多摩川では11R発売中をもって試運転タイムは終了。
12R発売中は試運転が行なえないことになっている。
ということで、なのかそうではないのか、
終盤レースの時間帯はピンク色の旗をつけて
水面を駆け巡る選手が山ほど見かけられた。
チャーリー池上によれば、昨日とは一変した風景だそうで、
そりゃあの寒さでは仕方なかっただろうと思うし、
何より今日は勝負駆けの一日前なのだ。
気候も一変したことだし、誰もが調整&手応えの確認を
勝負駆けの前にやっておきたいところだろう。
たとえば三浦永理。整備室と係留所をダッシュで行き来し、
水面へと飛び出していく姿が何度か確認されている。
今日は1着を計算していたはずの1号艇でまさかの逆転負け。
1R1回乗りを終えた後は、
延々とパワーアップ&試運転を繰り返していたわけだ。
明日は2着2本が必要という、わりと苛酷な勝負駆け。
三浦としてはあきらめるわけにはいかないし、
だから手を抜くわけにもいかないわけだ。
1着勝負で4日目を戦う五反田忍も
遅くまで試運転をしていた選手の一人。
落合直子と足合わせをし、1周を終えると、
艇上で情報を交換し合っていた。ヘルメットをかぶったままで、
他に試運転をしている選手のエンジン音も響いているからだろう、
大きく身振り手振りを加えての、長めの会話。
陸に上がって話をする時間が惜しいとばかりに、
水面で言葉を交わし合っているわけだ。
明日は7R4号艇。果敢な五反田が
彼女らしい攻撃を繰り出せるアシに仕上がっただろうか。
もちろん、残念にも
勝負駆けとは無縁になってしまった選手たちだって、
まだまだあきらめてはいない。
五反田と走っていた落合も少なくとも水神祭を果たしたいだろうし、
同じく水神祭をめざす樋口由加里は結局、
いちばん最後にボートを陸に引き揚げる選手となっていた。
ゴンロクを並べてしまっている岸恵子も、
このまま終わるわけにはいくまい。この時間帯、
どちらかといえば試運転をしているのは
若い世代の選手が多いわけだが、岸は後輩たちに混じって、
懸命にパワーアップをはかろうとしていたのだ。
こうして、終盤戦のピットは、多くのエンジン音が奏でる
和音に包まれていた。心地いいBGMだった。
11R、1マークで山川美由紀が落水している。
初日2日目はきっちりと2連対をキープしてきた
エース機・山川だったが、今日は前半戦で4着。
明らかに気配落ちしていたのが気になった。
そして11Rは3コースから持ち味のまくりを放ったが、
香川素子に受け止められてしまう。
昨日までの足色なら突き抜けてもおかしくなかったのだが、
香川に合わせられたことでバランスを崩して
失格となってしまったわけなのだ。
少し経って、ピットには「3号艇、選手●×▼?%$」と
アナウンスがかかった。レース中のエンジン音にかき消されて、
肝心な部分が聞き取れない。負傷、で止まったのか、
負傷なしと2文字がつけられたのか。
遠く1マークでの山川の様子はとうてい確認できず、
少しやきもきさせられたものだった。
5艇がゴールして、ピットに続々と帰還してくる。
だいたいゴールした順番通りに戻ってくるから、
シンガリは5着の藤崎小百合…………ん? 赤いカポック!?
そう、山川は自走してピットに戻ってきたのだ。
ホッとさせられ、そのあとに珍しい光景に目が丸くなる。
その根性にも拍手だ。 陸に上がった山川からは
笑顔も見えており、着替えを終えたあとには元気いっぱいに
モーター格納。久保田美紀、高橋淳美らと大笑いし合っているシーンも見かけた。身体はまったく問題なし!
明日はこの落水で1着勝負となってしまった。
しかし、もちろん諦めているはずがない!
落水しても自力でピットまで戻ってくる山川が、
諦めるなんて言葉を脳裏に浮かべることなどあるはずがないのだ。
さてさて、その11Rでは山下友貴がGⅠ初1着。
今日2本目の水神祭です! 集った中心勢力はもちろん静岡支部。
SGなどではいつも層の厚さを実感させられるわけだが、
女子王座でもですか。定野久恵、池田姉妹、三浦永理……
次レースを控えていた長嶋万記がいなくても、それなりの人数を集めているわけだから、まさしく王国静岡であります。
ほかに東海勢や守屋美穂も駆けつけての水神祭。
谷川同様ゆりかごスタイルで、
思い切り水面に放り投げられていました。おめでとう!
(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩=水神祭 TEXT/黒須田)