激突
'12R優勝戦
①江口晃生(群馬) 09
②長谷川巌(山口) 27
③今村 豊(山口) 08
④落合敬一(長崎) 09
⑤日高逸子(福岡) 14
⑥二橋 学(静岡) 14'
SG常連組が、観衆を魅了した。まずはスリット、2コースの長谷川がドカッと遅れて、江口晃生と今村豊のSGレーサーふたりがガチンコで睨み合う隊形になった。それだけで、もうスタンド騒然。迷うことなくミスター今村が内に絞めはじめる。江口が身構える。
③④⑤⑥の目しか買っていない私は、「今村、まくれーーーーー!!」
江口で勝負している人々は「逃げろーーーーーー!!」
どっちも十分にありえるし、大競りになってシゴロの大穴になっても不思議じゃない。つまり、ほとんどのファンが脳汁を垂れ流す超スリリングな展開になった。遅れた長谷川には申し訳ないが、こういう一触即発のスリット~1マーク、私は死ぬほど好きだ。
穴党の祈りに応えるように、今村は敢然と攻めた。まくり差しなど、ハナから選択にないのだ。グリグリと江口に艇を押しつけるような全速ツケマイ。タイミングは完璧。こりゃ決まった。私は確信した。で、今村の横には、ごっつあんのマーク差しを狙う落合が控えている。4-3か、3-4か。私の脳内レースとまったく同じ光景。能天気な脳みそが「俺の本線の4-3になってくれっ!!」なんて叫んでいた。
が、江口の応接はどうだ。ツケマイに来た今村にしっかり舳先を合わせ、平行な角度にし、そしてミスターを側面全体で張り飛ばした。慌てて飛びついたわけではないので、接触した後でも艇はまったくブレずに前へ前へと推進してゆく。
絶好のVチャンスに見えた落合のマーク差しも、前を行く江口に舳先がぶつかって大きくバランスを崩した。そして、その内を悠然と差してきたのが、屈強な男どもを手玉に取るグレートマザー日高だった。4-3どころか、1-5というフォーカスで今年の名人戦は幕を閉じた。
ピッカピカの1年生・江口晃生くん、第14代・名人就位おめでとさん! もちろん、まだまだSG戦線で活躍できる年齢だが、今日の“ツケマイ合わせ”はまさに「名人芸」と呼ぶに相応しい。笹川賞でも激辛かつ老獪なテクニックで観衆を魅了してくれ。
そして、“ミスター競艇”今村豊。全国中の脳汁を垂れ流しにさせた、ゴキゲンでやんちゃな強ツケマイをありがとう。ああいうカッチョいいレースをしてくれるから、ファンは今村豊という男だけでなく、ボートレースそのものも愛してやまないのだ。やっぱりあんたは、不世出の千両役者だ。(photos/シギー中尾、text/畠山)