雨は上がらず、冷え込んでいた午後のピット。それでも、選手たちの動きは変わらない。係留所を覗き込むと、試運転のピンクの旗は数多く見られるし、整備室やプロペラ調整所は混雑している。
そうそう、水面が見られる位置から、写真を撮ってみました。無観客とはいっても、対岸のビジョンはいつも通りに映像を映し出している。そして、対岸にはたくさんの横断幕が選手を盛り立てている。JLCでは急遽Twitterでコメントを募集しているそうで、勝利者インタビューにやって来た選手にそれを伝えている。ファンの思いは選手に届いてます!
それはともかく、この冷たい雨にまるで怯むことなく走る選手たちには頭が下がるというもの。西村美智子、大瀧明日香、實森美祐はなんと12R発売中まで試運転を続けていた。この頃には小降りにはなっていたけれども、それでもその努力に拍手。予選も半分終わって、何としても立て直したいという強い思いのあらわれと見たい。
11R発売中に切り上げた土屋南は、いったん陸に上げていたボートを10Rの締切がそこそこ近づいたタイミングでもう一度下ろしている。プロペラを調整してどんな反応があるのか、残り少ない時間にでも確かめたかったのだろう。勝ちたい、エンジンを仕上げたいという思いは、雨などで萎えることはありえないのだ。
整備室では、津田裕絵がふたたび本体整備。今日も連に絡めなかったことで、もう一丁、カツを入れたかったか。今日は部品交換はなかったが、明日はどうなるか。直前情報をご確認いただきたい。あと、関野文も本体を扱っていた。今日はイン戦で2着。悔しい一番だったわけだが、明日は巻き返しを期す。
エース50号機を引き当てた勝浦真帆はキャブレター調整を行なっていた。ここまでもいい動きを見せてはいるが、4着2本ともう一息。ポテンシャルを引き出すために、この作業を決めたのだろう。勝浦の横では、整備士さんが見守っていた。勝浦が言葉を投げかけると丁寧に説明している様子で、ルーキーにとってこの経験は大きい。これで確実に引き出しは増えるからだ。明日の勝浦の動きにはぜひ注目したい。
10R、ついにマンシュウが出た! 勝ったのは廣中智紗衣。5コースから見事に突き抜けて、7マンシュウを叩き出した。レース後の廣中は、やはり笑顔! 目を細めて出迎えた仲間たちと歓喜を交わしていた。2着の長嶋万記とも談笑。その様子は、まさに会心の勝利を果たしたレース後そのものなのであった。
一方、3コースからまくって展開を作った土屋千明は、結果的に4着。おそらく勝利が一瞬は見えていたはずなだけに、これは悔しい。着替えを終えてモニターの前に陣取った土屋は、流れるリプレイを微動だにせず凝視していた。首を傾げたり、うなずいたり、そうした動きをまるで見せることなく、ひたすら見入っていたのである。それは悔恨に耐えている姿にも見えていた。ここまで大きな着が続いているが、この鬱憤を晴らす明日にしたいところだ。
さてさて、その10Rは関東4人、東海2人という構成で、西の選手の出走はないのであった。しかし、近畿も四国も中国も九州も、無関係などとは少しも思わない。エンジン吊りだ。本来は関東勢、東海勢だけが出てくれば何ら問題はないわけだが、西の選手たちもヘルプに駆け付けている。関東4人だと、それだけでその4人の分は手薄になりますからね。忙しい調整作業の手を止めても、仲間のために協力する。水の上では敵同士でも、陸の上ではともにボートレースを戦い抜く戦友なのでありますね。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)