まずはヤングナデシコに拍手を送りたい!
9R、1~3号艇に女子王座通算8Vという
とてつもないメンバーを相手に、
守屋美穂が大健闘だ!
バックでは2番手もあるかという最内差しで迫り、
その後も鵜飼菜穂子を猛追した。
2周1マークで鵜飼と競って、
その結果、池田浩美が漁夫の利を得るかたちになったが、
最年長のベテランとの真っ向勝負はお見事と言うしかない。
結果は無念で、レース後は
やや表情を硬くしていた感もあったが、
しかし充実感も垣間見えていた。
まったく結果を出せなかった
多摩川王座とはまるで別人であり、
本当に立派な戦いっぷりだったと思う。
10R、山下友貴は
本当にギリギリまで、ペラ調整を続けていた。
10R組が展示ピットにボートをつけても、
山下はペラ室で粘る。朝の準優インタビューでは
「足はいい」と言っていたにもかかわらず、
山下は徹底的にパワーを追求し、
やれることをすべてやり尽くして、
戦いに臨んだのだ。残念ながら、
見せ場らしい見せ場を作れずに、
レースでは敗れた。
しかし、その過程で見せた姿は感動的ですらあった。
レース後、池田浩美に声をかけられて
涙ぐむ場面もあったが、
それほどまでに山下は全力を尽くしたのだ。
その姿が尊いのだと僕は思う。
レース後は、すぐにペラ室にこもって
ゲージを当てており、山下の追求心は敗れてもなお、
枯れることはなかった。
次の女子王座では、いや、
もしかしたら暮れの大村でも、
さらに強い山下友貴が見られることと思う。
ベテランナデシコもすごい!
10R2着で優出を果たした日高逸子は、
会見では足の弱さを嘆いていた。
差しが入ったように見えたのに、
あっという間に突き放されたのだから、当然。
海野ゆかりと2番手競りになり、
それをしりぞけたわけだが
「海野さんが私以上に出てなかった」。
地元王座の優出は嬉しいことだが、
「何かやらなければ、足は弱い」と
優勝の望みはこのままでは薄そうだった。
僕はその後、1着の平山智加の会見を聞いて
ピットに戻っているのだが、
チャーリーが血相を変えて報告に来た。
「日高さんがキャリーボディー換えてる!」
え、もう「何かやった」わけ?
ほんの数分前に「何かやらなければ」と言った日高は、
とてつもない素早さで「何かやった」のだ。
てっきり明日は早い時間から大掛かりな整備をする、
という意味だと思っていたのだが、
日高にとっては「やれることは即座にやる」のであった。
すごすぎでしょ!
11R後の優出会見で、
開口一番「あんまり嬉しくないですね」と
苦笑した山川美由紀。そうなのだ。
優出はそりゃめでたいことかもしれないが、
敗れての優出に心から笑えるはずがない。
まして、予選トップだったのだ。
勝てば優勝戦1号艇だったのだ。
優出は最低限の喜びであって、
むしろ山川にとっては
悔恨ばかりが残る結果だっただろう。
で、明日は山川と日高の神経戦が、
ひとつのカギとなるだろう。
日高は当然、「伸びないのでダッシュにしても面白くない」と
動きを匂わせていたが、終わってみれば
隣に伸びる山川が入ったのだ。
マーク策は充分に考えられる。
しかし、山川は「日高さんが黙っているわけない」と笑う。
もちろん山川は日高を入れるつもりはなく、
ならばカドを狙うかと問われて
「それをさせてくれないのが日高さんなので」とまた笑った。
ここの駆け引きがどうなるか。
それを語り合うだけで、今日はウーロンハイ3杯はイケる!
ちなみに、香川素子は
「(日高さんが来ても」まあ、入れないと思います。
カドにしても伸びないですし。
だってねえ、3コースだったら
そこまで深くならないと思うんで」とのこと。
香川は別に決意を込めてそう言ったわけではなく、
当たり前のことを聞いてますねえ、てな雰囲気であった。
こりゃ枠なり濃厚だ(5対1で6コースが単騎の可能性も)。
でも、日高の怖さは山川のほうが知悉しているような気も……。
進入でウーロンハイ3杯イッたあとは、
節ちゃんの3連覇で3杯だな。
田口節子が9Rで鵜飼菜穂子を軽快に差し切って、
3連覇に王手をかけた。
出迎えた寺田千恵が満面の笑みで祝福すると、
節ちゃんは破顔一笑! 安堵とか歓喜とか、
そういう気分よりは、ただただ1着で
最低ノルマをクリアしたことを喜んでいるふうであった。
ようするに、別に非日常が起こったようには少しも見えない。
今の田口節子は、それくらい強いのだ。
で、さらに3杯イケそうなのが、
平山智加が1号艇となったことだ。
思い出す三国女子王座。平山は1号艇を活かせず、
2着で涙を飲んだ。
そのとき、平山に苦汁を味わわせたのが、
田口節子。連覇のスタートとなった快勝だ。
今度は、1号艇vs2号艇で真っ向勝負!
優出会見では、まさか山川が敗れるとは
思っていなかったのか、
1号艇を想定した掛け合いが皆無だったため、
かなりリラックスした表情を見せていたが、
この表情が明日、どう変わっているのかに注目したい。
平山にとって、あの三国の経験は本当に大きかったという。
それを活かすことができるのか、
あるいはまた田口に返り討ちにあうのか、果たして……。
う~ん、今夜は飲みすぎ注意だな、こりゃ……。
池田浩美については、
その結束の強さをお伝えしておきたい。
9R、係留所で池田明美、池田紫乃、長嶋万記が観戦していた。
1マークも2マークも、
静かにビジョンを見つめていた3人だが、
2マーク、浩美が前の2人をまとめて交わしたとき、
「キャァァァッ!」という歓声が突然上がっている。
それは本当にいきなりで、
思わず背中がすくむほど驚いた。
この3人は、もしかしたら浩美にチャンスが
めぐってくるかもと信じて、熱く見守っていたのだろう。
そう、信じて、祈って。
2着で凱旋した浩美を、「イェーッ!」と歓声をあげて
出迎える仲間たち。なんだか浩美より嬉しそうにも見えて、
その輪に加わっていた長嶋は、
11Rの結果は無念だったが、
自分のパワーにもしたに違いない。
その後も、10Rは浩美も加わったトリプル池田で
宇野弥生を応援。11Rは宇野が加わって長嶋を応援。
この池田ーズは常に係留所から
仲間に熱視線を送っていた。
明日ももちろん、浩美はこの仲間たちの思いを背に戦う。
それはきっと浩美の背中を押す力にもなるだろう。
明日は彼女たちの歓喜の声に驚かないように、
浩美の走り、彼女たちの祈りに
気を配っておくことにしよう。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)