青山登さんと話していたら、
辻栄蔵が目の前にあらわれた。青山さんがすかさず声をかける。
元気ないじゃないか。「えっ? そうですか」 声の張りは
いつもと変わらないから、元気がないように青山さんに見えたとしたら、レースが近づいている緊張感か(3R出走)。
「そうですねえ……元気がないってことは、なきにしもあらず」
そう言って辻は大笑い。なきにしもあらずってことは、
青山さんの言うとおり……ってことがなきにしもあらずで、えーと……。「ま、元気があると言えばウソになる」 ガハハハハハハ!
辻はそう大笑いして去っていった。
なんかずいぶんともってまわった言い回しになっていましたが、
その爆笑っぷりを見ていたら、辻栄蔵、元気いっぱいです!
今村豊も元気いっぱいである。
1Rを終えてカポック脱ぎ場に消えていった今村だったが、
10mほど離れたところでも、今村の大声が聞こえてくる。
いつものように、対戦相手と朗らかに感想戦をしているのだろう。
イン戦3着に悔しくないわけがないとも思うのだが、
今村はレース後にこうして騒いで鬱憤を晴らす。
いや、鬱憤を晴らしているわけではなくて、これが今村豊なのだ。
青山さんと話しているところに、今村もあらわれている。
首がつながったじゃないか、と青山さんが声をかけると、
「そうだけど、ダメでしょ!」と朗らかに叫んだ。
予選突破をあきらめたかのような言葉を、
なんでそんなに元気に言う(笑)。
出足系に不安があるとのことだが、
だからっていともあっさり「ダメでしょ!」って。
ただし、今村はそのあとは速攻で次への準備に向かっている。
後半は11Rだから時間はたっぷりあるはずなのに、
さっそく作業にとりかかっているのだ。つまり、ダメでしょ、
なんて少しも思っていないわけである。
ともかく、元気なミスターを目の当たりにできるのは、
実に嬉しいことだ。
対照的に、原田幸哉の元気のなさが
気になるところだ。どうにも精彩を欠いているように見えて
仕方ないのだ。というか、このところの幸哉からは、
弾んだようなものが伝わってこない。幸哉自身、
もがいてもいるのだろう。 今日は1R後には5Rに出走。
時間があまりないため、素早く準備を始めていたが、
そのときにもどうも浮かない顔に見える。集中しているというよりは、
考え込んでいるという雰囲気だ。それもネガティブなほうに。
まだ予選突破に望みは残されている。
幸哉らしい表情を見せてもらいたいぞ。
あと、今垣光太郎も元気がなかった。
まあ、当然といえば当然ではある。見ていてちょっとツラくなるほどで、こちらの気持ちも落ち込んでいく。ふぅ……と溜め息をついていたら、おはようございまーすと平田忠則の笑顔。ミスタースマイル!
この人の笑顔はいつも明るい癒し系。
よし、ちょっと元気が出てきたぞ。
さてさて、今朝目にとまった選手といったら、
魚谷智之、吉田俊彦の地元勢ということになる。
地元SGでの勝負駆け、燃えなければウソだろう。
二人とも早い時間から調整や試運転に励んでいて、
悔いのない戦いをするべく、戦闘態勢を整えている。
特に吉田トシの表情は怖いほどで、
グラチャン優勝戦の朝よりもずっととがっているように思えた。
プレッシャーと戦っている姿と、何としても予選突破と燃える姿の、
その違いだろうか。ボーダー5・60とすれば、
魚谷もトシも2着勝負。決して楽な勝負駆けではない。
それだけに、目が吊りあがろうというもの。
そうした鋭い表情というのも、見ている者に
元気を与えたりするものだ。 というわけで、みなさん、
今日も元気で頑張りましょう!
(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)