BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――波乱の風!?

 また天候が変わった。雨が上がったのはいいのだが、風向きは昨日の追い風から向かい風へ。しかもけっこう強めに吹いている。1Rと2Rの競走成績を見れば、風速7m。波高も7cmと記されている。

 もちろんそんな状況に音を上げるような百戦錬磨たちではないのだが、それでもスタート勘の修正はなかなか大変な様子。掲示されたスリット写真をチェックするのは、レース本番のものであれ特訓のものであれ、選手の動きに組み込まれているルーティンのようなものだが、今日は各選手ともそこで滞留している時間が長いように思える。写真を指差しての感覚談義も頻繁に見かけられた。

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 たとえば、山室展弘と岡孝が、スタート特訓のスリット写真の前で、写真に目を向けながら、話し込んでいる。山室が自分のものらしい艇の舳先に指を置くと、岡は天を見上げるくらいの大笑い。山室はクスリとも笑わずに、さらに別の写真を指さして言葉を連ねていっており、語る材料には事欠かないわけである。山室は、3Rのスタート展示後、スタートタイミングを確認して首を傾げてもいた。半艇身ほどのフライングだったのだが、向かい風を見越して踏み込んだはいいものの、やっぱり勘とはズレていた、ということだろう。そして本番はコンマ28だから、厄介な向かい風なのだ。ま、それでも山室はまくり差しで快勝しているわけですが。

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 1Rの新良一規も、スタートタイミングはコンマ31。1コースと2コースがゼロ台を決めており、スリットでは明らかに後手を踏んだ格好なのだが、まくり差しを決めて突き抜けている。レース後の勝利者インタビューでスタートタイミングを知ったらしい新良はさすがに苦笑い。もちろんスタートタイミングなんて遅かろうが勝てばいいわけで、その分の快笑も見せてはいたのではあるが。

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 2R2着の古場輝義は、自身はコンマ16と悪くないスタートを決めたが、2コースと3コースがヘコんでしまい、それを利して攻めた中西宏文に乗った倉谷和信のまくり差しを許している。レース後、エンジン吊りを終えると、水野要とともに苦笑を浮かべながら掲示板へ。スリット写真を見て、中ヘコミっぷりにさらに苦笑が……と思ったら、古場が指さしているのは1コースの部分。どうやら自分のスタート勘について水野と話しているようで、相手がどうこうではなく、まずは自身のスタートが気がかりだというわけだ。

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 これはあくまで今村豊が、ということなのだが、強い向かい風のほうが強い追い風よりスタートは怖いのだそうだ。向かい風の分早く起こすわけだが、その感覚が難しい、と。早く起こしすぎればフライングになってしまうし、途中でそれに気づいて放れば全速スタートができない。スタート展示F→本番コンマ28という山室はその顕著なケースでしょうかね。このまま強めの向かい風が吹き続ければ、波乱の展開を呼ぶスリット隊形がまだまだありそうだなあ。

 

 さてさて、そうした状況で迎える予選3日目。準優進出のためには、気が抜けない1日である。今日の大敗は明日を待たずしての終戦につながりかねないし、勝負駆けを少しでも有利な条件で迎えるためにも3日目はけっこう重要である。

 だからなのか、あるいは匠たちの手法ということなのか、SGに比べて整備室もペラ室も選手の姿が多いように思えた。SGでは、3日目には整備室が閑散とすることも多いのだが、今日は大きな整備をしているわけではなくとも、整備室に選手の姿をよく見かけた。

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 たとえば篠原俊夫や高橋淳美はギアケース調整。まあ、下関の整備室は珍しく、ギアケース調整所が整備室のいちばん手前(装着場側)にあるから、よく目立つということかもしれないけど。しかし、篠原はここまで得点率6・00であって、決して一日早い勝負駆けを強いられる立場ではない。しかも、10R1回乗りと時間には比較的余裕があるのだ。それでも早い時間から整備室に入っているという点に、何か意味を見出すべきだろう。 悪条件でも音を上げず、好条件でも緩めず、匠たちはひたすら全力を尽くして、水面に興奮を立ち上らせるのだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)