BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――雨の前検

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プロペラ調整所はいきなり満員御礼! 

笹川賞でもそうだったが、タイム測定や試運転を始める前に

プロペラを叩いたり、ゲージをチェックしている選手が

ペラ室に鈴なりなのだ。笹川賞時にも書いたことだが、

浜名湖先行導入の第一節では、前検ではペラ調整所は

閑散としていたものである。みな手探りだから、

まずはノーハンマーで乗ってみるという選手が多かったわけだ。

しかし、本格導入から2カ月弱、SGクラスの選手は早くも

調整手順を確立しつつあるというのか。

笹川賞ではゲージを当ててラインをチェックしている選手も

目についたが、今日は早くも木槌をふるっている選手が多いように思えた。 

 

 

 

 

 

 

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巨大なウナギの寝床状の芦屋ピット、装着場のど真ん中あたりに

あるペラ室を覗き込んで目に留まった選手は山崎智也&横西奏恵に、濱野谷憲吾、須藤博倫、大嶋一也、寺田祥、湯川浩司、石渡鉄兵、服部幸男、中澤和志……。14時05分頃のことだ。

その後も多くの選手が出入りしており、覗き込むたびに満員御礼状態は保たれたままだった。  

 

 

 

 

 

 

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いちばん奥に整備室があり、その入り口の脇の一角も、

ペラ調整所に変わっていた。

ここには荒井輝年、峰竜太、菊地孝平、吉田俊彦、重野哲之。

もちろんこちらも出入りは頻繁にある。

ともあれ、前検日のこの段階でペラ叩きが数多く見られるのは、

明らかに新しい制度になって変わった点だろう。

 

 

 

 

 

 

 

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ところで、現在、日本列島には台風が接近中。

九州にも接近する可能性があり、「順延にならなければいいねえ」などという声はあちこちから聞こえている(僕も言った)。

選手にとっては、台風がどう影響するかが気になるところ。

もちろん、風や雨、水面が荒れるかどうか、

そういった点が大きな関心事となるわけである。

「順延かどうか」という声は関係者のものであり、

「明日は嵐の前の静けさで、

意外とベタベタになったりして」という声は選手のものというわけで、

ちなみにベタベタ発言は田村隆信のものを引用させていただきました。芦屋は装着場のいちばん隅っこに喫煙所があって、

ここは選手も利用する。タバコ吸いに行ったら菊地孝平、坪井康晴、田村隆信がいて、天気談義をしていたという次第なのであった。  

 

 

 

 

 

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で、雨はすでに激しいのだ。

試運転のあとに装着場から水面を眺めていた中野次郎が

渋い顔をしていた。考え込んでいるふうでもあって、

モーターの手応えがもうひとつだったか、とも類推された。

次郎が消えたあと、僕も何気なく振り返って水面を眺めようとしたら、

うわ、すごい雨。水面には雨粒が突き刺さった痕が

大量にできており、係留所の屋根は雨を弾いて

水煙をぼんやりと作っている。うわぁ、土砂降りだあ……

気づくと、僕も次郎みたいな顔つきになっているのだった。

もしかしたら次郎も、この天気に顔をしかめていたのかもしれない。  

 

 

 

 

 

 

 

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雨が降ろうが槍が降ろうが、選手は水面に出なくてはならない。

タイム測定を終えてピットに戻ってきた選手たちは一様

にズブ濡れで、まるでレースで後方を走って

水しぶきを浴びたかのような様子ですらあった。

登番順で森高一真から中野次郎までの5選手=8班のときが

ピークの雨脚であって(雷も鳴ってました)、

リフト上でヘルメットを脱いだ森高の顔は激しく歪んでいるのであった。前検では見られない光景がこのあとに続いた。

ボートが掃除機の前に運ばれ、

操縦席の水の吸い出しが始まったのだ。

これは、2~6着を走っていた艇が水しぶきを浴びることで

操縦席に溜まってしまった水を吸い出す作業。

つまり、レース後に見られる光景なのだ。

前検では交差旋回もないし艇間距離も大きく

水しぶきを浴びないから、まずお目にかからないもの。

すべては、大雨が生んだ光景なのである。 

そんなふうに、雨の前検を走ったグラチャン戦士よ、

ご苦労様でした! みな、水もしたたるいい男&女になってましたよ。

 

 

 

個人的に気になった選手は二人。

 

 

 

 

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まずは池田浩二。ドリーム戦記者会見では、

レースしなきゃわからんとは言ったものの、

「悪くないと思う」と語っている。

まあ、これは笹川賞のときも同様で、このときは

予選落ちを喫してしまっている。

だから、コメントを額面通りにとらえていいかどうかは、

ここでは断じない。ただ、「班では和美さんがよかったような気がする」と言った、その太田和美は、キョトンとして「外枠の人間は、池田が良かった、ってみんな言ってるんですけど」。

この証言は見逃せないだろう。

また、池田は「今日は特にやることはない」とも言っていて、

実際、何もしていなかった。ボートリフトの前に陣取って、

率先してエンジン吊りをするのみで、

時には水面際にのんびりと腰かけて、

ゆったり他選手のスタート練習を眺めていたりもするのであった。

H記者とは「池田が泣いている=実際は出ている

/池田が景気のいいコメント=実際はそうではない」と

笑い合っており、ピット取材から帰ると「池田、泣いてたでしょ?」と

H記者に言われたわけだが、今回は果たして……。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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もう一人は服部幸男。表情がなんとも柔らかいのだ。

前検から哲人の面差しになるのが普通で、

モーターの感触がひどいときには必死に整備をしていることもある

服部。もちろん、仲間に声をかけられれば笑顔も見せるが、

何気ない表情がこんなにも穏やかである服部を

最近見たことがないような気がする。

表情と機力や手応えが比例するというものでもないが、

悪い傾向ではないとは言えるだろう。

そして、こんな服部幸男を見るのは、

なかなか嬉しいものだったりもするのである。

 

 

(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)