追い風よ吹いてゆけ
12R優勝戦
①平山智加(香川) 16
②田口節子(岡山) 25
③香川素子(京都) 19
④山川美由紀(香川)09
⑤日高逸子(福岡) 11
⑥池田浩美(静岡) 12
風が吹いている。前検から7日間、
ずっとずっと吹き続けてきたホーム追い風。
まくり屋にとって厳しい“逆風”が、今日も吹いている。
だが、山川にとって悪い状況ばかりではなかった。
選手を混乱させる強風、突風は、5R前後がピークだった。
宇野弥生や細川裕子がスタート勘を逸して、フライングに散った。
あの魔の時間帯に比べたら、12Rの風や水面は天国と言ってもいい。
待機行動も、
山川にとっての“追い風”だった。
日高が攻めるだけ攻めて、すっと枠なりの5コースを選択。
本気で奪いに行くというよりは、
「少しでも内を深くさせて、4カドの山川に仕事をさせやすくする」という意図が見て取れた。もちろん、そうすれば
自分もマーク差しで突き抜ける可能性が増すから。
横一線で何もできない展開に甘んじるより、
「山川がまくるか、自分がまくり差すか」のスリットになった方が、
何倍も勝つ確率は高まる。
123/456。内3艇に、
スタート展示ほどの助走距離はない。
日高の陽動作戦が見事に的中した。12秒針が回る。
美味しい4カドになった山川が、元気いっぱいに走っている。
スリットのはるか手前で、スタンドから「ウオオォォォッ」という
地鳴りのような声が挙がった。ほとんどの観衆は、
1マークで起こるべきことを、ほぼ正確に予測したのだ。
スタート。山川とカド受け香川との差は半艇身ほどだが、
それは定点観測の“錯覚”に過ぎない。
あっという間に、山川は香川を飛び越えていた。
さらに、2コースで凹んだ現役女王の田口も叩く。
「田口さんの3連覇は、私が阻止します」の宣言は、
ここで実現された。残る砦は、同郷の後輩・平山。迷わず叩いた。
生粋の肉食系まくり屋に、まくり差しの選択など1ミリもなかった。
「風が吹いてましたね」 優勝インタビューで山川は笑った。
NHKの五輪テーマソングを意識していたかどうか、
“風”を楽しそうに使い分けた。思えば、準優の1号艇で負けたことも、彼女にとっては間違いなく追い風だったわけだ
。こうして圧勝したのだから。
女子王座V3おめでとう、美由紀姐さん!
ちょっと年季が入ってるけど、今節のテーマ
「真夏の夜のシンデレラ」は、やっぱり独身の美女じゃないと、ねっ!
(photos/シギー中尾、text/H)