何度も書いていることだが、
3日目の朝というのは意外と静かなものである。
大きな整備はたいてい2日目までに行なわれており、
3日目ともなるとあとはペラのみという選手が少なくない。
機力好調にして後半戦出走という選手なら、
それほどドタバタする必要はないし、
したがって初日や2日目にあったような慌ただしさは
ぐっと減退するものだ。そんななかで山田哲也が本体に手をつけていて、これはSGではわりと珍しい光景だったりする
(ただし朝の特訓が終わったあとのお話です)。
整備室には石川真二もいて、これは昨日の転覆が理由だろう。
1R終了直後にモーターをボートに装着しており、
一通りの点検は終えたか。JLC解説者の秋山基裕さんに
「身体は大丈夫?」と聞かれて、「まだ若いですわ~」と爽快な笑顔。
特に大きな負傷はないようで、まずは一安心といったところだ。
好調モードで来ていたところに、あのアクシデント。
痛恨ではあるが、まだまだ予選突破は充分のポジションだ。
モーター気配に異常がなければ、進入も含めて、
魅せるレースを見せてくれるだろう。昨日の一旦停止で
むしろ気合に火がついたと見えたが、果たして。
屋外ペラ調整所のいちばん目立つところに、王者がいた。
赤いウェアを着ているからか、それともそれが王者のオーラなのか、やっぱり松井繁は視界に飛び込んできてしまう。
今日は11R1回乗り。ダービー覇者対決に出陣する。
ならばもう少しゆったり過ごしてもいいはずだが、
松井は朝から作業に励む。BOATBoy11月号のインタビューで
「一生懸命ペラ叩いて、一生懸命試運転して、いつも通りにやるだけや」と語っているわけだが、出番がどこだろうがここまでの成績がどうだろうが、松井はいつも通りに朝から動いているというわけだ。
機力に不安があるから早くから動いているという見方もできるわけだが、今朝はどうしたことか松井のほうから声をかけられて
少し会話を交わしており、その第一感は、気分上々、であった。
感触が悪かろうはずがない、と感じたのだがどうか。
早くから動いていたというなら、茅原悠紀も同様だった。
こちらは10R1回乗り。まあ、新兵が朝からのんびりしているわけには
いかないのは確かだが、雑用のかたわらにボートを着水させる準備やペラ調整などにも駆け回っているのだから、やはり早い始動と言うべきだろう。
あ、それをいうなら、田中信一郎の名前もあげなければならないだろう。係留所から上がってくるジャイアンツカラーの信一郎は、
すでに試運転などに取り組んでおり、もちろん合間にはペラ調整に走るわけだから、早くから精力的だ。
おぉ、石川真二も含めて、10R1回乗り組はみな早々に動き出しているのであるな。見習って、明日は僕ももっと早起きしよう(違うか)。
さてさて、そんなピットに響く、きゃははという笑い声。
その方向に目をやると、今村豊と池田浩二がじゃれ合っていた(笑)。
今村豊が誰かとじゃれている、というのはちっとも珍しい光景ではありません。それが何日目であろうと。
今日の今村劇場は「ダービー覇者同士の殴り合い」。
今村が池田のボディにパンチ一発!
池田も押収して今村のボディにパンチ!
もちろん殴るフリだけですが、お互いのどてっ腹に拳を向けて、
ニヤニヤニヤ。言うまでもなく、今村も池田も作業は、
もちろんレースも真剣勝負で戦っているわけですが、
今村豊がその合間に作り出す素敵な空気は、
いつ見ても微笑ましいのであります。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)