BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――やはり勝負駆けは熱い

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「がんばって~!」「吉川さ~ん!」
 12Rのピットアウト前と待機行動中、どこからともなく女性の声が小さく聞こえてきた。最初は空耳かと思ったが、何度か繰り返されて、それが1号艇の吉川元浩への声援だと気づく。ちょっと待て。これは無観客開催。声援が聞こえてくるわけがないのだが……。
 ご存じの方も多いだろうが、平和島の対岸には数軒のマンションが建っている。これはもしかして、とマンションのほうに目を向けていると、上平真二もやってきて「どこですかね?」と声の方向を探し出した。よく見ると、マンションのバルコニーのいくつかに人影があるではないか。ちなみに、選手宿舎も対岸にあって、1便や2便で帰っている選手が「みんな見てますよ(笑)」と上平。

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 もちろん、バルコニーの方たちはわが家から見ているのであって、観客というわけではない。だが、お客さんの姿が実感できない無観客開催というなかで、たしかにボートレースをわが家で見ている方がいるのだということを、しっかりと認識できた一幕であった。無観客でも選手は奮闘し、ファンは注視する! あと、僕が見た限り、女性っぽい姿は見えなかったんだよな~。あ、皆さん、だからといってそれらのマンションに不法侵入したりとかは絶対に絶対にダメですよ! なお、吉川は待機行動中、この声が聞こえていたようだ。「なかなかない状況ですよね」と笑っていた。その声が後押ししたというわけではないだろうが、きっちり逃げ切り勝ち!

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 この12R、坂口周と永井彪也に予選トップの可能性があった。ともに1着条件と厳しいもので、しかも永井は6号艇。下出卓矢がチルトを1度に跳ねて6コースに出たことで5コースとなり、スタートを決めて攻めたが、握り返してきた村松修二とかぶってしまい、外に流れてしまった。坂口もヘコんだ2コースを叩いてのまくり差しを狙ったが、入らなかった。残念! 永井はさすがに悔しそうな表情で、大外枠でも本気で狙っていたことが伝わってくるレース後であった。

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 その瞬間、予選1位は石野貴之となったわけだが、石野の表情に特に変化はなかった。12Rのエンジン吊り後は素早く着替えて、喫煙所で読書をしながらバスの出発を待っていた。そのときも、実に落ち着いたものだった。9Rは2着、また暫定トップだった稲田浩二が大敗で巡ってきた予選トップ。勝ち取ったのだという手応えは薄いのかもしれない。

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 大敗した稲田だが、なにしろ表情の変化が少ない人なので、11Rの後も淡々粛々としたものだった。12R後に吉川のエンジン吊りを終えたあとも、白石健とやはり淡々と会話を交わすだけで、準優1号艇の感慨もあまり見られなかった。まあ、これが稲田浩二。淡々と大仕事をやってのける可能性は充分にある。

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 12Rでは下出卓矢が3着条件の勝負駆け。先述したように、3着を獲りにいくのではなく、チルトを跳ねて勝ちにいった下出は残念ながら5着に敗れてしまった。このレースのスタート展示を、今垣光太郎が強い目力で見守るシーンもあった。「あ、バナレで出ない」。6コース選択のシーンを今垣が心配そうに見つめる。「たぶん1度だと思いますよ」と言いながら、対岸のビジョンに目をやる今垣。僕も一緒に注目したが、あらら?「伸びてない」と光ちゃん苦笑い。「放ったのかな」とも付け加えていたが、本番でも結局、攻めていくことができなかった。下出は今垣のいたわりに苦笑いで応えた。

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 この結果、18位には前本泰和が浮上した。でも、1便か2便で帰っていたのか、姿は見つかりませんでした。準優は進入から盛り上がること必至!

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 勝負駆けとは関係なかったのだが、結果的に広島支部で唯一、予選突破できなかった辻栄蔵が、10Rで6号艇6コースから1着! 意地を見せつけた。レース後、辻ががっちり握手を交わしたのは坂口周。あっ! 実は今朝、プロペラ調整所で二人が並んでペラ調整をしているのを見かけていたのだ。珍しい絡みだな、とは思っていて、辻がむしろ坂口の言葉に聞き入っている感じだったので、気になってはいたのだ。どうやら辻は坂口にアドバイスをもらっていた様子。12Rのレース後は、辻が坂口に寄り添う場面が見られた。気配アップに成功したのなら、残り2日の辻栄蔵が脅威になるぞ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)