BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――素敵です!

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「想像していた名人戦の雰囲気ではなくて、むしろ昔の新鋭リーグみたいですね」

 今年の“新人”のひとりである江口晃生はそう言った。たしかになあ、と思う。艇界の偉人たちが醸し出す独特の雰囲気は間違いなく漂ってはいるが、ざっとメンバーを見渡せば、数年前の名人戦とはずいぶん変わったなあと呟かざるをえない。特に、江口をはじめとする「今もまだ記念戦線でも見かける強豪世代」がさらに勢力を増していた今年は、たしかに20年前の新鋭リーグを戦っていたメンバーが圧倒的に多くを占めているわけである。「僕らの世代が押し出したんですかね」と江口は笑っていたが、名人戦もこうして新たな時代を迎え、その性質を変えていくわけだ(だって、あと30年もすれば、やまと世代のみの名人戦だってありうるわけだから)。

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 とはいえ、やっぱり名人戦は素敵だ! 偉人たちの表情や動きを見ているだけで、心ときめく。前検日ということもあって、今日いきなりピリピリとしている選手は見当たらず、ということはピットには年輪を刻んだ笑顔があちらこちらにあるから、ひたすら敬虔な気持ちにさせられるのだ。原田順一の柔らかい微笑は、見ているだけで心洗われるぞ。激戦を戦い抜き、ストイックにプロであり続け、幾千幾万の経験を積み上げて、今ここにある原田の醸し出す味わいが、まだ40半ばの“若造”にとって眩しくないわけがないではないか。これがバトルの場になれば、戦士の顔に一変したりするわけだから、もう本当にたまらない。彼らにしか発散できない空気を浴びられることは幸せなことである。

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 もちろん、前検というのは戦闘態勢に自身をもっていく日であって、だからさっそく大きな動きを見せている選手も多い。たとえば、ドリーム戦記者会見にシンガリの登場となった西島義則。ドリーム会見はおおむね、艇番の順に会見室にあらわれて、前検の手応えを語ることになるが、ということは3号艇の西島がラストの登場というのはやや異常事態である(もっとも、真っ先に登場する1号艇以外は自分の番を待つ間に作業を始めたりするので、特に3号艇以降は順番が入れ替わるのも毎度のこと。ただ、3号艇がラストってのはけっこう珍しいかも)。西島がなぜ最後になったかといえば、前検航走終了後、さっそく本体に手をつけていたからだ。どんな舞台でも、気になるところがあれば速攻で整備をし、決して妥協しようとしない西島義則。まさに“らしさ”が爆発していたわけで、早くも闘将の神髄を見たような気がした。

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 ペラを強烈に叩き変えていたのは西田靖。理由はもうおわかりですね。前検の手応えうんぬんではなく、自分のスタイルに持ち込む作業をしていたのだ。新プロペラ制度以降、西田使用のモーターを次節で引いた選手が一様に仰天するという、西田独特のプロペラ形状。鋭いピット離れ、徹底的な出足志向に、他の選手は「こんな形、見たことない」と驚くのだ。早くも、西田はその仕様にペラを叩く。見ていると、たしかに相当ガンガン叩いてますね。ペラの微調整という言葉もよく聞くが、正反対の激しい振りおろし。その姿は、まるで名刀を作り上げる刀鍛冶のようにも見えた。

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 で、早くもミスターワールド全開だった、ドリーム会見の今村豊。機力の手応えはどうやらあまりよろしくないようだが、しかし口のほうは舌好調。

「ドリーム戦の1号艇は本当はいらないんです。だって、なんでこのメンバーで1号艇なんですか。6号艇でいいくらいですよ。スーパーひとし君をここで使います?」

 報道陣爆笑。本来なら全員が内寄り志向、前付け必至のドリームメンバー。ここで1号艇はキツいわなあ。予選道中において、1号艇はまさしく“スーパーひとし君”。自分で使う場所選べるのなら、ここでは使いませんよね、野々村誠さんでも。でも仕方ない。ドリーム1号艇は「選出順位1位」の証なのだ。強すぎるミスターが悪いんです(笑)。

 というわけで、ドリームの進入はおおいに気になるところで、ほとんどの選手が「動けるなら動きたい」「本当は内が欲しい」「でもみんなそうだろう」というわけで「どうなるかわからない」と苦笑していたが、それぞれの話を総合すると「1235/46」または「135/246」と予想しておきます。今村はとことん付き合うつもりと言ってたしね。

 

 さて、明日はファン必見のイベントが10R発売中に行なわれる。往年のスーパースターによるエキシビションレースだ。ということで、今日はこちらも前検。ピット取材に向かおうとエレベーターを待っていた際、扉が開いたらモンスターと艇王が立っていて、思わず腰抜けました。

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①植木通彦

②北原友次

③中道善博

④野中和夫

⑤長嶺豊

⑥鈴木弓子

 この錚々たる面々で行なわれるエキシビション(なお、本来は9R発売中に公開枠番抽選を行なう予定でしたが、「真剣勝負なんやから今日も同じでいきたい!」ということになり、急遽枠番抽選が行なわれました。上記の枠順で行なわれます)。前検は和気藹々としながらも、現役時代を彷彿とさせる場面も随所に見られて、なんともはや早くも興奮マックスでありました。

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「クロちゃーん!」といつもの優しい声をかけてくれた長嶺豊さんが、エンジンを始動するや、みるみる勝負師の顔になっていったこと。その長嶺さんがスタート練習で前付けしてインを獲り切ったこと。インに入れなかった北原友次さんが2コースで転舵を繰り返し、艇がまったく前に進まなかったこと(笑)。4カドから2艇身もフライングを切った植木通彦さんに、野中和夫さんが「植木~、あら早すぎるわ!」とクレーム(?)をつけたこと。そのどれもこれもが実に楽しく、まばゆく、素敵なのでありました。お世話のために駆けつけていた谷川祐一ら滋賀支部の若手選手も大ウケしてましたぞ。

 というわけで皆さん、明日は全12レースと10R発売中の1レース、あわせて13レースを思い切り堪能しましょう!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=エキシビション TEXT/黒須田)