９Ｒ、１号艇で２着に敗れた野中一平が、整備室でモーター格納作業。しゃがみこんで、頭を抱えている。その傍らには難しい顔で立つ柳沢一。結果と精神状態がいかにリンクするか、の図に見える。実際は、たまたま髪の毛を整えているところだったかもしれない。別に頭を抱えているわけではなく。だが、逃げ切れなかったことに悔恨を覚えていたのは確かだろう。野中は柳沢としばらく話し込んで、二人はしばらく重い表情のままだった。
このレースで６着大敗を喫したのが石野貴之。前半２Ｒこそ２着だったものの、初日ドリームとこの９Ｒでシンガリ負け。表情が冴えないのも当然だろう。10Ｒのエンジン吊りには菊地孝平と身振りを加えつつ会話を交わしながら参加。身振りの意味はわからなかったけれども、菊地の顔がかなり険しく、石野の成績あるいは機力について気遣っている様子がうかがえた。
同レース５着の桐生順平もやはり意気が上がらない様子が見て取れる。ピットではほぼマスク姿なので、表情全体をうかがうのはなかなか難しいが、レース直後にあらわれた際の目元はやや陰鬱に見えたものだった。今日は、10Ｒ終了後に出発する１便で帰宿せずに、最後の最後までプロペラを叩き続けた。予選を折り返して明日、なんとかメドを立てたいところだろう。
10Ｒが終わって、吉田拡郎が「夜王」Ｔシャツを着てピットにあらわれた。夜王といえば、若松ですよね？ いつもニッシーニャが着てます。拡郎が着用しているのに少々違和感を覚えつつ、しかしけっこう似合うなあと思い直す。そのいで立ちで、吉田は整備室でモーターの本体を外し始めた。整備？ と思いきや、さらにギアケースを外した。これはキャリアボデー交換の手順だろう。10Ｒは６着大敗。初日後半から連続でのシンガリ負けだ。そこで選択したのがキャリアボデー交換ということになる。あ、明日の朝に乗ってみて進境が見られなかったら元に戻す可能性があるので、直前情報で交換の有無は必ずご確認ください。とにかく、このままでは終われないと、やれることはやり尽くして予選後半に臨むわけだ。
10Ｒでは、井口佳典が唇を噛みながら控室に戻ってきたのが印象的だった。もちろん３着で満足しているはずがなく、しかも石丸海渡との２番手争いに敗れたかたちだから、思うところはたくさんあっただろう。この姿は、悔恨をグッとこらえている様子にも見えて、それがある意味でトップレーサーの矜持とも思えたものだった。その後、着替えを終えた井口は、ボートに付着した水滴をタオルで丁寧に拭き取っている。それが気持ちを整える様子に見えた、というのは考えすぎかも？
11Ｒでは池田浩二が１号艇でまさかの着外。当然、アタマ獲りを意識していたレースのはずで、ズブズブと差されてしまったことは、モーターの状態も含めて、後悔ばかりが襲ってきたはずだ。前半記事で整備の件を記しているが、11Ｒには結局、キャリアボデー交換で臨んでいる。それが奏功しなかったということか。池田としては、このままでは終われないのは当然。明日も大きな調整をしてくる可能性はあるので、その様子に注意してみたい。
さてさて、今日最も仕事をしたのは今垣光太郎で決まり！ 朝から整備をしていたことは前半記事でお伝えしたが、２走目の８Ｒを終えて、９Ｒ発売中には早くも試運転に飛び出して、結局ボートをあげたのは12Ｒ発売中。お疲れ様でした！ もっとも、11Ｒ発売中は係留所でボートに乗り込んで、操縦席やカウリング内部を磨いていた時間が大半ではあったが。それにしても、後半レースを終えてまだ水面に出たのも驚いたし、しかもものの10数分で水面に戻ったのにもびっくりさせられる。地元戦の気合という部分も大きいのかもしれないが、その執念には感服するほかない。
で、やはり遅くまで試運転をしていたのが立具敬司。ルーキーらしいと言うこともできるわけだが、結果として、今垣と何度も何度も足合わせをすることになったのだった。試運転タイムがいったん終わると、隣同士の係留所にボートを着けて、長い会話が始まった。前にも書いたが、撮影可能場所が係留所の近くであり、しかも終盤の時間帯はピットが閑散としていたので、その会話がよく聞こえてきた。内容？ 正直、選手同士の会話はわからないことばっかりです。「〇〇すると伸びは一緒で、回り足が弱くなって、元に戻すと回り足は一緒になるけど下がる」とか。〇〇の部分が、正直僕も聞いたことのない単語だったりするので、何をしたのかがわからんちんなのである。まあ、盗み聞きみたいにしてここに全部書くわけにもいかないですけどね。
これ、立具にとっては実に重要な時間だったのではないかな、と思ったりもする。今垣と足合わせを繰り返すのも貴重なことだろうし、サシでびっしりと会話を交わすのは確実に栄養になるはずなのだ。今垣としては自身の足色の確認だったり、若手へのちょっとしたアドバイスだったりするかもしれないが、支部も違う立具にはスペシャルな経験になったと思う次第である。それが今節、いや近い将来でもいいけど、結果につながるといいですね！（黒須田）
