BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――シリーズ戦の悲喜こもごも

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岩崎芳美が目配せしてきた。顔をしかめて泣き顔を見せる。

思わずこちらもうぇーんと泣き真似。準優8R終了後から2

0分ほど経った頃、岩崎はそんなふうにおどけて、悔恨を表現した。 実は、敗戦直後の岩崎の様子は目撃できなかった。

昨日、優出への意気込みを柔らかく話していただけに、

その心中は察せられる。1号艇で1艇身のスタートを決め、

やることはやった。まくられた後も必死に残して優出の切符を

もぎ取りにいった。だが、惜しくも及ばず。その思いを笑いに

変換して伝えるには、20分ほどの時間が必要だっただろう。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方、海野ゆかりの様子は、10Rの直後に目の当たりにした。それはもう、険しい表情だった。当然だ。予選トップ通過した時点で、優勝をはっきり意識したはず。それが、まさかの優出漏れなのだから、穏やかでいられようはずがない。岩崎と並んで歩きながら、苦笑こそ浮かんではいたが、その岩崎も沈痛な表情になっているから、すぐに顔は険しくなる。71期の実力者が、1号艇でそろって敗れた。痛みを分かち合う夜を迎えているかもしれない。  

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ただ、二人にとって嬉しいこともあった。決定戦では角ひとみが優出。これには出迎えた海野も心底嬉しそうな表情を見せていた。また、もう一人の71期生、武藤綾子が優出。岩崎を競り落としてのものではあったが、こうなれば明日は海野も岩崎も武藤の応援団となることだろう。その武藤は優出の笑顔はあったが、淡々とした様子。キャリアのなせる業だろうか。

 

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 海野が敗れた10Rでは、長嶋万記が2着。これが海野と犬童千秋の競り合いの間隙を突いたもので、なんとも幸運な2番手浮上。さすがに長嶋自身、「マジっ!?」という思いもあったのだろう、バツが悪そうに笑顔を爆発させてはいたが、ツキを自覚できた瞬間というのは心弾むものである。そもそも、4番手を走りながらも決してあきらめず、全力で追撃をしていたからこそ、転がり込んできた展開。レース後はさっそく引き締まった表情で作業を始めており、明日も6号艇だからといって絶対にあきらめることのない走りで盛り上げてくれるだろう。  

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長嶋の優出をともに喜んだのは、池田浩美だ。結果的に優勝戦1号艇! しかも長嶋とともに優勝戦を戦うことになるわけだから、格別な思いがあることだろう。9R1着後はわりと淡々としていたのだが、長嶋の出迎えでは満面の笑みを浮かべていた。 池田が9R直後に淡々としていたように見えたのは、レース展開によるものか。金田幸子との抜きつ抜かれつの大接戦。2周2マークで先マイした金田の艇がバウンドして、決着となったが、だからこそ歓喜以外の感情も浮かんでいたかもしれない。あるいは激戦の疲労もあっただろう。  //clear

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その金田を、岡山勢が取り囲んだ。福島陽子、寺田千恵、田口節子が「惜しかった~」の緊急反省会を開いたのだ。福島と寺田はアドバイスも送っており、金田は「そうですよね~」ってな感じで苦笑いしながらうなずいていた。「握って回るのは上手なのに~」とテラッチ。バタついたのは、内=金田、外=池田の態勢からの先マイで、それが課題なのよ、金ちゃん、ということだろう。そうか、握って回るのは上手なのか。明日は4号艇なのか。カドまくり一撃!? なんてことを思ったのだが果たして。

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 金ちゃんは、10Rのエンジン吊りに率先して参加している。堀之内紀代子が果敢なジカまくりで1着だったのだ。「もう~、声嗄れちゃった~」 大きなマスクをかけながら金ちゃんが嬉しそうに祝福する。堀之内も快勝を喜び、優しく微笑みを返していた。整備室の手前では、山本泰照さんも祝福。岡山の後輩が2人(決定戦でも1人!)優出、泰照さんは福の神か!? チャレカで平尾崇典の勝利にニッコニコだったシーンを思い出したぞ。  

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もう一人の優出は平高奈菜だ。真骨頂のセンター強攻で岩崎を撃破した。平高の姿で印象的だったのは、9R発売中にボート磨きを始めたことだ。SGでは今垣光太郎、白井英治らが毎日、その姿を見せているが、今節はそうした風景を目にしていないなあ、とは漠然と思っていたのだ。女子選手にはそういうルーティンのある選手がいないのだろうか、と思っていたら、実は平高がやっていたのだった(あと、松本晶恵もやってた)。相棒を大事にすることが悪いことのはずがない。ピカピカに磨いたボートで、優勝戦も今日のような激走を魅せてくれるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)