BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――朝の予感

 

f:id:boatrace-g-report:20171206144217j:plain

 とにかく気持ちのいい朝だった。1Rの展示航走の時点でピットにある気温計に表示されていたのは23度。風もあまりなく、昨日とはうって変わって過ごしやすい気候だ。

 選手にとっては、プロペラ調整など作業が大変になりそうな気はするが、朝からバタバタしているような選手はいなかった。

 たとえば、屋外ペラ作業場では松井繁、井口佳典、福田雅一らが作業をしていたが、そこに田中信一郎や山川美由紀らがやってきて声をかけると、談笑が始まるといった具合だ。

 そんな中でも井口はその空間に溶け込んでいるかのように作業をしていた。平和島の開催で井口を探したいときは、まずこの場所を見てみれば、かなりの確率でプロペラを叩いている井口が発見できるはずだ。……ぴょん。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171206144229j:plain

 装着場で作業をしていた中島孝平は、僕と目が合ったとき、力強く頷くように頭を下げてくれた。その後も、モーターチェックなどの作業を続けていたが、昨日に比べて、手応えは良くなっているのではないかと思う。勝手な印象ではあるのだが、そんな顔つきをしていた。

 中島が作業を続けていると、選手たちが次々に声をかけていく。

 たとえば毒島誠もそう。意外な組み合わせな気もするが、山崎智也が中島とよく一緒にいるので、そういうつながりだとも考えられる。毒島自身、福井支部とは縁があるのでそこで交流があるのかもしれない。

 その毒島は2Rで今節初勝利! ボートリフト前で待つ山崎は、よくやったというように拍手で出迎えた。今節の毒島は6着、5着、転覆……という厳しい1節になっていたので、少しずつ立て直していったうえ、6号艇から1着を取ったその頑張りを称えたということなのだろう。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171206144242j:plain

 その後も中島は、今垣光太郎と整備に関する話をしたり、池田浩二と談笑したりしていた。

 中島と今垣が話をしているあいだ、池田は傍でその様子を見ていたが、池田から受けた印象はとにかく「余裕」の一語だ。

 予選1位通過で、そのままポールポジションを狙う立場にいるプレッシャーなどは、この人にはまったくないのだろう。

 中島と2人で話をしている様子を見ていたときには、「去年、惜しいところで決定戦行きを逃した2人なんだよな……」と、改めて思ったが、この総理杯だけでなく今年1年は、この2人がリードしていくのではないかとも予感された。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171206144254j:plain

 年末の12ピットへの予感という意味でいえば、峰竜太もそう。

 今節の峰は3日目にフライングを切り、4日目には6着2本としているが、まったく気持ちを切らしていない。それどころか、“ゾーン”に入っているのではないかというほど集中した顔をしていた。

「おはようございます」と声をかけたときには、「おはようございます」と返してくれている。そんなときでも、「集中→挨拶→即集中」というように、コンマレベルの切り替えができているのだ。

 峰の場合、どのシリーズでも基本的にはそうなのだが、こうした戦いを続けている限り、未来はどこまでも明るい。今年は初SG制覇もできるのではないかと期待される。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171206144308j:plain

 朝のピットで、目についた一人としては三浦永理も挙げられる。

 昨日の朝には、勝負駆けを前にして緊張しているようにも見えていたが、今日の彼女は自然体そのものだった。休みなく“新兵の仕事”をしていたあと、2R後に試運転へと出て行った。

 SGにいることがすでに「日常」になっているような様子を見ていると、「ひと皮剥けた」という印象が強い。

 SG戦線で互角に戦っていた永世女王のあとを継ぐのは、やはりこの人になるのか。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171206144320j:plain

 と、いろいろ勝手に予感していたわけではあるが、今朝、あらためて圧倒されたのは松井繁の存在感だ。

 プロペラ調整をしながら田中信一郎と話をしていた姿を最初に見かけたときから「いい感じだな」と思っていたが、今朝の松井は、集中とリラックスの切り替えがすごかった。

 集中して作業をしていたり、水面を見ながら何かを考えているようでいながら……、青山登さんを見かけると、ニッコリと笑ってそのもとへと小走りしていき、目の前を馬袋義則のボートが走っていくと、無邪気な感じで手を振って応援する。

 2R後には試運転に出ていき、井川正人や宇野弥生と足合わせをしていたが……。井川に対しては、先輩への敬意をはらいながら、そのときの手応えを話し、宇野に対しては、やさしい笑顔でアドバイス! 前後左右上下まで……。すべてを見渡しながらピットで存在感を見せていた松井は、どこまでも「王者」だ。

(PHOTO/池上一摩、TEXT/内池)