BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――静

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 午後一番のピットは、静けさをたたえていた。装着場には誰もおらず、水面や係留所からエンジン音も聞こえてこない。報道陣の数も実に少なく、プロペラを叩く音も小さくしか響いてこない。SGでは3日目ともなると、大きな作業をする選手が少なくなるのは珍しいことではないが、こんなにも静かなピットはなかなかに珍しい。ようやっと目にした選手は長田頼宗。お互いの存在を視認しやすい状況なので、すぐに目が合って、同時に「おはようございます」。もっとも長田も作業をしていたというわけでもなさそうで、そのまま控室へと戻っていったのだった。

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 整備室でも、大きな動きは見られない。いや、実際は徳増秀樹が本体を外してテーブルの上に置いてはいたのだ。しかし調整個所は“下のほう”のようで、ようするにキャリアボデーが該当部分のようだった。徳増は棒状の部品を(ドライブシャフトかも)奥のほうでじーっと見つめていて、どうやらひずんでいないかどうかを確かめていた様子。この作業がけっこう長い時間にわたって行なわれていて、そのようすもまた静かなものだった。

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 ペラ調整室には、それなりに多くの選手の姿が見られた。目を引いたのは瓜生正義と大山千広のコンビ。隣同士で調整を行なっており、時に言葉を交わす場面もあった。大山がアドバイスを求めていた瞬間ということであろう。SGでは頻繁に見られるシーンであり、二人は正式な師弟というわけではないが、その様子はまさに師に教えを乞う門弟といった雰囲気である。

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 1R終了後には、羽野直也もすぐに瓜生のもとに歩み寄って、言葉を投げかけていた。それに瓜生が応える。これも瓜生に教えを乞うていたものだろう。瓜生と彼らの間には年齢差にして20ほどの隔たりがあるわけだが、それを埋めるだけの人望が瓜生にはある。まさに福岡支部の精神的支柱なのだ。羽野と大山は瓜生からの教えをきっちりと受け止め、そして後輩へと受け継いでいくことになるだろう。そうして瓜生の魂は福岡支部に生き続ける。

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 本物の師弟である原田幸哉と柳沢一は、今日もともに行動していた。係留所から二人そろって上がってきて、言葉を交わしながら控室へと戻っていく。それにしても、ここまで一緒にいる師弟も珍しいかもしれない。たとえば井口佳典と新田雄史は、エンジン吊り以外ではほとんど一緒にいるのを見ないし、峰竜太と上野真之介も同様(山田康二であっても同様)。平本真之と磯部誠もそうだし、今村豊と白井英治だって別行動が多い。比較的肩を並べるシーンをよく見かける中野次郎と永井彪也も、そこまで足並みをそろえて行動しているわけではない。原田と柳沢の密接ぶりはかなり抜けていると言っていいだろう。支部が違うからなおさら、ってことなんでしょうかね。

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 1Rでは上野真之介が転覆。もろもろ駆けまわるのはもちろん師匠である峰竜太の役割である。転覆後に「選手異常なし」のアナウンスがかかっていたので、峰もそれほど心配そうな様子ではなかったが、上野がレスキューで戻ってくるときには係留所に駆け下りている。上野は幸いにもケガはなさそうで、事故艇の引き上げにも駆け足で参加していた。

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 事故艇の引き上げというのは、たいがい「同地区」の選手が駆け付け参加するもの。同支部はもちろんだが、陸に引き上げてからはいわゆるエンジン吊りになるので、できるだけ手早くモーターを外せるように支部が違う同地区の選手もヘルプすることが多いのだ。というわけで、福岡支部、長崎支部も手が空いている人は加わることになる。福岡からは篠崎兄弟と仲谷颯仁、長崎からは桑原悠が参加した。で、やっぱり中心となるのは佐賀支部で、峰と上野が最前列でボートを待ちかまえ、福岡勢はやや後ろで待機するってかたちになるんですね。まあ自然な分かれ方ではあるんだろうが、なるほどな~なんて感心して見入ってしまったのでありました。(黒須田)