BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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下関マスターズTOPICS 初日

頑張れ、義生さん!

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 とっくにお気づきの方も多いと思うが、今節は勝率4点台の大ベテランが参戦している。野中義生さん、55歳。このSGの如き大舞台の権利を得たのは、去年の5月18日。大村マスターズリーグ優勝戦(6号艇)で、枠なりの大外6コースから超ミラクルなまくり差しが炸裂! ⑤天野晶夫と①西島義則を引き連れ、22万2700円という特大万舟とともにマスターズの出場権をGETした。おそらく、当の本人がいちばんビックリしたに違いない。
 データベースが整備された1997年以降、義生さんは3度の優勝を果たしている。2001年9月の江戸川一般、2005年4月の江戸川一般、そして実に15年ぶりの優勝にとびっきりの“副賞”が添えられたわけだ。

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 なんと場違いな……。
 義生さんのマスターズ出場を知ったファンの中には、そう思われた方もおられるだろう。正直、私もそのひとりだ。が、キャリアは少ないながら、義生さんのGI戦歴を調べてみたらば「おっ」と唸らせるものがあるのですよ。97年以降、義生さんは3節のGIに参戦している。
★1998年 浜名湖賞 5着・失格(5日目から追加配分)
★1999年 東海地区選 334失33231
★2003年 東海地区選 532414112
 このトータル勝率は7・05!! 人知れず、大一番で勝負強い一面を見せているのだな。「それって18年以上も昔のデータじゃん。さすがに55歳でプレミアムGIは荷が重いでしょ」という見方も正論ではあるが、こと舟券に関して言うなら「外枠から2、3着に絡むだけで好配当間違いなしのお宝レーサー」と捉えることもできる。もちろん、万舟しか買わない私は「随所に舟券に絡める」と心に決めて下関にやってきた。

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 そしてそして、18年ぶりにGIの舞台に立った義生さんの初戦は2R3号艇という好枠だったのだが……なんとなんと、ピット離れで置き去りにされて6コース発進に。お隣の5コースが天野晶夫という並びは奇しくも去年の大村ファイナルと同じだったが、さすがにこの舞台の6コースでは敷居が高すぎた。最アウトから何もできずに6着惨敗。
 さても舟券とは面白いもので、人気の盲点レーサーが大方の予想通りに大敗すればするほど、その選手のオッズは法外に跳ね上がる。今日の義生さんの敗因は「ピット離れ負け」であって、相棒の52号機(三島敬一郎のA+評価)はどこかしらで一発やらかしそうなムードを秘めている。明日の義生さんは1R5号艇。課題のピット離れをしっかり立て直し、枠なりの5コースから52号機の非凡なパワーを生かしきるレースを見せてもらいたい。

千両役者の大見得

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 一方、初日の上位着に目を移せば、往年のスーパースターが縦横無尽に暴れまわっていた。まずは『安芸の闘将』西島義則。初戦の4R1号艇は⑤江口晃生の前付けをガッチリ受け止め、インコースで仁王立ち。バック直線は角谷健吾の2コース差しが入りかけたが、百戦錬磨の巧妙な絞め込みで舳先を振りほどいた。

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 後半の9Rはスタート展示からてんやわんや。④西島の前付けに③吉川昭男が抵抗しながら様子を見る形で、2艇が縦一列に並ぶ珍光景が見られた。そのスタ展で2コースを奪った西島のスタートタイミングは、泣く子も爆笑するであろうコンマ48のフライング!! もちろん、突き抜けすぎてスリット写真から跡形もなく消え去っていたが、インコースの村田修次名人は「やれやれ」と眉を寄せたことだろう(村田もお付き合いの+コンマ23だったけどw)。

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 いざ本番、30分前にあれほど暴れた西島は、一転してスロットルレバーを握らずやんわり進入。肩透かしを喰った昭男さんもすぐに減速し、内4艇は枠なりに収まった。ここでの珍光景は、5号艇・田頭実のダッシュ6コース!! 見た目には5カドも取れる流れだったが、おそらく伸び足が際立っている⑥原田幸哉のマーク策に切り替えたのだろう。それにしても、6コース自体が珍しい(直近1年で1回のみ、おそらく内に抵抗されてのオールスローか)のに、まさかまさか田頭実の6コースダッシュ戦を拝めるとは……これだからマスターズはやめられない。

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 あ、主客がブレてしまったが、陽動作戦で4コースに収まった西島は5カド幸哉の猛攻を果敢にブロックしながら差しハンドルを挿入。道中でも同じく幸哉の猛追を老獪かつ的確なターンで完封し、貴重な2着をもぎ取った。
「尊敬するミスター今村豊さんが去ったいま、俺がやらずに誰がやる!?」
 そんな気概がひしと伝わる1・2着だった。今年の10月で還暦を迎える西島が11年ぶりに名人位を襲名しても、驚くファンはおそらくひとりも存在しないだろう。

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 そんなやんちゃな水面で、西島以上の成績=ピンピン連勝を飾ったのが浜野谷憲吾だ。いやあ、大先輩たちの泥臭いレースっぷりとは別物の可憐すぎる勝ちっぷりは、逆に書くべき要素が少ないな(笑)。6Rは3コースから剃刀でリンゴを真っ二つに切り裂くようなまくり差し一閃。後半11Rはインコースから他艇に影すら踏ませぬ圧逃劇。もう、前節の大村GI優勝の勢いが、まんま走る姿に乗り移っていた。この絶好調のリズムとエンジン出しの自信が織りなすピンラッシュが、いったいいつまで続くのか……今の浜野谷憲吾には、月並みでも「強い」という言葉しか思い浮かばない。

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 詳しいパワー診断は明日以降に回すが、やはり前検でSランクに指名した寺田千恵の気配がかなり良い、と実感した。実戦としては開幕戦をインから逃げきっただけだが、回ってから出口までのレース足が軽快の一語。

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   その後のテラッチは、旦那さんの立間充宏と【3R後・4R後・5R後】と仲良く3度に渡る足合わせ。で、3度ともに際立って見えたのがテラッチのターン回り~出口の押し足だった。こと今日までのパワー評価で言うなら、ふたりの関係は「婦唱夫随」に見えてしまったのがどうだろう(笑)。
(photos/シギー中尾、text/畠山)