無観客レースということで、優出インタビューは行なわれない。普段のビッグ最終日は、イベント用のユニフォームに着替えていたり、早い時間のイベント開催なら優出選手のピットへの出入りが見られるわけだが、今日はそれもない。ということはつまり、昨日までの雰囲気と特別変わった様子のない最終日ピット。慌ただしく動いている選手がぐっと減っている、というのが最終日らしい光景か。
優勝戦メンバーの動きはかなりゆったり気味だ。朝は雨が降っていた鳴門、２Ｒ終了後まで見届けて記者席に戻るときにはもうやんでいた。午後にはあがるという予報だったので、調整もそれを待っての本格化、といったところだろうか。１Ｒ展示前にはプロペラを叩いているのは長嶋万記だけだった。昨日は思い切った調整をしてハマった、とのこと。それをさらに煮詰める作業ということだろう。
１Ｒ発売中には、岩崎芳美もプロペラを外して調整に向かった。地元ビッグの優勝戦ということで、やや緊張しているようにも見えるのだが、百戦錬磨のベテラン、それとうまく付き合う方法も心得ているはずだ。２Ｒ終了後には、いったん作業を切り上げている。
１Ｒ発売中、清水沙樹がドライバーを手にボートのもとへ。カウルのネジを強く締め込んでいた。優勝戦はカウルが変わり、もちろん係の方が電動ドライバーでしっかりとネジを締める。だが、さらに自分でカウルを力いっぱい締め込む選手は時折見かけるもの。たとえば今垣光太郎とか。それがひとつのこだわりであり、また精神的に安定して乗れるということなのだろう。清水も、同様のこだわりを持っているというわけだ。
小野生奈は２Ｒ発売中にモーターを丁寧に装着。すでにボートに乗ってはいたが、ワイヤーをつないでおらず、その装着を２Ｒ発売中に始めた、というわけだ。黙々と、ボートとモーターを労わるように作業を進める小野。その後はプロペラを外しているから、調整にも精を出す一日になっていきそうだ。なお、妙な緊張感は見当たらなかった。レディースチャンピオン優勝戦１号艇を経験しているから、プレッシャーにつぶされるようなことはないはずだ。
廣中智紗衣、喜多須杏奈は２Ｒ終了後までは大きな動きを見せなかった。１Ｒ、藤原菜希がまくり差しで１着となっているが、２周１マークを回ったあとバランスを崩している。その瞬間、モニターは後続を映し出したので、藤原がどうなったのかはピットではわからなかった。転んでもおかしくないように見えていたので、ピットでは悲鳴もあがっているのだが、次に引きの映像となったときにはちゃんと先頭を走っていて一安心。ということで、このシーンはピットでは笑い話になっており、多くの選手が「転んだかと思ったよ～」と藤原に声をかけている。廣中もその一人で、おかしそうに藤原と話し込んでいた。その表情からはリラックスした様子がうかがえる。喜多須に関しても、作業を始める様子は２Ｒまでには見えなかったが、自然体で過ごしているように思えた。（ＰＨＯＴＯ／池上一摩 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
