BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優勝戦回顧

馬袋のバランスパワー

 

10R

①馬袋義則(兵庫)

②中澤和志(宮城)

③市川哲也(広島)

④瓜生正義(福岡)

⑤中島孝平(福井)

⑥濱野谷憲吾(東京)

 

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 スタート展示で中澤がブリブリと出ていくのを見て、パワーでは彼が抜けていると思った人は多かったのではないだろうか。

 しかし、モーターのパワーとは、直線だけのものではない。スリットが揃った本番、揺るぎなく馬袋が先マイしたとき、そのバランスのとれたレース足の強力さが際立った。中澤は馬袋の引き波に乗って横に滑っていき、二番差しの市川、三番差しの瓜生も馬袋の影さえも踏めない。2~4コースが差しに構えたのを見て果敢に握った中島のツケマイが鮮やかに飛んできても、馬袋はガッチリと受け止めて、前に出さなかった。中島を止めたあとの馬袋の舳先は軽やかに返り、さらに前に押す力強さを見せた。まさに快勝。まさに完勝。強い逃げ切りであった。結果的に優勝戦でも1号艇となった馬袋、明日もこれができれば……。

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 ただし、この10Rには馬袋を脅かすほどの直線の足を誇る選手がいなかった。いたとしたら中澤だが、本番では馬袋にプレッシャーをかけるには至らず、差しに回るしかなかった(市川は中澤のジカまくりと読んで差しに構え、瓜生は中澤が差せば市川が握ると見て差しを選んだか)。優勝戦は、後述する「誰もが認める超絶伸び」がいる。これにどう対処するかが、馬袋の最大の課題になるだろう。

 中島はプロペラを交換して臨んでいるが、明らかにターン回りが上向いている。馬袋にツケマイを張られて流れず、2マークでもきっちりかかって、内から突っ込んできた瓜生を寄せ付けなかった。優勝戦は6号艇。展開を突ける足はあるはずだが……。

 

絶品2コース差し

11R

①坪井康晴(静岡)

②白井英治(山口)

③福田雅一(香川)

④湯川浩司(大阪)

⑤西山貴浩(福岡)

⑥吉田俊彦(兵庫)

 

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 坪井はインコースだったが、評判になっていたのは行き足から伸びのストレート系。スタートタイミングは内からコンマ15、17、17、15、15、15とほぼ横一線だったが、スリット後には白井と福田をやや引き離している。だが、4カドから湯川がじわじわ伸びたこともあって、1マーク手前では中ヘコミのような隊形になっている。坪井には湯川の姿が見えたのではないだろうか。確実な旋回で逃げることの多い坪井が、握って回ったように見えている。

 

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 そのふところに、白井の鮮烈な差しが突き刺さった。白井の2コース差しは絶品。引き波のないところにきっちり艇を向け、そこからグイッと前に押す。まさしく白井の得意パターンだ。坪井が握ってやや流れた分、白井のこのハンドルがきっちりと坪井をとらえたのだ。バックは併走。直線に定評があるはずの坪井とまったく同じ足色で、白井はピタリと内に合わせ切った。

 

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 坪井の2マーク差しも鮮やかではあった。先マイする白井の内を、ターンマークぎりぎりにスピード感のある旋回で突き、逆転まであるかの勢いを見せている。しかし、引き波を超えた分なのか、1艇身、届かなかった。

 1マークと2マークを総合して考えれば、スリットからの行き足は坪井に分があり、そこから先はほぼ互角ということになるだろうか。いずれにしても、白井も坪井もパワーは強力。差はほとんどなかったが、白井の勝ちタイムは準優№1だ。

 

出足vs伸び、節イチ決戦

12R

①今垣光太郎(石川)

②吉田拡郎(岡山)

③松井繁(大阪)

④横澤剛治(静岡)

⑤重野哲之(静岡)

⑥篠崎元志(福岡)

 

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 いやはや、凄かった。スタートタイミングは、1コース今垣がコンマ09、2コース吉田がコンマ13。スリットの時点では、吉田は今垣より後ろにいたのだ。だというのに、グイグイグイグイと伸びた吉田は、あっという間に今垣を交わしていく。誰の目にもスピードの差は明らかで、予選道中から評判だったカクローパワーが改めて突き付けられた瞬間だった。おそらく今垣と吉田のスピード差に目が行ってしまう人が多かったと思うが、もちろん松井から外の4人も置き去りにされてしまっている。本来なら吉田のまくった内を差したかったはずの松井は、かなりターンマークを外してしまっているが、さすがの王者もあっという間にちぎられて、感覚が狂ってしまったか。

 

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 1マーク手前では、吉田が3分の2艇身ほど前。ここで今垣は吉田を張るのではなく、レバーを落としている。そこからの今垣もすごい。吉田にまくりを許しながら小回りで残し、バックでは吉田と併走に持ち込んでいるのだ。予選道中でも2度見せた、まくられながらも内を小回りして残し、そこから前に出る光ちゃんパワー。ともに決まり手はまくりだったという、奇妙な“まくられまくり”2発だったわけだが、この準優でも“まくられ逃げ”となってもおかしくはなかった。まさに強力な出足の賜物。伸びの節イチがカクローなら、出足の節イチは間違いなく今垣だ。

 

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 ただ、バックでの隊形では吉田がやや前におり、こうなればスリット裏からは吉田が伸び切ってしまう。2マーク先マイは吉田で、今垣も差して強力出足で舳先をかけようとしたが、直線で前に出られてしまえば、伸びが強いほうに分がある。ここで決着がついて、吉田1着、今垣2着。性格の違う超抜足をもつ両者の真っ向勝負は、伸びに軍配が上がった。 優勝戦は、内外入れ替わっての隣同士となった。今垣は当然、吉田の攻めに乗っての差しという展開を思い浮かべるだろうが、しかし今日のままの足なら、吉田の伸びについていけるかどうかが問題となる。会見では伸びにシフトすることを示唆したようだが、それが奏功するかどうかは明日の気配を慎重に見極めたい。

 

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 いずれにしても、展開のカギを握るのは超抜ストレートのカクローで間違いない。インの馬袋も2コースの白井もどう対処するかが課題となるし、外枠2人もどう利するのかが問題となる。吉田以外もパワーは上位なだけに、レース的にも舟券的にも非常に興味深い一戦となった。吉田の伸びをめぐってさまざまな展開が考えられるだけに、ボートファンにとって今夜は、とびきり美味い酒で激論を交わせる熱い一夜となるはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/K)