10Ｒ発売中、丸野一樹がひどく慌てた様子でボートを陸にあげた。すでにがらんとした装着場。整備室の真ん前で、整備士さんがキャリアボデーを用意して待ち構えている。そして、なんと装着場でキャリアボデー交換が始まった！
丸野は12Ｒ出走で、スタート練習を終えてからボートをあげている。本来ならモーターをいったん外してから交換作業をするのだが、その時間がもう残されていなかった。そこで、モーターを装着したまま交換作業という力業に。本体を外し、ギアケースも外して、新たなキャリアボデーを装着！ 作業自体はそれほど複雑ではないので時間はそうはかからなかったが、タイミングを考えればこれしかなかったのだ。珍しい光景であり、またキャリアボデー交換を間近で一から見られたのは、個人的にはいい経験でありました。勉強になったなあ。
新たなキャリアボデー、と書いたが、実はこれは元に戻したものだった。12Ｒ１回乗りだった丸野は、今日は何度もキャリアボデーを換えて戻してを繰り返したとか。それでもちっとも上向きにならないので、結局元に戻した格好。結局ギリギリになって元に戻したことにバツの悪さを感じたのか、丸野は整備士さんたちに何度も頭を下げて謝意を伝えていた。
一日たっぷりと悪戦苦闘した丸野を見ていたのだろう、交換作業中の丸野に馬場貴也が労いと同情（結局上向かずに元に戻したことだろう）の言葉をかけていた。毒島誠も同様。いやはや、マルちゃん、本当に一日お疲れ様。元に戻したという結果になってしまったが、その奮闘は無駄にはならないと思います。あと、丸野のリクエストにこたえ続けた整備士さんたち（部品係の方？）もお疲れ様でした！
キャリアボデーといえば、もう一丁、珍しい光景が。11Ｒ発売中、長田頼宗がモーター架台にキャリアボデーだけを乗せて運んでいたのだ。そして、そのままボートが格納されている艇庫の中へ。10Ｒを走った長田のボートは、いちばん手前に格納されていたのだが、長田はおもむろにキャリアボデーをボートに装着。えっ、それはどういうこと？ キャリアボデーにはハンドルとワイヤーで結ぶステアリングバーとボートに装着させるフック状のブラケットが一体となってはいるのだが、本体がない状態で装着しているのを初めて見た。交換を考えて、ボートとの装着相性を確かめたとか？ 直接取材が難しいので確認できなかったが、大山千広も怪訝そうに見ていたので、やはり珍しい動きなのであろう。
その大山絡みで。10Ｒの展示航走を、瓜生正義が整備室のモニターでやけに熱心に見入っていたのである。３号艇が大山とわかれば、なるほどの光景。瓜生は大山の旋回をチェックしていたのだろう。もちろんモーター気配もあるだろうし、旋回自体を見てもいただろう。実際のレースもあわせて、レース後に大山から何かを尋ねられれば即座にアドバイスができる。大山がきっと意見を求めてくるであろうと、瓜生はしっかりと大山の動きをチェックしていたというわけだ。瓜生はきっと大山に限らず、羽野直也や仲谷颯仁の、あるいは他の後輩たちの、走りを見られるときはしっかり見ているのだろう。福岡支部の層の厚さの秘密のひとつは、この偉大なる先輩がいつも後輩たちを気にかけていること、だと思わされる。
その10Ｒでは石渡鉄兵がまさかの５着大敗。暫定16位まで順位を下げている。さすがにレース後の石渡は難しい表情を見せており、もやもやしているであろう胸中が伝わってくるのであった。明日は３着勝負の４号艇。６号艇に菊地孝平がいて、進入で動く可能性がある。今節は前付けにはすべて突っ張っている石渡、明日はどんな戦略で臨むだろう。（ＰＨＯＴＯ／池上一摩 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
