BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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笑顔笑顔の優勝戦ピット

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 昨日は会見で涙を見せた岩崎芳美。しかし今日は笑顔笑顔!
 2コース差しで小野生奈のふところを貫き、そのまま先頭ゴール。地元レディースオールスターを劇的優勝! その瞬間をスタンドで見た鳴門のファンは誰もいなかったわけだが、しかしテレビやPCやスマホの向こうで見守っていたファンのことを思えば、感慨深かったであろう。それでも、浮かんでくるのは笑顔笑顔! Vゴールを決めてバック水面に辿り着いた岩崎は、係留所で手を振る選手仲間たちに大きく手を振り返す。ヘルメットかぶってるし、遠いし、もちろん見えてなどいないわけだが、その体全体が笑っていた。
 ピットに戻り、多くの選手が祝福を浴びせても、今日は笑顔笑顔! 地元ワンツーを決めた喜多須杏奈がその胸に飛び込み、堅く抱きしめ合っても笑顔笑顔!「なんか夢みたいで……」と実感らしい実感がわかなかった様子の岩崎は、持ち前のスマイルを全開にして優勝の喜びを表現していた。

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 ピットの片隅で行なわれることとなった表彰式の最後、少しだけ言葉に詰まる場面はあった。しかし、岩崎の笑みは保たれていた。地元鳴門への思い、家族への思い、自身の今後への思いを語る間も、神妙な表情になることはあっても、涙はこぼれなかった。まあ、家に帰って時間が経ち、また今日は常滑を走っている夫の樫葉次郎と顔を合わせたりすれば、自然と涙が零れ落ちるのかもしれない。それでも今日はただただ笑顔。「いつもそんなことを言わないのに、今回は『地元だから頑張って来い』と言ってくれて、それが嬉しかったんです。徳山のときも(02年レディースチャンピオン優勝)言ってくれてたんですよね」と語りながら、それが実に心地いい思い出であるかのように微笑むのだった。

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 そうした笑顔の優勝の裏には、最後まで調整に励んだ姿があるのも忘れてはならない。10R発売中のスタート練習のあと、試運転で数周走ったあと、ペラを外して調整所に飛び込んでいるのだ。そして、本人曰く「微調整」とのことだが、けっこう力を入れてペラを叩いていた。「今日早いうちに下ろして乗ってみたら、すごく感じが良かったんです。それで2レースくらい何もせずに、次に乗ってみたら何かがおかしかった。スタート練習の後も、私の勘違いかもしれないと思いつつ乗ってみたら、やっぱりおかしい。だから、もうすでにゲージは片付けてしまっていたんですけど、それを引っ張り出して調整したんです」。それがあの差し切りにつながったのだとすれば、それは間違いなく勝因のひとつ、それも大きなひとつであったはずだ。

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 これで岩崎は賞金450万円をゲット。となると当然、女子賞金レースをリードしていく立場となった。岩崎ははっきり言った。「今回はクイーンズクライマックスを視野に入れたい」。現在はA2級だが、今期勝率は来期A1級復帰に充分なもの(昨日時点で6.74)。復調している今、暮れの12人に入る可能性は充分にある。昨日の会見では若い子に負けることが増えたと言っていたが、この優勝は確実に胸の内に変化をもたらした。
「まだ頑張れる、そう思えたことが嬉しいですね」
 そう言ってニッコリ笑った岩崎。やっぱり岩崎芳美には笑顔が似合う! 心からおめでとう!

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 敗者で最も表情を硬くしていたのは、言うまでもなく、小野生奈である。1号艇での敗戦。その意味するところを、もちろん小野が知らないはずがない。控室へと戻る際にも、エンジン返納へと向かう際にも、視線を下に落としうつむく場面があった。小野にとって、悔しさしか残らない優勝戦だっただろう。

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 3着の長嶋万記も、4着の廣中智紗衣も、6着の清水沙樹も、それぞれに悔し気な表情を浮かべるレース後であった。枠の不利や、展開の不利などあったとしても、優勝戦を落としたことは顔を曇らせるものになるに決まっている。

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 そうした中で、喜多須は素直に岩崎先輩を祝福し、ワンツーを決められたことを喜んでいるようだった。先述のとおり、着替えを終えるとすぐに岩崎のもとに向かっている。勝てなかった悔しさのカケラはきっと胸に残っているだろうが、ここに来れなかった地元ファンへの思いも含めて、今日ばかりは感動が上回ったのだと思う。この大舞台で初優勝を決められれば最高だったが、きっとその日は遠くない。この経験がさらに喜多須を強くすることだろう。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)