BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――戦友

f:id:boatrace-g-report:20210421160956j:plain

「光ちゃん、ごめーん! 出させてー!」
 試運転からあがってきた今垣光太郎が、装着場の空いたスペースに艇を運ぶと、それが三嶌誠司の進路をふさぐかたちとなった。ちょうどボートをリフトに運ぼうとしていた三嶌、今垣に声をかけて進路を開けてもらったわけだ。

f:id:boatrace-g-report:20210421161040j:plain

「あ、すみませーん!」
 そう言って、ボートを動かし、三嶌が出ていくスペースを作る今垣。「光ちゃん、ごめーん!」とそのスペースを通ってリフトに向かう三嶌。「すみません!」とまた謝る今垣。……って、今垣のほうが先輩ですよね(笑)。実は年齢は三嶌のほうが1つ上なのだが(私と三嶌は同い年)、今垣63期に三嶌69期。登番重視のボート界では、年齢より期、なのである。でも三嶌は「光ちゃん」と言い、今垣「すみませーん」とへりくだる。そういう間柄なのだし、また光ちゃんと言われても許す今垣の人柄ということである。それに長きにわたってSG戦線をともに戦ってきた、戦友のような感覚もあるだろう。

f:id:boatrace-g-report:20210421161233j:plain

 2R発売中、着替えを終えて後半レースの準備を始めた立間充宏が、荒井輝年の姿を見つけて「荒井くん、ありがとう!」と頭を下げた。エンジン吊りを助けてくれたお礼であり、これは選手たちの通例儀式。それが若手だったりすると、お礼を言うためにわざわざ先輩を探し出そうとピット内を駆け回っていたりするものだ。エンジン吊りには手が空いている他支部の選手が加わることもあるわけだが、そうした選手にも抜かりなく頭を下げている選手たち。いつも「誰が手伝ってくれていたかをよく覚えているものだなあ」と感心する次第である。立間と荒井は同支部だから、エンジン吊りに参加していたのは確実なので、お礼も言いやすいわけだ。……って、荒井のほうが先輩ですよね(笑)。荒井73期に立間74期。年齢も荒井のほうが上だ。まあ1期違いだし、同支部同世代ということは一緒に行動したことも多かったであろうし、それだけ心安い関係ということだろう。

f:id:boatrace-g-report:20210421161303j:plain

 というか、我々もそういうとこありますよね。長い付き合いになれば、上下関係はありつつも、後輩が親しみを込めた話し方になることって。ワタシも、出会った30年くらい前には畠山には完全敬語状態だったが、今は「オッサン、早く原稿書けよ!」って感じだし。マスターズというのは、まさしくそういう関係性が山ほど散らばっている場ということなのでしょう。心地いいっすね。

f:id:boatrace-g-report:20210421161349j:plain

 さて、原田幸哉がなんともヒマそうなのである。整備室に入っても手持無沙汰そうにしているし、整備室を出れば水面際に行って座り込み、水面を眺めているし。1R、九州地区の選手の出走はなかったにもかかわらず、エンジン吊りに出てきて立間充宏をヘルプしたり。ようするに、モーターが噴いているのである。2日目のこの時点で何もやることがないというのは、そう考えて相違ない。周りも出してくる明日以降や、今日のレースや試運転で感触が変われば調整に動くことになるだろうが、12R1回乗りの今日、早い時間帯に動く必要はないわけだ。何もしないのも整備のうち、といった物言いがあるが、まさにそれを体現している原田なのである。

f:id:boatrace-g-report:20210421161413j:plain

 同様に、寺田千恵も余裕なのであった。4R出走だが、そこまでに急ぎ調整する必要はないということなのだろう。原田と談笑する光景も見られたが、これが現時点でのツートップなのではないかと思えた次第だ。寺田は2回乗りなので、4R次第では後半11Rに向けて動くことになるだろうが、とにかくいい雰囲気で過ごしている2日目の序盤なのであった。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)