BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ペラ

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 いやはや、6号艇と5号艇で1着ですか。上野真之介。いずれも枠なりでの勝利だから、価値が高いなんてものじゃない。というか、パーフェクトだって狙える成績でしょう。それが昨日の後半は2コースで6着だから、ボートレースは難しい。ともあれ、10Rの5コースまくり差しはまさに値千金の勝利であった。
 あがってきた上野は、歓喜というよりはどこか居心地が悪そうですらあった。いい意味での、やっちまった感、というか。昨日は10マンシュウ、今日は5マンシュウだから、ほんとやっちまったな! もちろん素晴らしい「やっちまった」である。

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 一方、師匠の峰竜太は8R、やはり5号艇5コースから6着だから究極に対照的である。師匠の面目、丸潰れ!? その峰が、まさに10R発売中、たまたま規制線の近くにやってきて、こちらの姿を見るや、「なんか調子悪い」とこぼした。ソーシャルディスタンスということで、込み入った会話にはならなかったが、この秋のリズムの悪さを嘆いたのだ。噛み合ってない、何かおかしい、というような言葉も口をついた。ただ、素直に胸の内を吐露したことは、悪いことではないと思う。つまり、現状としっかり向き合っているということだからだ。それができていれば愚痴なんかいくらでもこぼしていい。こちらも二言三言返して会話は終わったが、峰のなかに真っ当な悩みがあることはむしろ好意的に捉えられたのだった。

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 10Rでは、丸野一樹が1マークでキャビって失速している。その原因をどうやら丸野は掴みかねているらしく、悔し気に顔を歪ませながらも、何度も首をひねっている姿があった。労った磯部誠には、彼の地元水面ということもあったか、もろもろと尋ねたりもしている。また、「大丈夫か?」と気遣った峰竜太にも同様に。峰は「(キャビる)前兆がなかったのなら、ペラかもね」。その言葉を聞いて、丸野はペラ室へと向かったのだった。そこまでの2戦は2着3着とまずまずだっただけに、痛い6着。明日は巻き返しの一日としたいところ。

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 ペラ室といえば、毒島誠が今日もギリペラ。10Rのエンジン吊りが終わって、12R出走メンバーはみな係留所に向かって展示準備をするわけだが、毒島はひとりペラ室へ。これが毒島スタイルである。昨日も書いたとおり、ペラ室は取材規制線の近くで、カメラマンが鈴なり。ペラ室へと向かう際、その前を通ることになるわけで、スーパースターが通過すればみな一斉にレンズを向けて、シャッター音を響かせる。きっと、けっこう気になるよね。でも毒島はしかと前を向いて通過。その列の最後にいた僕には「たくさん撮っていただいて、ありがとうございます」と笑った。本音かどうかはともかく、このサービス精神も毒島スタイル。こちらこそシャッターチャンスをありがとうございます。

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 そうそう、ペラ関連で言うと、前半の記事では村田修次名人教室を記したが、終盤には柳沢一教室が開講されていた。生徒は守屋美穂。閑散としたピットの隅にあるベンチに守屋がポツンと座っていて、それはやや不思議な光景にも映ったのだが、柳沢が作業を終えるのを待機しているものだった。あらわれた柳沢に駆け寄ると、ペラ室に入って柳沢がペラを見ながらアドバイス。11Rの守屋の逃げ切りは、そのアドバイスが活きたものかも。

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 考えてみれば、このチャレンジカップは女子にとって、いいチャンスかも。普段はあまり顔を合わせないSGクラスのペラ巧者がそこにいて、しかも戦っているフィールドが異なっている。オールスターなど、SGで同じ舞台を争っているならともかく、ここでは遠慮なくアドバイスを求められるのではないだろうか。それこそ、支部も期も超越して。

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 これは前半の話だが、田口節子が湯川浩司にアドバイスを求める場面があった。これは銀河系同士、同期生。それも、SGでも何度も顔を合わせてきた二人だ。だから、そのやり取りは実に自然なものだったのだが、しかし女子戦が多い田口にとっては、久しぶりだったり、もしかしたら願っていた、やり取りではなかったか。体重差のある男子と女子ではモーターの出方が変わってくるとか、ペラの形も変わってくるとよく言われるが、しかしトップレーサーの理論や形状を学ぶのが血肉にならないわけがない。まあ、今節に限らず、SGやGⅠに出場する女子はいつだって同じようにすればいいのではあるが、ともかく、女子選手によるSG制覇を絶対に見たい僕としては、実に好もしい光景に映るというわけである。明日もこんなシーンが見られるのかなあ、とちょっと楽しみ。

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 さてさて、昨日今日と、池田浩二が遅い時間帯にボートを慈しむように磨いているシーンがあった。今垣光太郎はお馴染みなのだが、池田もそういうタイプだったっけ? 正直、あまり見た記憶がないのだ。1便で帰宿することもなく、最後まで調整に明け暮れ、そしてボートにも愛情を注ぐ。賞金ランク19位の身としてはもどかしい成績が続くが、こうした場面に気持ちが入っていることを実感する、と言ったら考えすぎ? 明日は1号艇。逆転の目を残すためにも、取りこぼせない一番だ。(黒須田)