9Rで石川真二が転覆。
レスキューがレース終了を待たずにピットに戻り、
石川は担架で運ばれていたので、
その容体が非常に心配されたわけだが、
その後は転覆整備を行なっており、大きなケガはなかった模様。
明日の出走表にも名前があり、
転覆整備後はペラ室にこもってもいたから、
明日からは巻き返しの走りに闘志を燃やすことだろう。
出場選手全員にとって、決定戦だろうがシリーズ戦だろうが、
今年最後の大一番である。悔いなき戦いで2012年を終われるよう、
ケガなどのない激しい戦いを!
シリーズ戦は決定戦の前座……
実際は賞金上位12人がいないだけで、
出場選手はトップレーサーばかり、
レース自体も実にハイレベルなのだが、
どうしても露払い的にとらえられてしまう宿命がシ
リーズ戦にはある。出場選手にとっても、
複雑な思いは常に抱えているだろうと思う。
だが、いざ戦いが始まればすべてが負けられない、
負けたくない戦い! レース前やレース後には、
普段のSGと何ら変わらない光景が広がり、
何ら変わらない空気が立ち上る。
もっとも複雑な心境のはずの池田浩二も、
決して手を抜かない戦いを見せている。
今日、池田の姿を見たのは、
エンジン吊りを除けばペラ調整室ばかり。
12Rまでの時間のほとんどを、
池田はペラと向き合うことに費やしていたのだ。
11Rの展示が終わり、自身の艇を展示ピットにつける前にも、
ピット前の沖合水面でレバーの起こしを何度も確認。
やるべきことをきっちりとやって、ドリーム戦に臨んでいる。
モチベーションは下がっていない……と言い切れるかどうかは何とも、だが、しかし戦うべきレースを投げ出す男ではないのは
間違いないのだ。
辻栄蔵は、展示ピットに艇をつけるギリギリまで、やはりペラ調整。
この「ギリギリまで調整」は、まさしく辻栄蔵のルーティンである。
気になるところがあれば、絶対に妥協しない。
それがペラだったりモーターだったりと、
状況に応じて調整する箇所は違うが、
その姿勢自体は常に貫かれているのだ。
だから、展示ピットにつけるべき時間が迫っているため
ピット内を走る辻栄蔵、というのも恒例と言うべき光景。
住之江の場合は、ペラ調整室と調整用係留所が目と鼻の先なので、
さすがに走ってはいなかったが、しかしその動きの本質は何も違いはないのである。
なんだか声をかけるスキがまるで見つからないほど
ピリピリしている赤岩善生、というのも、
まったくもって普段と変わらない。
ここ数年の中でもっとも不本意な成績で
住之江に来なければいけなかったことを、
赤岩自身はどうとらえているのか……などなど
気になっていることはいくつかあるのだが、
昨日からそれを聞くタイミングがまったくつかめない。
避けられてるのかな……自意識過剰気味だが、
そんなことも考えてしまったりして。
つまりは、それくらい赤岩はシリーズ戦にも全力投球。
他のSGとも臨む姿勢はまったく変わっていないのである。
ま、それが赤岩善生、ではある。
レース後で強烈に印象に残ったのは10R後の横澤剛治だ。
2コースから攻めたものの、篠崎元志に巧みに差されて2着。
そのレースぶりや2着という結果は悪くないとも思えるのだが、
しかし横澤はまったく納得していなかった。
ヘルメットをとるとあらわれたのは、憤怒の表情!
口元を歪め、頬を釣り上げて、
まるで悪魔を呪うかのごとき顔つきで、
敗戦を悔しがっていたのだ。
好漢・横澤が見せた勝負師の顔。正直に言って、
背筋がぞわっと震えた。
同じレースの濱野谷憲吾も、なんとも苦しそうな顔を見せていた。
1号艇、1コースを活かせなかったのだから、
たとえ3着に残したとしても、納得がいくわけはない。
まして、住之江の1号艇、といえば、
2年前のあの日をどうしても想起してしまう状況。
またもやスタートを決め切れなかったことも含めて、
濱野谷の心中に深いモヤがかかるのは当然である。
レース後、濱野谷はいわゆる通勤着に着替えている。
帰宿バスの第1便は10R終了後に出発するから、
濱野谷はそれに乗っかるのだろうと思われた。
ところが、11R発走直前にペラ室を覗くと、濱野谷の姿があった。
もちろん明日の戦いの準備であろうが、
その姿に僕は、10Rの敗戦への強い強い憤りを抱く濱野谷憲吾を見たのだった。
さてさて、本日も中村亮太。
8Rは宣言通りに6コース発進、しかし攻め切れず、
2マークではずぶずぶと抜かれて、6着に終わってしまった。
亮太は一言、「技量不足!」と言った。
つまり、アシは来ているのだ。 ピットアウト後、
亮太はいわゆる「ミズスマシ」をやっている。
6コースを選択した選手が、
待機水面をぐるぐると何周も回ってスタートを待つことを、
選手たちはそう呼んでいる。
そのとき、スタンドから亮太に向かって
手を振るファンがたくさんいた、という。
意外なことであると同時に、なんとも嬉しいことだったそうだ。
それを見て、ファンの期待も感じ取ったという。
だから、外枠のときにはこれをミズスマシではなくて、(ナカシマ+チルトマックス+6コース)やろうと改めて決心したそうだ。
ファンはもちろん、選手に結果を求める。
だが、それだけではない。同じくらいの比重で
興奮や感動を求めるのだ。
チルトを跳ねて6コースからひとまくり、はみんな大好き!
今節、亮太にその期待ができるのだとわかれば、
みな亮太に声援を送るだろう。 もちろん亮太も結果を求める。
勝つために、それをやる。
だが、同時にファンに興奮を与えたいとも願っている。
亮太のその思いはプロとしては間違いなく正しい!
明日からも、いや、今節が終わってそれ以降も、
中村亮太は注目に値する選手だと改めて確信した次第だ。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)