BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

歓喜沸く準優のピット

10R 涙の優出

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 選手班長の岩崎芳美が逃げ切って優出! 地元の大一番で、本人曰く「最低ノルマですね」をクリアした。ピットは底抜けに明るい空気が漂い、岩崎が帰還すると平高奈菜をはじめ四国勢が大きな笑みで称えた。いや、四国勢だけじゃないな。岩崎の優出はさまざまな選手の顔をほころばすものになっていた。班長としての苦労はもちろん、そのお人柄もよく知っている仲間たちは、輪の真ん中で大喜びしている岩崎の姿を好ましいものととらえただろう。

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 岩崎はとにかく喜んでいた! レンズを迎えれば、満面の笑みでピースサイン。テンションマックス! 控室前には多くのカメラマンが陣取っていたが、そちらには両腕を思い切り掲げてバンザイを見せていた。選手紹介でのパフォーマンスを見ている方なら、その明るさをサービス精神はよくご存じですよね。ピットはまさに岩崎の独演会の様相を呈していたのだった。

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 そんな岩崎が、涙を流した。共同記者会見でのことだ。
「地元じゃないと(レディースオールスターには)乗れなかったと思うし、これが最後のレディースオールスターのつもりで……ここに来る前には旦那(樫葉次郎)から頑張ってこいと言われて……」
 そう口にした瞬間、岩崎の瞳から涙があふれて止まらなくなったのだ。
「年齢も重ねて、若い子にも負けたりして、鳴門にはたくさん育ててもらったし……」
 地元への思い、自身の近況への思い、このGⅡへの思い……さまざまなものが脳裏に浮かんだのだろう。もしかしたら、無観客開催を強いられている鳴門、いや業界全体への思いもあったかもしれない。岩崎は、さまざまな意味で渾身の思いを抱えて、ここに登場したのだ。
 それでも最後は笑顔で締めるのが岩崎芳美。「明日は全速で振りかぶってコンマ10を決められたらいいですね」と明日も精一杯の戦いを誓った。岩崎の優出はとことんめでたいのだ!

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 2着は廣中智紗衣。差してきっちり2番手争いをモノにした。レース後はやはり東京支部勢が嬉しそうに駆け寄っている。廣中自身は感情を爆発させたわけではなかったが、充実感のある表情で仲間の祝福に応えていた。
 とにかく足は良さそうだ。廣中曰く、1マークは失敗しているという。引き波にハマっているのだ。しかし、そこから前に押していき、握った高田ひかるを抑え込んでいる。2マークは、内から伸びる今井美亜を冷静に見据えて、しっかり捌き切った。明日は4号艇、展開次第では面白いところが十分にありそうだ。

11R 若き女王の蹉跌

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 波乱が起こった。1マーク、2コースの遠藤エミがツケマイに出て、インの大山千広は抵抗した。これが、遠藤を転覆させてしまう(大山は不良航法をとられている)。さらに大山自身も4着。レースだから、大山-遠藤の1、2コースのラインが揃って飛ぶことはもちろんありうるわけだが、こんな形になるとは想像できなかった。
 レースを終えた大山は、すぐさま遠藤のもとに駆け付けている。その表情は遠藤への申し訳なさ、罪悪感ややってしまったことの後悔で曇っていた。遠藤は自力でボートを降り、医務室に向かっているが、大山はそれにも付き添った。その後も遠藤に寄り添い、気を使い続けた。贖罪の方法はそれしかないとばかりに、自分の動きよりも遠藤を優先していた。

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 遠藤のほうは、それに対して禍根を残すような素振りは見せていない。もちろん、不完全燃焼に終わったことへの不本意は抱えているだろう。そして、残念ながら途中帰郷となってしまった。まずは心身ともに傷を癒してほしい。そして、また強い遠藤エミを水面で魅せてほしい。心という意味では大山も同様だ。反省は大きいだろうが、そのあとは力強く前に踏み出してほしい。

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 勝ったのは長嶋万記。これは快勝だ。事故が出たとかは関係ない。インと2コースの競り合いを見据え、ここは3コース香川素子の頭を叩く展開と即座に判断し、力強いまくり差しを突き刺した。展開が向いたといえばその通りだが、それをモノにしたのは長嶋の自力である。
 長嶋を祝福する選手も多かった。それらに長嶋は最高の笑顔で応え、勝利と優出を喜んだ。ちなみに、「明日勝ったら最高のモナリザを見せます」とのこと。最高のモナリザって(笑)。JLCのインタビューで多くの選手が見せたモナリザパフォーマンス。仕込んだのは長嶋で、選手紹介でも見せていたものだ。最高のモナリザがどうしても想像できないわけだが(笑)、長嶋が勝てば見られる。

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 長嶋以上に多くの選手に祝福されていたのは清水沙樹だ。東京支部勢もそうだし、支部に関係なく多くの後輩たちが清水に抱き着いている。一緒に優出となった廣中智紗衣も、自分の優出後より嬉しそうにしていた。GⅡ以上初準優から一気に初優出。艇界のコスプレクイーンの快挙は、誰もが喜ぶ吉事なのである。
「こんなにいい(ファン投票)順位で来れるとは思っていなかった。穴狙いの人が多いと思いますが(笑)、明日も穴を出せたらいいですね!」
 弾むような口調で清水は語った。6号艇だから、穴必至! 今日も6マンシュウの片棒を担ぐ活躍だった。明日は果たして!?

12R 王道逃げ

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 昨日の12Rは2着に敗れたが、得点率トップを死守。そして今日の12Rをイン逃げ。小野生奈はしっかり王道に乗ったと言っていいだろう。ピットに戻るとリプレイを確認。粛々と勝利者インタビューに向かっている。風格を感じる表情だった。
 小野は今日も、妥協することなくプロペラ調整に励んで、レースに臨んでいる。これは準優だから、1号艇だからではなく、いつも通りの姿である。ブレることなく、ひとつの大きな関門に臨んだのだ。明日も同様だろう。しっかり最後まで調整を続け、ピットインすることだろう。その揺るぎなさがある限り、死角は限りなく少ないと思うのだがどうか。

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 2着で優出は喜多須杏奈! いったんは宇野弥生に分が悪い隊形になったが、2周1マーク迷うことなくツケマイで攻めて、最後の優出切符をもぎ取った。これもまた、ピットは沸いた! 抱き着いたのはやはり岩崎芳美! 地元勢が二人も優勝戦に駒を進めたことは、岩崎にとって実に高揚することだっただろうし、喜多須もまた同様だろう。思い出すのは昨年の暮れ。クイーンズクライマックスシリーズで準優1号艇で落水失格を喫し、優出を逃した。あの悔しさをこれで晴らしたかどうかはともかく、もっと大きな舞台でファイナル行きを決めたのは大きい! 明日は岩崎、喜多須の渦潮コンビがどんな気合を見せてくれるのかが楽しみ! スタンドには来られないけれども、きっと画面の向こうでエールを送ってくれる地元ファンのためにも、渾身の走りを見せてほしい。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)