BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

スリットの断崖

10R
①遠藤エミ(滋賀) 15
②櫻本あゆみ(東京)07
③細川裕子(愛知)   06
④川野芽唯(福岡)   10
⑤高田ひかる(三重)04
⑥土屋 南(岡山)   08

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 断然1番人気の遠藤がスタートで後手を踏んだ。「遅れた」というわけではない。ぴったり1艇身だから、ビッグレースの準優としては合格レベル。が、外の5艇がすべてコンマ10以内、しかも2・3コースが半艇身ほど突出してしまっては分が悪い。さすがに百戦錬磨の遠藤でも焦りが生じたか、強引な先マイの初動で不自然に艇が暴れてさらに後手を踏んでしまう。

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 この大本命の迷走を横目に、完璧な小回りターンで先頭に躍り出たのは2コースの櫻本だ。5月の丸亀レディースvsルーキーズバトルでも存在感を魅せつけた(優出3着)が、今度はプレミアムGIの準優でも堂々たる戦いぶり! 櫻本は2017年11月~19年8月まで2年近く実戦を離れた(出産、育児休暇のはず)が、「母は強し」で休養前よりレースっぷりが逞しくなった気がしてならない。

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 ただ、先頭に立っても簡単には勝ちきれないのがビッグの賞典レース。3番手に追いやられた遠藤が外から内へ、2マークで凄まじい切り返しを繰り出した。SGで揉まれ続けた女の渾身の勝負手。この奇襲に櫻本が怯んだ瞬間、冷静に外に開いていた細川がスルリと最内を差し抜けた。展開一本の逆転劇=「抜き」ではあったが、引き波を超えてズンッと出て行くパワーはやはり強烈。細川70号機の出足系統は今日もゴキゲンで、手前の足に関しては守屋26号機と節イチを争う超抜パワーと言いきっていいだろう。

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 逆転のファイナル一番乗りが決まった水面は、櫻本vs遠藤の一騎打ち。格上の遠藤があの手この手で際どく櫻本を追い詰めたが、逆転には至らない。最後の最後まで遠藤に決め手を与えない櫻本の鉄壁のブロックは見事だった。機力的にもわずかに遠藤を上回った印象があり、私のB+【出A・直B】というパワー評価を修正する必要もありそうだ。

予行演習ならば……

11R
①平山智加(香川) 07
②日高逸子(福岡)   13
③佐々木裕美(山口)11
④渡邉優美(福岡)   14
⑤水野望美(愛知)   08
⑥松本晶恵(群馬)   10

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 後手を踏んだ遠藤とは裏腹に、こちらの大本命はコンマ07のトップスタート。スリット後の行き足も素晴らしく、1マークまでに後続をズンズン突き放してインモンキー一発で3枚目のファイナルチケット(1号艇か2号艇)を不動のものにした。強い。

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 バック2番手は、3コースから握った佐々木がガッチリ確保。この時点で1-3態勢が固まったように見えたが、その3艇身後ろから猛追したのが水野だ。2マークで佐々木がわずかにターンマークを漏らした内に差しハンドルを捩じ込んで、その差は瞬時に1艇身。さらに佐々木が平山の引き波をなぞっている間にジリジリと差を詰め、2周1マークの手前でガッチリと舳先を突き刺していた。

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 佐々木20号機は戦前に「エース」と謳われていたが、予選道中では全体的にやや甘い部分があるように見えた。特に競り合いで引き波に乗った時の出足系統が物足りないと感じていたのだが、その弱点を突かれたと見るべきか。先手を奪われた佐々木は2周1マークで渾身の強ツケマイを浴びせたが、それを感知した水野も艇を併せて応戦。外から外へ、2周2マークでも握りマイを放った佐々木をスピーディな小回りで突き放し、ここで水野の嬉しいGI初優出が約束された。佐々木20号機をA(上位)とするなら、3艇身差を逆転した水野37号機のB+【出A・直B】という評価はこれまた是正する必要がありそうだ。

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 一方、インから圧勝した平山67号機の評価は日替わりで変わった(どちらかと言うとダウン方向)が、今日は出足~行き足の部分が強力で「しっかり手前に寄せきった」という印象を抱いた。ただ、あまりの圧勝でスリット~1マーク以外の比較材料がないレースだったし、勝ちタイムの1分49秒7も平凡だったし、守屋26号機や細川70号機との強弱には言及できない。まあ「明日も1号艇でインから同じ機力、同じスタートならすんなり勝てる足色」程度の言葉は残せるのだが、12Rの結果は……?

たったひとつの不安

12R  並び順
①守屋美穂(岡山) 16
②小野生奈(福岡)   15
③塩崎桐加(三重)   11
④山川美由紀(香川)17
⑥深川真奈美(福岡)19
⑤寺田千恵(岡山)   22

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 インコースからほぼ1艇身。タイミングとしては10Rの遠藤と一緒だったが、外からゼロ台で迫る敵はなし。慌てず騒がず行き足を伸ばして、今日も大本命の守屋が危なげなく逃げきった。

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 優出争いとして惜しかったの3コースの塩崎で、トップスタートからスリット後の直線足も上々。誰よりも先に守屋に迫るべくレバーを握ったが、ターンマークを大きく外すオーバーターンになってしまった。サイドが掛からなかったと言うより、私の目には「はやる気持ちと初動のハンドルがシンクロしなかった」ように見えたのだがどうか。
 塩崎が膨れている間に、冷静な差しハンドルで2番手を取りきったのが小野だ。2日目にインの平山を完全に捕まえた2コース差し。今日はどうかと見ていたが、ターンの出口で守屋に2艇身ほど突き放された。

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 もちろん、この彼我の差をもって「守屋26号機が平山67号機より強力」と言うつもりはない。2日目と今日の平山67号機はまったくの別物だと感じたし、風などの気象状況も影響したはずだ。比較はしないが、「今日の守屋の逃げっぷりは、断然の節イチ時計1分48秒2(2位は細川の48秒5。節間で48秒台を叩き出したのはこのふたりのみ)も含めて文句の付けようのない強さだった」と断言したい。

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 当然、平山にも言及した「明日も1号艇なら」というくだりが守屋にも当てはまるのだが、ただひとつだけ今節の守屋に弱点があるとすれば、やや慎重なスタートだろう。昨日はコンマ18で今日はコンマ16。明日も1艇身を目指してスリット横一線になれば、これはもう無敵モード。だが、今日の10Rのように外の誰かしらがゼロ台半ばまで踏み込めば、それはそれで危ういイン戦になることだろう。まあ、強心臓の持ち主だからして、こんな心配は老婆心でしかないとも思うのだが、「守屋がしっかりスタート勘を掴めていない」とすれば他の選手にも付け入る隙はあるだろう。
 2着の小野52号機に関しては「中堅上位~良くて上位の下」と見積もっていて、今も修正が必要とは思っていない。私の見立て違いの可能性もあるが、ファイナル1~3号艇の超抜トリオ(三島敬一郎リストのトップ2+穴モーター。私も初日にトップ3指名)とは、かなりのパワー差があると確信している。5号艇から3年ぶりの女王に返り咲くためには、それなりに大きな展開の利が必要とされるだろう。(photos/チャーリー池上、text/畠山)