BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――翼を見逃すな

 

佐藤翼の笑顔を見て、いろいろと考えてしまった。

GⅠ初出場、初優出、1号艇。緊張にまみれる条件としては、

かなり揃っているほうであろう。まして、デビューからまだ

3年も経過していないのだ。

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キャリアを考えても、平常心でいられるわけがないはずだ、

と単純に思う。一方で、だからこそ笑顔を作るということだってある。

 

緊張している自分を見せたくないから、リラックスしているふうに

振る舞う。それもまたよくあることだと思う。彼の場合、どうなんだろう? まだ一節しか会っていない佐藤翼がどういう心境なのか、

その笑顔を見てまるでわからなくなってしまったのだ。

 

カタくなっているのがハッキリとわかる様子だったら、そりゃそうだよね、で終わったのだけれども。「リラックスしてますよ」と佐藤は言った。

ただし、そこに「今は」とつけた。

 

「これからどうなるかはわからないですけどね。

レース前は緊張するタイプですし、きっと今日もそうなんでしょう。

GⅠ優勝戦1号艇の緊張がどんなものになるかは、

わからないですけど」 僕は今日、佐藤翼を本命にしない予定だ。

 

というか、予想を披露させていただいている地上波番組には、

もうそれで提出してしまった。足は文句なしの超抜でも、

若さとキャリアの浅さがビハインドとなる。そう考えたからだ。

だが、その考え方にも疑問符をつけなきゃいけなくなったな、と思った。緊張するであろうことを認め、しっかりと口に出せるなど、

一介の若者であるはずがないからだ。 

 

佐藤翼が今日一日、自分自身と必死に戦い、

それがレースぶりにどう影響を与えるのか。

今日の優勝戦だけでなく、必ずや大舞台に

駒を進めるようになるであろう今後の佐藤翼を見晴るかすうえでも、

第12Rの佐藤翼は絶対に見逃すべきではない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方、黒井達矢は「ぐっっすり眠れましたよ!」と明るく語った。

緊張するような枠番でもないですし、と黒井は言うが、

GⅠ優勝戦なのである。少しくらいは緊張も、と思うが、

話してみてたしかにそうした様子は感じられなかった。

リラックスの度合いからすれば、それが枠番の差なのか、

黒井のほうが少し上かもしれない。黒井は「いつも通り走る」を

繰り返していたが、それを貫き通せば、

一発大駆けを見せる可能性十分だろう。 

ともあれ、埼玉コンビはいい感じで優勝戦の朝を迎えられたようだ。

埼玉支部に初の新鋭王座を持ち帰ることができるかどうか、注目しよう。

 

その他の4人も、わりと余裕で時間を過ごしているように見えた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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もっとも余裕綽々は西村拓也で、

2Rが終わってもモーターはまだボートに乗っていなかった。

朝の特訓にも出なかったようなのだ。永島知洋さんに「どう?」と

問われると、「ゴキゲンさんですよ~」と軽いノリで応え、

柔らかな笑顔を見せている。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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船岡洋一郎は、2R発売中に川下晃司とともに整備室に入っていき、

ペラ調整所に座っている。ゲージを当てて軽く叩いて、

それを川下が見守っているという構図。

まだ本格的な調整ではないようで、

ものの5分くらいで川下とともに控室へと戻っていった。

表情は昨日までと変わったところはない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

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青木玄太は、プロペラを丁寧にチェックしていた。

装着場で光にかざしてラインをじっくりと確かめ、

整備室ではゲージを当ててさらにチェック。

ただ、目立った動きはその程度で、ドタバタした様子は少しもない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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最後にリベンジ狙う茅原悠紀。

もっとも動きが大きかったのは、この男である。

1Rスタート展示時に、係留所にあった優勝戦組のボートは茅原のみ。そのとき茅原はペラ調整をしており、こちらはかなり本格的な調整。

2R発売中には、ペラを手に整備室から猛ダッシュ!

試運転可能の青ランプがついているのを確認して、

大急ぎで試運転へと飛び出している。

「足は正直いいとは言えない」と語っていた昨日。

今日は一日たっぷりと調整に時間を費やして、

格上の力を発揮できる準備を整えていくことだろう。

 

(PHOTO/中尾茂幸=佐藤、青木 池上一摩=黒井、西村、船岡、茅原 TEXT/黒須田)