日が傾き始めたピットで、スポーツ報知の山中キャップに、
埼玉支部の若武者たちへの愛をとっぷりと聞いた。
若手が充実している支部といえば、このところずっと、
「福岡」と即答されてきた。新鋭王座には常に大軍を送り込み、
ピットでも一大勢力を形成。
養成所がやまと学校に移って以来、
とにかく福岡からは新人が続々とデビューし、
切磋琢磨して力を伸ばしてきた。たしかに福岡の若手は強い。 今、その福岡に猛然と迫っているのが埼玉軍団だ。
今節も6人が参戦。埼玉から6人もの若武者が
新鋭王座に登場したことなど、ついぞ記憶にない。
エース桐生順平を欠いてもこの陣容なのだから、
埼玉支部の充実ぶりは明らかである。
埼玉勢は、ただ頭数をそろえているだけではない。
もっとも登番が若い佐藤翼は節間2勝。3日目を終えてみれば、
準優当確である。彼に馴染みの薄い、
特に西日本の方には驚きの結果ではないだろうか。
その活躍ぶりと、妙な落ち着きっぷりを見ていると、
埼玉支部のエンジン吊りに出てきて、
率先して動いているのがちょっと不思議。
彼は埼玉でもっとも後輩である105期生で、
バリバリの新兵なのだ。エンジンを載せた架台をさくさくと運んでいる
足取りはなんとも力強く、その背中は頼もしい。
秋元哲は、宮島で初めて桐生順平を見たときの印象と
似ている気がする。ふてぶてしい、といえば語弊があるが、
ようするに年齢を超えた大物感が伝わってくるのだ。
別にふんぞり返っているわけではないのに、常に胸を張っている感じ、というか。3日目を終えて予選7位。準優進出の可能性は
充分すぎるくらいにある。
小山勉は物静かな印象もあるが、
同時に黙々と作業にいそしんでいるイメージもある。
整備室や装着場で見る頻度が高いように思えるのだ。
終盤レースの時間帯には、装着場にはモーターを取り外した
ボートがずらりと並んでいるが、その中に小山の姿を見つけたりする。ボートを手入れしているのだ。SGではわりとそうした姿は、
白井英治や今垣光太郎など、よく見かけるが、
新鋭選手にはそうしたこだわりが少ないのか、
あまり見かけない気がする。
篠崎仁志もしょっちゅうボートのそばにいたりするけれども。
こちらは現在予選13位。
9Rでは、中田竜太が逃げ切った。
めちゃ童顔でおなじみ、時になんかやらかしてしまう
おっちょこちょいなところもあって、実にピュアな竜太。
といえば、山田康二や上野真之介の師匠を思い出すわけだが、
埼玉の竜太も実に似ている。芦屋では展示転覆もやらかしてたし。
もちろん、今もめちゃくちゃ童顔であることに変わりはないが、
しかし8カ月で逞しさが確実に植え付けられたとも思う。
今日、1号艇で取りこぼしていれば最終日を待たずに
ゲームオーバーの可能性もあったから、この1着はでかい。
レース後の中田は、実にすっきりとした表情を見せており、
しっかりと前を向いているように思えた。
で、黄金井力良は残念なことになってしまった。
ゴンロクを並べ、3日目終了で予選52位。つまり最下位。
黄金井の深刻な表情は、何度も見ている。
だが、今節で埼玉の登番最上位はこの黄金井。
充実埼玉軍団を牽引しているのは、間違いなくこの男だ。
彼のリーダーシップのもと、後輩たちは奮闘している。
残り3日、なんとか水神祭を見せてほしいと願う。
山中キャップと話しているうちに、12Rが始まった。
スタートして逃げ切ったのは、黒井達矢!
埼玉のブラックアローが3日目のメインカードを制して、
今日という日を締めてみせたのだった。 2勝目をあげて、
予選5位に浮上した黒井は、力強い表情!
これで18位以内の埼玉支部は4名!
黄金井以外の5人が準優進出の可能性は充分に残されている。
こうなりゃ、埼玉から優勝者を出してしまえ!
きっとピットの片隅で号泣しているであろう山中キャップも見たいし。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)