BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

古豪の貫禄

10R
①今垣光太郎(石川)08
②永井彪也(東京) 07
③茅原悠紀(岡山) 08
④前沢丈史(茨城) 11
⑤瓜生正義(福岡) 11
⑥徳増秀樹(静岡) 09

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 準決勝の第一試合は、SG9V&10Vという圧倒的なキャリアを誇る古豪レーサーふたりが総合力の差を魅せつけた。まずは地元水面で甲子園連覇を狙う今垣が貫禄のイン逃げ。完勝とは言い切れないギリギリの勝利ではあった。今垣63号機は前検からずっと機の2連対率34%に毛が生えた程度=中堅上位と見ている。本人も「手前に寄せると伸びが売り切れ、伸びを求めると出足がなくなる」と吐露しており、本体そのものの底力が足りない印象は否めない。今日の1マークも、超抜パワーがセンターにいたら差された可能性が高かったように見えたのだが、どうだろう。

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 まあ、それでいて予選3位→準決勝1着は流石の一語。パワーの不足分を地元&連覇の気合で補った5日間だった。今垣ならではの気持ちをまんま水面に投影する走り(しゃくりまくり含むw)は、もちろん明日もスリットから全国のファンを魅了することだろう。

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 惜しかったのは、今日が33歳のバースデーだった茅原だ。そのめでたい日を自ら祝うべく3コースから渾身のまくり差しを放ったが、わずかにマイシロ~回り足が足りずに舳先が浮いてしまった。前回大会では「ほぼ鳥取代表」として決勝戦まで勝ち進んだ茅原。「純岡山代表」として臨んだ今年は、わずかに機動力が足りずに準決勝で涙を呑んだ。

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 代わって5コースからスキのないまくり差しで2番手を獲りきったのは、福岡の常勝・瓜生だった。瓜生44号機は高いレベルで攻走守が揃ったバランス型と見ているが、その持ち味をフル稼働して混戦を抜け出した。もちろん、パワーのみならず選手の技量もあっての決勝進出。明日も外枠からパワー&テクを駆使して、どこまで内の強豪軍団を打ち崩しに行くか。進入争いも含めて警戒しておきたい。

1点差の逃げきり

11R
①吉川元浩(兵庫)21
②毒島 誠(群馬)21
③白井英治(山口)25
④田村隆信(徳島)17
⑤篠崎元志(福岡)18
⑥石野貴之(大阪)21

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 第2試合も古豪・報徳学園レベルの実力を誇る吉川がインから押しきった。その勝ちっぷりは5-4くらいの接戦ではあったな(笑)。まず、1マーク手前でこの本命を脅かしたのは、4カドからシュッと突出した田村隆信。踏み込んだと言うより「スロー勢が遅かった」というスリット隊形ではあったが、カド受けの白井を叩ききる迫力はなかなかのものだった。

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 渦潮打線が爆発か!?
 などと見ていたらば、その先はもはやどん詰まり。吉川と毒島の伸び返しが高い壁となって、減速しながらのまくり差しを余儀なくされた。で、代わって吉川を上から叩き潰そうとしたのは2コースの毒島だった。SG準優などでの2コースジカまくりは、ちょいちょい目にする常套手段ではある。イン選手の意表を突く奇襲と言うより、「1マークで付け回っておいての2マーク勝負、不発でも2着で優出しやすい」という準優ならではのメリットがあるからだ。さらに今日の場合は「田村に攻め込まれて差すべきマイシロが窮屈になった」という要素も考えられる。

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 が、今日の毒島のまくり作戦は完全に空を切った。吉川のイン戦は「差されるよりまくり警戒」的な握りマイが多い気がするのだが、今日はいつにも増して1マークを豪快にぶん回した。毒島をブロックしたと言うより、スタートでやや後手を踏んだ分だけ開き直って握ったようにも見えたがどうか。
 とにかく、この吉川の豪快な握りマイは毒島を真横へと押し出す形となり、今度はまくり差しに切り替えた田村、5コースから2段のまくり差しを打った篠崎が吉川の内フトコロに殺到した。どちらかの舳先が捩じ込めば大波乱というシーンだったが、野球で言うところの「同時セーフ」くらいの僅差で吉川がその猛攻を凌ぎきった。ここでも、吉川19号機の出足~行き足が生きたと見ていいだろう。

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 今節の吉川は、初日からいきなりギヤケースの交換に着手。もちろん、万全の状態なら換えるわけもなく、前検での手応えが厳しかったはずだ。それが、この整備で気配が一変。30%の数字とかけ離れた上位パワーになったと思ってるし、本人も正解だったというコメントを残している。同時に新プロペラを煮詰めて自分のスタイルに合った出足主体のパワーに仕上げ、あれよあれよと決勝戦の絶好枠まで上り詰めた。ではでは、今日の足のままで優勝できるか、と聞かれれば、今のところは首を傾げざるをえない。それについては第3試合の結果も含めて記すべきだろう。

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 2着は2マークの混戦をしっかり捌いた田村が獲りきった。4カドからレースを作ったご褒美としてのアドバンテージが、2マークで活かされた2着。私の田村64号機へのパワー評価はさほど高くない。25%の数字よりかなり上とは思っているが、上位にはほど遠いと思っている。今日の1マーク手前で売り切れた伸び足、出口から吉川を捕まえきれなかったレース足、どちらも決勝戦での劣勢は明らかだろう。だがしかし、それでも明日の田村には並々ならぬ勝機があるとも思っているのだが、これまた12Rの結果があればこそ。次に進もう。

スラッガーの定番

12R
①萩原秀人(福井) 07
②峰 竜太(佐賀) 12
③菊地孝平(岩手) 09
④木下翔太(大阪) 18
⑤長田頼宗(神奈川)19
⑥池田浩二(愛知) 18

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 この最後の第3試合で、ささやかな?波乱が発生した。1マークを先取りした萩原と例によって異次元の2コース差しを放った峰の一騎打ちから、ギリギリ舳先を残した峰が1着を奪いきったのだ。それはそれは見応えのあるマッチレースで、わずかなターンのあれこれでどっちが先着してもおかしくない激闘だった。

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 萩原18号機vs峰54号機。
 勝った峰がインタビューで語ったとおり、この両機の今日の仕上がりは「直線(特にスリット後の伸び)は萩原が上、手前のターン回りからの出足はわずかに峰が上」だったと鑑定している。それを合算すればやはり萩原18号機が上回っていたと感じているが、明日の決勝戦では機力のトータル値はさほど意味をなさないだろう。

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 萩原が1号艇ではなく、4号艇になったのだから。今節の萩原は、超伸び型の18号機に手を焼きつつもレースごとに手前に押したり引いたり、相棒の機嫌を取りながら予選のトップまで上り詰めた。前検では「正直、イヤ」という心配な言葉も発したが、基本的に節イチの伸び足だけは誰にも譲らなかったと思っている。で、手前の足は良かったり悪かったり、を往来した5日間だったが、今日の敗因は「やはりモンスター級の2コース巧者・峰を振り払うだけの出足はなかった」という見方もできるだろう。

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 だとするなら、萩原18号機が決勝戦の1号艇→4号艇にスライドしたことは、一概にV勝率が格段に落ちる事象だとは思えないのだ。節間、萩原は18号機がどこまで伸びるか、実験的にとことん伸び型に特化して実戦に臨んでもいる(3日目の3号艇)。「正直、イヤ」という前検から、しっかりと相棒の長所と向き合い、その長所を活かそうとするところまで両者の関係は進展したわけだ(笑)。明日の萩原がパートナーとどんな会話を交わすかまだ分からないが、4カド想定で自慢の伸び足を殺す可能性は低い。むしろ3日目の伸びMAXが再び実現できれば、イン戦と同じくらいのV確率になるはず、と伸び型フェチの私は勝手に期待を膨らませている。

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「明日は外が萩原さんなんで、まくられる覚悟はしときます!」
 峰は冗談っぽく語ったが、吉川、今垣も含めた内3艇にとってはジョークでは済まされない配列だろう。さらに言うなら、萩原18号機をマークするであろう田村、瓜生も「自分が勝つべき展開」を具体的に想定しながら調整できるだろう。
 明日の決勝戦は、萩原18号機の仕上がり&スタート次第で、誰にでも相応に勝つべきチャンスがある激戦カード。
 これが私の勝手な展望だ。正直、舟券を買う身の上としても「萩原1号艇」より何倍もワクワクできるカードになってくれた。去年の今垣光太郎に続いて、今年の決勝戦も4番バッターのサヨナラホームランでケリが付くのか。私のゲーム予想は、大方の読者にはもうバレバレでしょうな、ムフフ。(photos/チャーリー池上、text/畠山)