11R終了後のカポック脱ぎ場。赤と青と黄色と緑、色とりどりの勝負服を着た強者たちがわらわらと集まってきた。そして爆笑!
まず声をあげたのは、イエローの今村豊。いつもの調子で、ブルーの山﨑昭生、レッドの井川正人に声を張り上げる。穏やかに大笑いする山﨑。井川のヒゲもキラリと光る。レースは、まくり差しを狙って握った井川、その上を叩こうとした山﨑と今村、つまりは3者が握り合戦のようなかたちになっていた。みーんな握ったら、一番外の俺には出番がないよ~、という感じだったのだろうか、ミスターは。声は届いてこなかったので、会話の細かい内容はまるでわからなかったが、今村は「アキオ~、差せよ~」なんてことを言っていた可能性もあるな。山﨑としては「今やんが握ってきたからさ~」てなところ?
すると、グリーンの北川幸典が言う。
「俺も握っていこうと思ったら、アレだも~ん」
これはハッキリと聞こえた。つまり、この言葉をもとに3~6枠の会話を類推している、というわけだ。結局、北川は差して3番手争いとなっており、実は北川の選択は正解に近かったのだ。ま、ハナから差し狙いだったら着順は上に変わっていたかもしれないが、俺も握ろうとしたというあたりはまくり屋・北川らしい。
で、この4人はそれから装備を解く間、ひとしきり笑い声をあげていたのだった。脱いでいくのがカラフルな勝負服ということもあってか、全員が50代なんてまるで思えない。むしろ青春を謳歌する若者群像、なんてふうにも見えてしまったのだった。それぞれルックスは若いのも確かですけどね(髪もフサフサだし……)。
その一方、逃げて差しての日高逸子と金子良昭は二人きりでの反省会。1着-2着コンビということもあってか、こちらは爽やかな笑みを浮かべながらの会話となっていた。もっとも、女子選手仲間からは定評のあるグレートマザーの負けず嫌いっぷり。笑顔を見せながらも、逃げ切れなかった怒りをグツグツとたぎらせていた可能性はあるけれども、日高さんの場合。こちらのコンビも実に若々しいのでありました。
12R発売中には、倉谷和信、高橋淳美の大阪60期コンビが装着場に姿をあらわしている。二人そろって、明日の艇番艇旗準備。そう、新兵仕事である。去年も登番がもっとも若い二人だったが、今年も後輩の参戦はなく、2年連続の新兵であります。
名人戦では、「ベテランであり、本来は自分の作業に専念もしくはのんびりできるはずの方が、新兵仕事で飛び回る」という光景は毎年キャストを変えてお馴染みであり、別に珍しいことでもないはずなのだが、毎年思わずギョッとしてしまうのもまた恒例である。だって、SGでは倉谷は大阪支部の“長老”だし、女子王座では高橋は堂々たる顔役である。そんな二人が仲良く作業を手分けしている姿は、どうにも不思議でならないのが正直なところ。そしてまた、実にハツラツとしているようにも見えてくるわけである。20数年前の住之江のお盆開催とかに、同じ光景があったんだろうなあ。
今日は渡辺千草がマグネットを手に、鉄くずを拾い集める光景もあった。登番的にいえば、新兵には含まれない千草さんだが、名人戦初出場の役割をこなしているといったところだろうか。その直前、千草さんは本体整備をしており、それを終えてくず拾いを始めた模様。そんなキビキビとした動きがまた、なんともフレッシュに映ったのでありました。
さてさて、残念なことに陶山秀徳と熊谷直樹が帰郷となってしまった。新プロペラ制度以降は好調ぶりを誇示し、自身10年ぶりの優勝も飾って、久々に名人戦にやって来た陶山。必殺くまくりを武器に名人戦に新風を巻き起こすことを期待された新人・熊谷。ともに不本意な成績のまま、びわこを後にしなければならないのはなんとも不本意であろう。来年もぜひこの舞台に顔を見せて、今年の雪辱を果たしてください!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)