BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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鳴門オーシャンカップTOPICS 3日目

宿題。

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 鳴門の絶対エース田村隆信がフライングに散った。地元のファン、選手、関係者にとっては号泣ものの大惨事だ。
 昨日までコンマ09・11・04と力強く踏み込んでいた田村は、この6Rのスタート展示でもコンマ01、キワまで突っ込んだ。おそらく、「本番も同じ起こしタイミングで行ける(行く)」と決めたのだろう。実戦では4カドから内外の5艇を1艇身ほど出し抜く、唯我独尊のトップスタートで鮮やかにまくりきった。これがコンマ00のタッチであれば、予選の暫定トップに浮上する殊勲の踏み込みだった。
 だがしかし、この気合パンパンの突撃はわずか数10センチ、コンマ01だけ臨界点を突き抜けてしまった。もちろん、田村自身も相応の覚悟を持っての踏み込みだったと思うのだが、あの一線だけは超えてほしくなかった。本当に残念だ。

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 明日からは書くべき余裕がないので、田村の今節に懸ける思いについてもう少し触れておきたい。まずは4年前、鳴門では史上初のSGとされるオーシャンカップに、田村はじめ徳島支部の選手はひとりたりとも参加できなかった(シンプルに選考基準を満たす選手がいなかった。田村は選考ランク87位)。
「初めての地元SGなのに、地元レーサーがひとりもいない」
 という鳴門のファンの忸怩たる思いは、絶対エース田村の胸に重く突き刺さったはずだ。翌年、鳴門に再びSGのグラチャンが招致されると知った田村は、すぐに気持ちを切り替えてSG戦線で奮闘。早い段階で当確ランプを点した、はずだった。
 が、16年12月のGPシリーズ準優で激痛のフライング。この無防備な勇み足一発で、田村はまたしても地元SGの権利を剥奪される。結局、その鳴門グラチャンにも地元レーサーの姿はひとりも存在しなかった。エース田村の心中にどれほどの悔恨と地元SGに対するさらなる思いが募ったか、推して知るべしだろう。

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 そして、今回のオーシャンカップだ。鳴門で3度目のSGが開催されると知った田村は、早いスタートを封印しながら選考ポイントに関与する記念戦線で暴れまくった。SGの準優や優勝戦に乗るたび、ピットにいる黒須田の前で「冷静に、冷静に」と自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
 絶対に同じ過ちは犯さない。
 そう心に決めて走り続け、ついに選考ランク2位で鳴門オーシャンカップの斡旋メンバーに名を連ねた。この1年間の田村隆信は、掛け値なしに今節のためだけに全身全霊で走り続けたのだ。本人からそれを聞かずとも、水面の至る所にその思いは散りばめられていた。

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 地元SG参戦という悲願が達成された瞬間、田村を含めた鳴門関連のすべての人々の思いは「田村の地元SG優勝」へとスライドしたはずだ。それは、中道善博さんや瀬尾達也さんなど往年の名選手たちの叶うべくもない悲願でもある。田村は60余年に及ぶそれらの熱い思いをすべて自分の体内に刷り込ませて、ここにやって来た。モーター抽選でワースト機を引くやいなや、主要な部品を換えて初日のドリーム戦に臨んだ。この1年、我慢に我慢を重ねたスタートも封印を解いて、鬼神の如く攻めまくった。
 そして…………。

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 今日の田村のフライングに関して、さまざまな人々がさまざまな思いを抱いたことだろう。
 優勝できる足だったのに、もったいない。
 勝負に行ったんだから、仕方がない。
 ここで切っちまったら単なるバカだ。
 いろんな思いを背負い過ぎてしまったか。
 勝負師の田村らしい末路だ。
 どんな思いも、それぞれに正解だろう。田村本人の中にもさまざまな思いが逡巡したと思うが、私の勝手な思いはこうだ。
 今節の田村は、フライングによって新たな「宿題」を残した。
 この1年(4年と言うべきか)の田村の熱い思いと素晴らしいレースの数々を私なりに汲みつつ、それでも「今節の田村は何もしなかったに等しい」と辛口の言葉を寄せておきたい。次につなげるために。

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 さてさて、最大のV候補と目していた田村がFに散り、今節のV戦線は大混戦の様相を呈した。現時点での私の予想は……マジで分かりませんっ!! もちろん、暫定トップの瓜生正義が成績&パワー面でやや有利とは思うが、「優勝して当たり前の超抜パワー」にはほど遠いと考えている。

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 同2位の茅原悠紀も抜けて良い足には見えないし、台風の目とも呼ぶべき高野哲史(3位)、初日のセット交換から大活躍している枝尾賢(4位)も息切れする可能性は低くない。むしろ33313着と不気味に得点を加算している桐生順平(5位)、前検から気配が良さげな山口剛(9位)篠崎元志(10位)、鳴門SG3連覇を目指す石野貴之(21位)、SG連覇に燃える徳増秀樹(15位)、そしてそして昨今は無敵モード突入の峰竜太(7位)などの実力者の底力が最後にモノを言うのかも。
 うーーーん、本当に混沌として予断を許さぬシリーズになったと思うのだが、断然のV候補が消えた以上は下克上のニューフェイスに優勝してほしい、と思うのは私だけだろうか。

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 それからそれから、オーシャンカップと言えば、そろそろ気になるのが7月末〆のダービー勝負駆け! 例によって5日目の敗者戦から本腰を入れるとして、現在ボーダー近辺でお尻がヒリヒリ焼き付きそうな選手を列挙しておこう。
★ダービー勝負駆けと今日の成績
西村拓也 7・23…1・3着
山口 剛 7・22…3・4着
寺田 祥 7・20…1着
馬場貴也 7・19…1着
―ボーダー7・19―
赤岩善生 7・17…2着
平本真之 7・16…3・4着
大山千広 7・16…5着
吉田拡郎 7・12…1・3着
木下翔太 7・10…4・3着
※勝率は昨日まで。

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 9人で4勝など、なかなかに活躍した1日ではあったな。特に1Rの西村拓也と5Rの寺田祥は人気薄でアタマに突っ込み、ともに万舟を演出! 昨日のうちに紹介しておくべきだったかも?(笑) ボーダーど真ん中の馬場貴也(今日の1着でややアップ)は準優1号艇の勝負駆けでもあり、明日はかなり重要な2走になりそうだ。7R3号艇と11R6号艇に注目!(photos/チャーリー池上、text/畠山)