BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト

パワフルコンビ

10R
①岩崎芳美(徳島) 12
②廣中智紗衣(東京)13
③高田ひかる(三重)16
④今井美亜(福井)    20
⑤大瀧明日香(愛知)20
⑥田口節子(岡山)    28

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 スタート&パワーがモノを言うレースだった。スリット隊形は↑御覧のとおり、1~3コースのスロー勢が優勢に。こうなると、ダッシュ勢は抜群の行き足を誇る内2艇には届かない。
 準優としてもっとも惜しかったのは、3コースの高田だった。スリットでわずかに後手を踏みつつ、昨日の12R(まくり一撃)と同じようなツケマイを廣中に浴びせ、インの岩崎に肉薄。超抜仕様の岩崎を捕えきれなかったものの、2着を獲るには十二分な全速戦だったはずだ。

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 が、引き波をモロに浴びたはずの廣中が、2本の引き波をグンッと踏み越えて出口から足を伸ばす。瞬く間にその舳先は高田の内フトコロに突き刺さった。初日の6・6着=ワースト気配から昨日はあっと驚く連勝でこの好枠を奪った「ミラクルひかる」ではあったが、さすがに準優では家賃が高かった。

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 是が非でも2着が欲しい後続艇が殺到した1周2マーク。この交差旋回でも引き波から力強く抜け出したのは廣中だった。スーーッと他4艇のど真ん中を突き抜け、そのままファイナルの安全圏へ。この出足~行き足につながる部分は、岩崎と廣中が1歩も2歩も抜けていたと思う。

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 逃げて圧勝した岩崎のパワーは、その廣中よりわずかに上と鑑定している。特に惚れ込んでいるのは、起こしから俊敏に押して行く出足、さらにそこからスムーズに加速する行き足。つまりはスロー起こしからスリットで他艇を出し抜くパンチ力があり、優勝戦の1~3号艇がぴったりの機力だと感じている。この機力に地元・選手班長の気力を加味すれば、その破壊力は何倍にも膨れ上がるかも??

並び立たたなかったヒロイン

11R
①大山千広(福岡)    11
②遠藤エミ(滋賀)    05
③香川素子(滋賀)    07
長嶋万記(静岡)    06
⑤清水沙樹(東京)    01
海野ゆかり(広島)13

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 だ、だ、大波乱!! 恐ろしいほどに人気丸被りだった大山-遠藤が、ともに消え去った。チヒロは4着、エミは転覆という形で。
 最大の要因はスリット隊形だろう。イン大山のコンマ11は本来なら絶妙と呼ぶべきだが、2コース遠藤がそれを半艇身ほど出し抜いた。遠藤としては「待って行かせて差す」か「スタートの利を生かしてまくる」かの二者択一。攻めっ気120%の遠藤が選んだのは、やはり後者だった。当然、まくられたら惨敗もありうる大山は艇を合わせて応戦した。どっちのスピードも女子レーサー界のトップレベル。その速い遠心力で2艇がコツンと接触した瞬間、外の遠藤がバランスを逸して真横に反転した。両雄、並び立たず。そんな言葉を連想させる大競りだった(レース後、遠藤は負傷帰郷、大山は不良航法で賞典除外に)。

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 花形スターふたりの激突を横目に、ぽっかり空いたど真ん中の水面を突き抜けたのは4カドの長嶋。こちらもゼロ台半ばまで踏み込み、カド受け香川を抱きマイで交わして一気に先頭に躍り出た。

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 もちろんアクシデントがあっての圧勝だが、「勝ち将棋、鬼の如し」と呼ぶべき豪快な突き抜けに見えた。さすがの実力者。パワー的にも直線主体に全部の足が強めのバランス型で、センター向きの足だと思っている。優勝戦に入れば、わずかに劣勢かも知れないけれど。

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 混戦の2マーク(←事故があったためラストチャンス)から2着をもぎ取ったのは、5コースの清水だ。誰よりも早いコンマ01で長嶋の攻めを急かしつつ、自身はそれに追随するような全速マイ。その攻めはやや不発でバック中間は4番手だったが、そこからの伸び足が素晴らしい。今節の清水13号機(わずか27%!)の最大の武器はまさにこの伸び足で、2艇身ほどのビハインドを跳ね返して2マークを先取り、そのままファイナルのチケットを確定させた。トータルの機力としては他の5艇に劣ると思うのだが、明日も外枠から攻める身の上。スリット一撃のパンチ力だけは警戒しておきたい。

SUPER FINEPLAY

12R
①小野生奈(福岡) 12
②西橋奈未(福井)    15
③宇野弥生(愛知)    09
④喜多須杏奈(徳島)08
⑤平高奈菜(香川)    05
⑥寺田千恵(岡山)    13

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 シリーズの主役級のふたりがV戦線から消えた直後、予選トップの小野が仁王立ちでファイナル1号艇を掴み取った。スリットから覗いたのはセンター2騎。宇野が私らしいスタート攻勢を仕掛けようとしたが、小野の猛烈な伸び返しがそれを許さない。1マーク手前では逆に半艇身ほど飛び出し、くるりと1マークを先制してそのままぶっちぎった。ターン出口を抜けてからの行き足もゴキゲンで、私の節イチ鑑定は「生奈vs岩崎の一騎打ち」で固まっている。

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 ただ、両者を比較すると岩崎35号機が手前寄りでスロー向き(スリット付近で行き足がMAXになる感じ)なのに対し、生奈はその先の行き足~伸びが超抜だと感じている。あまり考えにくい展開ではあるが、明日の生奈の助走距離が短くなったときは、岩崎はじめ外の艇の勝機は格段に増すことだろう。それ以外に生奈の死角を探すとするなら、何度か書いてきたスタートしか見当たらない。

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 さてさて、大混戦の2着争いから最後のファイナル切符を手にしたのは、地元の喜多須杏奈!! いやぁ、凄まじい2着だった。バックで2番手を取りきったと思ったらば、2マークで寺田が老獪すぎる切り返し。これが目くらましとなった喜多須の握りマイは外へと流れ、寺田&宇野がズボズボ差し抜ける。
 もっとも重要かつ難解ななポイント(準優2着争い)で若さを露呈したか。ここからの逆転はもう無理だな。

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 そう思って見ていたらば、2周1マークは大外から大外を(おそらく)握りっぱなしの全速旋回でベテラン2艇をまとめて交わし去った。若さで作った借金を、若さで完全返済したわけだ。とにもかくにも、大ファインプレーの2着ゲット。

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 110期のやまとチャンプに君臨してから約8年。当時は「同県の女傑・横西奏恵の後継者」と呼ばれた喜多須だが、徐々に周囲の期待は薄れていった感がある。もちろん、今もまだまだ横西の域には達していないけれど、今日のスピードターンはその資質の片鱗を肌身で感じさせるものだった。あれを実現させた67号機の強烈な出足・回り足も含めて、明日もまた「百獣の女王」の活躍に期待するとしよう。(photos/チャーリー池上、text/畠山)