report:20200303175501j:plain

 11Rは寺田千恵が1着。出迎えた岡山勢が走ってボートを装着場まで運び、寺田はゆったりと歩いて戻ってきた。さすがの貫録! 寺田は、やはり走ってボートを運んでいた魚谷香織とその仲間たちよりも遅れて、装着場に入った。今節は登番が上から2番目、そして史上初の女子SG優出選手というレジェンドである。その風格はやはり一枚も二枚も上である。と思ったら、「陸の上ではあんたたちに置いてかれるばっかりよ~」だって(笑)。たしかにテラッチ以外の岡山勢は若手が多いわけだが(田口節子は10R終了後に1便で帰宿していた)、そんな自虐しなくても大丈夫っすよ~。そんな寺田の優しく、また厳しくもある背中を見て、岡山レディースは強くなるのですね。

f:id:boatrace-g-report:20200303175610j:plain

 整備室では、津田裕絵が本体整備を行なっていた。今日の津田は1走5着。6号艇ではあったが、大敗は大敗。明日からの巻き返しに全力を尽くす。同じテーブルで塩崎桐加も整備していた。今日はゴンロクを並べてしまっただけに、上積みは急務と言える。明日は1号艇が回ってくるだけに、万全の態勢で臨みたい。

f:id:boatrace-g-report:20200303175637j:plain

f:id:boatrace-g-report:20200303175653j:plain

 プロペラ調整所では、西村美智子、加藤綾、藤崎小百合が言葉を交わしていた。95期! 今回は木村紗友希が出場を逃しているが、この4人はまさに人気者カルテット。そしてピットでも本当に仲良しだ。男子では峰竜太が同期生ですね。それぞれがそれぞれを刺激し合い、またアドバイスも送り合って、お互いを高め合う。120期も出場している今節ではすでに中堅、それよりもやや上という世代ではあるが、いずれもまだまだ若い! 加藤と西村は苦戦の初日となったが、明日からも元気いっぱいの走りを見せてもらいたい。

f:id:boatrace-g-report:20200303175729j:plain

 装着場では、西橋奈未がボートを丁寧に磨いていた。鳴門では、艇運の係の方がボートに水をかけ、それをきれいに拭き取っていて、本来は選手自身が改めて磨く必要はない。それでも西橋は、きれいに磨き上げていた。これが西橋のルーティンなのだろう。西橋は福井支部石川出身。同支部同出身の今垣光太郎もまた必ずボートを磨き上げる男で、西橋の姿を見て光ちゃんを思い出したりして。西橋の師匠は松田祐季なので、別に今垣の教えというわけではないだろうけど。西橋には光ちゃんのような活躍をいずれ期待したい!

f:id:boatrace-g-report:20200303175754j:plain

 それにしても、女子戦では遅くまで試運転に励む選手を相変わらずたくさん目にする。今日も登番3000番台の大瀧明日香から5000番台目前の安井瑞紀まで、多くの選手が水面を走った。それこそ、無観客だろうと何だろうと関係ない。お客さんに「私、頑張ってますから」と見せるために走っているわけではないのだ。9Rを走り終えた薮内瑞希も、すぐに試運転のプレートをつけて速攻で水面に戻っている。走れる時間が多く残されていたわけでもないのに、それもまるで関係なく、薮内は試運転に出ることを選んだのだ。たとえ今節の間には活かし切れなかったとしても、必ずこれが将来に向けての積み上げになるはずだ。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)