BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負駆け明暗

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 予選トップ通過は、既報のとおり、稲田浩二。ここまでは展開にツキもあったが、今日はきっちり逃げ切ってみせた。なにしろ、チャレンジカップは15年連続で1号艇が優勝している。準優を逃げ切れば、一気にSG初制覇に近づく。そして、初のグランプリ出場に近づく!
 などと高揚しているのはこちらのほうで、レース後の稲田からはそんな雰囲気は微塵も伝わってこないのであった。この飄々とした感じが稲田の持ち味。明日の準優を逃げ切った後も、こんなふうなんだろうな、と想像してみたりする。それとも、笑顔が爆発するのか!? とにかく楽しみだ。

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 稲田が逃げた10Rで4着に敗れた峰竜太。結果的にだが、3着でもなんとか滑り込めていただけに、この敗退は痛かった。着替えを終えてピットにあらわれたとき、たまたま11Rの展示を終えた上野真之介と顔を合わせた。愛弟子に向かって峰は、「今回だけは、本当に合ってなかった」と調整がうまくいかなかったことを告白している。上野も「いい角度だと思ったのに、刺さりませんでしたもんね」と、2周1マークについて感想を述べている。ペラ巧者の峰でも、ここ一番の勝負で失敗することがあるということだ。まあ、とにかく昨日の減点10が痛かった。グランプリはトライアル2nd初戦1号艇は確定している。年末に向けて、なんとかリズムアップを果たしたい。

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 上野は、11Rで6コース回りになったものの、きっちり2着。今節は6コースが3回あって、1着2着3着。また、5コースで1着と、外コースのほうが成績がいいという(笑)。1号艇と2号艇で順当な成績を残してたら、と思うと惜しい。ただ、師匠とは反対にリズムはいいということなのだろう。自身は予選落ちが決まったこともあって、峰が笑顔で上野を出迎え、上野もそれに呼応している。師匠の分まで!

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 11Rでは池田浩二が3着。池田は2着条件だったので、着がひとつ足りなかった。賞金ランクは19位の池田が予選落ちということは、グランプリ行きは絶望的になってしまったということだ。18位の守田俊介を逆転するには約150万円が必要だが、残される道は準優で事故があって、特別選抜B戦に繰り上がって1着(210万円)くらいだろうか。それ自体がほとんど現実的ではない……。池田はヘルメットの奥で、露骨に顔をしかめた。それはそうだろう。敗戦自体も、GP行きに望みをほぼつなげなかったことも、痛恨に違いない。かなり遠目に見えたカポック着脱場では、脱力している様子が見えた。6着大敗の平本真之に挨拶されても、力なく応えるのみだった。んー、悔しい! 溜息のひとつも出ようというものだ。

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 平本は準優は当確で、すでにグランプリ(トライアル1st)も当確。池田とは正反対の立場であった。しかし、レース後の悔しがり方は池田以上だったかもしれない。6着だったのだ。前半は6コースから1着だったのに……。何度か書いているように、平本は悔しさを決して隠そうとはしない男。それがまたこの男の良さである。だから、準優OKだろうとグランプリに行けようと、大敗を喫したらひたすら悔しい! それを目いっぱい、表に表現するのである。地元からの予選突破は平本と杉山正樹の二人。砦を死守するため、明日は気合の入る一日だ。

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 10R発売中に、予選突破を決めた丸野一樹が声をかけてきた。前半1着で当確ランプを灯し、後半は2番手に浮上しそうなところで舳先が浮き、4着に後退してしまった。しかし果敢なレースぶりは目を惹いたし、足色も上向いているように見えた。昨日の終盤の時間の大幅なペラ調整が当たったのか。ただ、その4着に敗れた一戦は、ニードルの調整に失敗したそうだ。前半の感触が良かったため、ナイターの時間帯でもそのまま行けると踏んだのだが、これがズレていたのだそうだ。この失敗はむしろデカいよね。なぜなら準優はナイターの時間帯であり、こうすれば失敗するという経験を踏んだのだから。準優は濃いメンバーに入ってしまったが、一発あってもおかしくないと思うのだがどうか。

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 女子では、長嶋万記が9Rで差し切り1着。マキスマイルが、静かにではあったが花開いていた。エンジン吊りのとき、徳増秀樹が嬉しそうに長嶋に声をかけ、レースを振り返り合う。長嶋の顔はさらに明るくほころんでいくのだった。4日目を終えて予選3位。地元クイクラ出場に向けて、悪くないポジションだ。まずは何としても優出を果たして、望みをつないで最終日を迎えたい。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)