BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ギリペラとは何か

●11R

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 最近はちょいちょい「ギリペラ」について記している。展示ピットにボートを移動しなければならないタイムリミット、そのギリギリまでペラを叩いている選手だ。これが結果に結びつくかといえばそうとも限らず、なにしろ試運転する時間がなかったりするためか、かえって調整に失敗しているという場合もありそうだが、やはり気になるのですね。その「執念」というものが。
 このレースのギリペラは松本晶恵と遠藤エミ。遠藤のほうがやや早く切り上げ、松本がラストとなった。この二人に関しては、男子のギリペラ常連の毒島誠と同様、いつものことでもある。まるでそれがルーティンであるかのように。そして、ギリペラの成果があったかどうか、あるいはどちらがより仕上げられたかは別として、3番手争いをふたりは演じ、遠藤が逆転で3着をもぎ取っている。

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 遠藤は、報道陣やカメラマンの前を通るときにはキュッと顔を引き締めているが、エンジン吊りの際には周囲に向けて笑顔を見せている。それは仕上げなのかレースぶりなのか、してやったりの表情にも見えていた。対する松本はやはり苦笑い。それでも、スリット先制で見せ場は作っており、それなりの手応えはあったかも。

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 ただ、スリット後に締めていった際、2コースの小野生奈と松本が寺田千恵を挟んで煽るかたちになって、それは危ないシーンとなっていた。寺田がカポック脱ぎ場に帰ってくると、松本はすぐさま駆け寄って頭を下げている。さらに小野も申し訳なさそうな表情になって、謝意を示していた。いろいろな思いはあっただろうが、寺田はノーサイドとしている。こうした激しさもトライアルの本質のひとつだろうが、とにかく事故には気をつけてもらいたいと切に願う。

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 そんな場面もあったが、小野生奈は快勝だ。そうした展開のもつれがありながらの差し切りだから、機力も上々と見え、小野自身も会心の笑顔を見せている。明日も同じ2号艇を引いており、まずは再現を果たしたいところ。

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 小野の差しはもちろん見事だったが、インで差された平山智加は自身のミスを悔やんでいた。1マークは、ターンマークに寄りすぎてふところを開けてしまったのだ。「もう少し(奥まで)踏み込まなければいけませんでした」と会見では何度か繰り返している。平山はその理由を「心の余裕がない」と言った。近況の悪いパターンだそうで、ようするに焦ってしまっているということだろう。1号艇で勝てなかったのは痛恨に違いないが、しかし敗因を分析できていることはポジティブな要素だと僕は思う。次はそれを繰り返さないだけだ。まあ、トライアルは、それを簡単にこなせる舞台ではないかもしれないが。

●12R

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 こちらの「ギリペラ」は実に3人。展示ピットはかなり遅くまで、1と3と6の場所が開いたままだった。なにしろ、3=大山千広は10R発売中に水面に出て行ったので、展示ピットに向かうかと思いきや、試運転で水面を数周。終えると試運転ピットに戻り、ペラを外してペラ室に駆け込んでいるのだ。松本や遠藤、あるいは毒島にしても、このパターンはなかなか見られない。レースでは行き足が鋭く見えたが、この最後の調整で引き出したのだとするなら、拍手しかない。

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 その3艇のなかでは、最初に6=田口節子が展示ピットにつけた。昨日の会見では「今までは気負いもあったが、今年は楽しみたい」と語っていた田口。しかしレースを目の前にすれば、楽しんでいるどころか、最後まで必死に調整を続けるのであった。それがレーサー・田口の性分ということだろうし、レーサーとしては好ましいことだろう。

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 1=守屋美穂が最後の最後に展示ピットへ。その前に水面を2周し、さらに係留所の前あたりでスローの利きを確認してから、ようやく1号艇が入るべき場所へと入っていった。その甲斐あったか、レースは逃げ切り快勝! 他艇を寄せ付けなかった。会心の勝利と言える。
 守屋の会心はまだ終わらない。明日の枠番抽選、B組の1番目にガラポンを回すと、出たのは白! 2戦連続の1号艇に、守屋はバンザイして快哉! こんなにも喜びをあらわにするミポリン、初めて見たかも。思い出す今月初めのBBCトーナメント。緑ばかりで優出してみせた守屋が、今回は2戦連続白。あのとき取っておいたツキがここで花開いたのかも!?

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 2着は平高奈菜。大山のまくり差しを止めるようなかたちで差し粘ったレースぶりは見事と見えたが、ヘルメットをとったときの表情はやや不満げなのであった。なんでも、乗りやすさはあるものの、足的にはたいしたことがないという感覚だったようだ。明日は4号艇を引いているが、もう一丁、上積みが必要な様子。忙しい一日になりそうである。

●シリーズ

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 遅くまで試運転を続ける選手が目立った終盤の時間帯であった。10R発売中、エンジン音がピットに轟いて水面を見やると、水口由紀と五反田忍が並走するかたちで水面に飛び出していった。五反田は予選突破がほぼ絶望的になっていながら、パワーアップの手を休めようとはしない。水口も、初日から懸命に水面を走る姿を多く見かけているひとりだ。

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 中川りなは、10R発売中にギアケースを調整(交換かも!?)。それを終えて装着すると、この時間帯なのに水面へと降りていくのだった。ほんの数周だけの試運転のようだったが、なんとしても感触を今日のうちに確かめておきたかったのだろう。その懸命さに感服。

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 金田幸子は結局、最後の最後、11R発売中の試運転可能時間ギリギリまで水面にいた。ただ試運転をするのではなく、時折ゆるゆるとデッドスローで水面を漂い、かと思うとおもむろにレバーを握って走り出す。起こしの感覚を試していたのだろうか。
 その最後のパートナーとなっていたのが出口舞有子。最後に内外換わり合って2周し、試運転を終えている。金田は現在18位圏内にいるが、水口、出口は明日は厳しい勝負駆け。これを乗り切るため、かなり傾いた西日のなか、走り切ったわけである。いざ、勝負!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)