BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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若手が最高の体験をするピット

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「波乙-全-全」ならず! 3R1号艇に山川波乙。今節はさすがに苦戦しているわけだが、1号艇なら波乙-全-全チャンス! というわけで、取材班界隈ではずいぶん盛り上がっていたわけなのである。そして! 待機行動違反はいただけないとして、コンマ14のスタートから竹井奈美、平高奈菜を向こうに回して先マイ! これは竹井と平高に差し込まれたのだが、その二人が2マーク競りになった間隙を突いて差し返し! 先頭に立ったのだ! 波乙-全-全完成かと、ワタシ、ピットで一人興奮しておりました。

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 しかし修羅場を踏んできた先輩は甘くなかった。竹井が3周ホームで捕まえると、それでも山川は最終コーナーで差し返して粘ったのだが、最後は竹井がハナ差先着。さすがに力量上位の竹井奈美なのであった。山川は2着。

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 で、ピットはというと、実のところ、それほど盛り上がっていたわけではない。勝てば水神祭とかならともかく、単なる若手選手の1号艇というだけのレースではある。波乙-全-全が一部で話題になったことを知らなければ、山川がまあまあ頑張ったということでしかないのが自然である。それでも、長い写真判定の後、竹井1着と対岸のビジョンが映し出した時、「2かぁ……」という声はあがっていた。整備室のほうからあらわれた寺田千恵は、たしかに小さく「残念……」と漏らしてもいた。勝率2点台の新人が竹井や平高を相手によく健闘したのだと、そう捉える向きは少なくないようだった。

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 ピットに戻ると、長嶋万記がニッコリと出迎え、山川の肩をポンと叩いた。同地区の先輩としては、後輩を労いたい思いが大きかっただろう。長嶋の笑顔はとことん優しかった。

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 エンジン吊りが終わると、塩崎桐加の長い“講義”が行なわれた。二人きりで、ボートの脇に立ったまま、会話を続ける塩崎と山川。会話、ではないかな。塩崎が親身になって語り続け、山川はそれにうなずいていた、というほうが正しいだろう。山川はこれが2回目のイン戦。当然まだ慣れていないし、その走り方もよくわかってはいないだろう(待機行動違反もようするにそういうことだ)。この大舞台で強豪を相手に戦ったイン戦は、きっと多くのことを山川に教えたし、さらに塩崎が大事なことを教えたかたちだ。これは紛れもなく、最高の経験である。

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 2Rでは、山崎小葉音が3号艇。スローの3コースからのレースとなった。山崎が内枠に入るのはこれが初めて(デビュー以来、これまではすべて4~6号艇)。すなわちスローも初めて。起こし慣れない位置からの発進ながら、コンマ12のスタートは拍手していいだろう。現代ボートレースは3コースが攻め役になることが多い、というのがセオリー化しているが、今日の山崎はまさにそうしたレースを初体験した。握って攻めて、バックでは中位あたりを走ったものの、最後は6着大敗。大敗ではあるが、レーサーとして次のステップに進んだ一瞬ではある。

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 ピットに戻ると、土屋千明、松本晶恵が優しい表情で出迎えた。そして、エンジン吊りの間から代わる代わる、笑顔で言葉をかけ続けた。群馬支部の先輩として、後輩の初めてのスロー戦に思うところはいろいろとあったはずだ。二人の表情はとことん柔らかで、愛情を感じるものだった。

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 そうそう、2Rの展示前だったか、松本がかなり真剣な表情で山崎に言葉をかけている場面をみかけた。おそらく、スローからの走り方のアドバイスではなかったかと思われる。山崎は神妙な表情で聞き入っており、結果にはつながらなかったものの、山崎自身のスキルアップにはなったものと思われる。レース後の土屋と松本の言葉にも山崎は神妙な顔つきで対峙しており、この経験がステップアップになることは間違いないと思えた。この舞台でスローを解禁したことは、やはり最高の経験となったのである。

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 あ、山崎を労っていた一人が香川素子でした。香川といえば、横西奏恵さんと仲良しで、山崎は子供のころから香川にお世話になっていたかもしれないですね。香川は慈愛に満ちた表情で肩を抱き、最後に背中をポンポンと二、三度叩いた。奏恵ちゃんの娘がここまで来たか。そんな思いもあったりするのかも!?(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)