BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――海王への道!

10R アロハセーフ

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 ポイントは2周2マークだ。2番手先行していた桐生順平がややターンマークを開けたターンとなると、そこに西山貴浩、峰竜太が相次いで飛び込んだ。3艇が重なるように旋回し、その勢いで大外の桐生、真ん中の西山が押し出されるような格好に。峰が逆転で2番手を獲り切った。近年、接触があっての逆転に対するジャッジは厳しく、不良航法がとられてもおかしくないような局面。事実、峰が優出会見にやってきたのはずいぶん時間が経ってからのことだった。しかし、セーフ! 峰が見事にファイナル行きを決めた。

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 装着場のモニター前には、すぐさま峰と西山が陣取った。しゃがみ込んでモニターに食い入るように目を向ける二人。件の2周2マークでは、西山が立ち上がって笑顔で峰に抗議(笑)。峰も笑顔を返し、なんだかんだでノーサイドなのであった。
 その西山を池田浩二がからかう。「アンタは惜しい!」。人差し指を突き付けて池田が言うと、西山は身体をねじって悔しがる。さらになんだかんだと言葉を連ねてからかう池田に、「んもーっ!」と西山は池田に突撃(笑)。池田は超抜の出足でそれをすり抜けて、逃げ切ったのであった。勝っても負けても、西山の周りはにぎやかだ。

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 ただ、ピットに戻ってきた直後の西山は、眉間にシワを寄せ、唇を噛みしめて悔恨に耐えている。3周1マークでは峰に猛アタックしてみせたように、本気で優出を奪いにいったのだ。勝負師として戦い、悔しさをぐっと腹の底に呑み込んだあとには、仲間に対して道化師のようにふるまう。西山貴浩は奥が深い、のである。

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 勝ったのは茅原悠紀だ。逃げ切り快勝、であった。気になったのは、会見で「皆さんが思ってるよりずっと、(エンジンは)出ててないですよ」という言葉。出足、回り足はしっかりしているのだが、伸びが皆目なのだそうだ。この準優でも、2コースの峰にのぞかれるかたちになっている。なんとかしのいだ準優のイン戦、しかし3コースから戦うことになるであろう優勝戦では伸びの不足は茅原の攻撃力に影響しないだろうか。
 それでも、出足には確固たる自信がありそうで、その旋回力が脅威になるのは間違いない。

11R 6年ぶりと初優出

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 会見で「6年ぶりのSG優出」と振られた山口剛は、即座に目を細めて、苦笑いを見せた。「こんなに乗ってないんだ、というのが正直なところですね」。それは僕も同じ気持ちです! そんなにSG優出から離れてたんだっけ。正確には約6年7カ月。13年グランプリシリーズ以来だ。その間には勝率1位に輝いたこともあったし、決して落ちぶれていたわけではないのだが。
 山口は、前回のSG=グラチャンの出場を予備2位で逃している(予備1位の丸野一樹が繰り上がったので、結果的には次点に泣いたことになる)。ただ逃しただけではない。地元SGの出場を逃してしまったのだ。これはやはり悔しかったようだ。自分の繰り上がりがないとわかった後、三国の追加が入ったのだが、「サンダーバード(福井方面行の特急)が悲しかったですね。飲み物買い忘れて乗ったら、車内販売もないし(笑)」。そうそう、サンダーバードに乗るなら乗車前に買いこまなきゃダメなんですよねー、というのはともかく、SGをやっている地元から離れなければならなかったのは、痛恨の極みであっただろう。
 その次のSGで、久々の優出を果たすのだから、ボートレースはわからない。出足、回り足はしっかりしているとのこと、2コース向きの足と言っていいだろう。明日は10年4カ月ぶりのSG制覇にチャレンジだ。

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 このレースでのもう一人の優出は、高野哲史。SG初出場で初優勝はお見事すぎです! 快挙を果たした高野もニコニコだったが、出迎えた師匠=吉川元浩もニッコニコ! 初めて師弟で参戦したSGで、愛弟子が優出を果たしたのだから、吉川が高揚するのも当然なのだ。
 山口と肩を並べて控室に戻る際、カメラマンが勝った山口を差し置いて、高野にポーズを求めるという場面もあった。こういうリクエストはおそらく初めてだろう、山口に気を遣うそぶりも見せながら、ぎこちなく笑顔を浮かべていたあたりは実に初々しい。
 足的には、やはり出足がしっかりしている、と。先に書いてしまうが、優出メンバーは全員が出足型と口にしている。優勝戦は6号艇。師匠のアドバイスも受けながら、一発勝負の調整をする可能性は? 枠的に優勝戦の雰囲気に呑まれることはないだろうから、その仕上げぶりがとにかく気になるのだ。

12R ダブルリーチ!

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 12Rではもう一人、SG初優出が出ている。枝尾賢だ。前検日のコメントは非常に厳しかったものが、初日のセット交換で当たりを出し、「日に日に良くなっている」とパワーアップに成功して、さらには優出。最近ではまれにみる急上昇ぶりではないだろうか。
 急上昇と言えば、昨年9月の江戸川周年でのGⅠ初制覇からの急上昇ぶりもすごい。その賞金の上積みでSG初出場となったグランプリシリーズでは予選突破、そのGⅠVで権利を得たクラシックでは節間3勝、そしてSG3節目のオーシャンで優出、だ。素晴らしいジャンプアップである。
「江戸川の周年を獲らせてもらってから、気持ちが変わりましたね」
 それまでも安定してA1級をキープしてきたものが、ひとつのきっかけでステージを一気に上がっていったのだ。だとするなら、この優出もひとつのきっかけとなるはず。データ的なことを言うと、過去1年、1コースの次に1着が多いのがなんと5コース! 一気に初V、ないとは言い切れない!

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 1着は瓜生正義。予選トップ通過から、王道コースに完全に乗った。準優は福岡ワンツー決着ということで、枝尾と笑顔を交わして喜び合った瓜生。それ以外は、実に淡々としたレース後ではあった。
 いろんなところで騒がれるだろう。まず、オーシャンカップ連覇に王手。昨年の常滑オーシャンを制したことは記憶に新しい。そして、この準優の勝利は通算1999勝目。そう、優勝すればその勝利が通算2000勝となるのだ。まさしくダブルリーチ!(麻雀のダブリーとはちょっと意味が違うけど)
 なお、もし通算2000勝を決めたら「僕の代わりに大山千広が飛び込みます」とのこと。ホンマかいな。区切りの勝利の水神祭でちーちゃんが身代わりなんて……見てみたい気がする(笑)。まあ、きっと瓜生も飛び込むんでしょうけどね。
 ともかく、勝てばSG11V、優勝戦1号艇を決めても落ち着いたものです。この優勝戦、伸びが抜けている選手が見当たらないメンバー構成。瓜生がしっかりスタートを決めれば、攻め込める選手がいるだろうか……。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)