BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――偉人!

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 10R、日高逸子が差し切って1着。いきなり年齢のことに触れるのは失礼と承知で、来年還暦を迎えるとは思えない強さだと言うしかない。日高のレディースチャンピオン初制覇は第2回のここ多摩川。無傷で突っ走っての完全優勝であった。それを勝利者インタビューで振られると、「もう30年以上前のこと」と苦笑いした日高。今回が第34回だから、たしかにそれから32年が過ぎている。というか、だからこそなおスゴい! それだけの年月を経てもなお、第一線を張っているのだ。同じ10Rで大敗した今井美亜は29歳、まだ生まれるよりずっと前に日高は女子トップレーサーだったのだ。いやあ、すごい。レース後はモーターを格納して、明日の準備も怠りなく、とテキパキと動いているあたりも素晴らしい。ちなみに、今日は畠山の59歳の誕生日です。日高と同い年なのだ。ふと隣で呻いている畠山を見ると……いやあ、日高さん、すごすぎです!

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 11Rでは山川美由紀が3着。この人もまたすごい。最後に寺田千恵を捌いて3着浮上なのだが、このベテラン同士の駆け引きがまた渋かった。そりゃあ、スピードでは山川を上回る若手はゴマンといるだろう。しかし競り合って負けないハンドルワークとインサイドワーク、そしてひとつでも上を目指す勝負根性は今でも一級品だ。ドリーム戦が全員4000番台、しかも98期以降で争われるレディースチャンピオンであっても、山川は堂々たる優勝候補の一人である。
 12R発売中、艇旗艇番を手に装着場を行き来する山川の姿が。どうやら、ドリームに出る平山智加、平高奈菜の香川勢の明日の艇番を準備していたようだ。本来なら新兵の仕事を艇界の偉人がやっているのである。さらに、徳島勢の分も準備していたのか、岩崎芳美が恐縮する姿も。そりゃあ山川さんに働いてもらったなんて腰が引けるよね。しかしまるで意に介さず笑っている山川。うーん、カッコいい!

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 その山川に捌かれてしまったけど、寺田千恵もすごいよね。そうか、今回は谷川里江がいないのが残念だが、女子で通算2000勝を達成した4人中3人が、優勝候補の一翼を担う存在として参戦しているわけである。寺田は7Rに出走し(3着)、2走目が11R。7Rのエンジン吊り後はすぐに11Rの艇番を着けてボートを係留所につけている。とにかく素早いのだ。さらに調整も進め、そのかたわらで土屋南の水神祭にも参加。実に精力的なのである。

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 そのテラッチ、こっちが写真撮ってるのに気づいたら、じじじーっとレンズを見つめてくれるではないか。そして、少しずつ首をかしげていって……って、思わずこちらもつられて首をかしげてしまったのでありました。で、こんな写真になってしまった次第(↓)。

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 昔から茶目っ気を折々で魅せてくれたテラッチ、やっぱり年齢のことを言うのは失礼だけど、知命を超えてなお、時にこちらを和ませてくれる人柄に感服する次第なのであった。

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 というわけで、偉人たちが目立ちまくっているわけだが、後輩たちも負けているわけにはいかない! 登番が最も若い土屋南が今日、水神祭を果たしたわけだが、大先輩たちに真っ向から挑んで、一日も早い世代交代を目指してほしいもの。6Rを逃げ切った土屋は9R発売中に水神祭を行なっていると同記事にも記したが、その間、ただ儀式が行なわれるのを待っていたわけではない。時間があるならと水面に出て試運転を行ない、さらにペラ調整も行なって、時間を有効に使っているのだ。その若々しい意気がまた良し! この1勝で一息ついているわけではないのである。

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 7R、残念ながら転覆してしまった西橋奈未も、その後も精力的に動いている。同期の水神祭に参加して、一緒に飛び込んではいるけれども、あの転覆の後だから、どこか複雑な思いを抱いていたはずと信じる。もちろん明日以降、本番の水神祭を果たしてほしいし、今度は土屋を道連れにして心からの笑みでツーショットに収まってほしい(実は水神祭記事のツーショットのとき、いったんは辞退するようなそぶりも見せていたのだ)。

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 10Rで5着に大敗してしまった今井美亜は、遅くまでペラ調整に励んだ。規制線から覗けるペラ調整室では、12R発売中には今井のみが調整作業。誰もいない調整室で、今井は懸命にペラを叩き、ゲージを当てて、また叩き、を繰り返していた(その後、西橋が寄り添う瞬間もあった)。昨年末のセンセーショナルクイーンとして、このレディースチャンピオンもこのままじり貧になっていくわけにはいかない。そういえば、その昨年末も機力に苦しみ、とことん調整を続けて、あのミラクルなまくり差しを突き刺している。この努力がどんな実を結ぶのか、明日からも注目しよう。

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 ドリーム戦。平高奈菜にとっては、悔しいとしか言いようのない一番となってしまった。1マークで遠藤エミのツケマイを許し、結果シンガリ負け。レース後は、まだ暑さが残るピットだというのに、ついにヘルメットを脱ぐことがないまま、控室へと消えていっている。まるで、悔しさにゆがむ顔を見られまいとしているかのようだった。負傷休み明けなどと言い訳をしたくないはずで、ならば明日からは巻き返しが必須となってくる。

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 勝った遠藤エミは爽快な表情を見せていたが、それ以上に出迎えた香川素子が嬉しそうだったのが印象に残る。昨日はびわこ周年で馬場貴也が優勝し、君島秀三が2着で地元ワンツー。乗りに乗る滋賀支部の勢いを、遠藤がこのドリーム戦でさらに上乗せしたようなかたちとなった。香川は初日は不本意な成績に終わってしまっているが、遠藤ともども、明日からも滋賀支部勢の上げ潮ムードに注目しよう。(黒須田)