BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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福岡・笹川賞TOPICS初日

 さすが「イン受難」として名高い福岡水面、初日のイン勝ちはわずか4勝だった。まあ、これはハナから想定内として、今日はコース云々よりも「展示時計トップ選手の成績」にスポットを当ててみよう。

 

'★各レースの展示トップの着順

①(③⑤)⑤②①⑤③⑥①③⑤①'

※()は2Rの同タイム2人の成績

 

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 うーーーん、今日のところは微妙な成績ではあったな。「福岡の展示タイムは、各選手のパワーをかなり正確に反映する。トップ時計の選手は信頼していい」と何度も書いてきたが、この玉石混交の着順ではピンとは来ないだろう。だが、全レースのトップ選手の枠番合計と着順合計を比較してみれば、その優秀さを垣間見ることができる。結果を記すと

 

全52号艇で41着。

 

 これを13で割って平均値を出すと「今日のトップ選手のアベレージは4号艇でほぼ3着」。枠番よりひとつ上の着順……まあ、ソコソコ信頼できるという程度ではあったな。で、1号艇(インコース)でトップ時計だったのは4R丸岡②着と12R瓜生①着。「インコースでの信頼度はさらに高い」という定説を、これまたある程度は満たしていると思うのだがどうか。この検証は、明日以降も続けていくつもりだ。

 

百期夜行

 

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 これは、若きもののけ達のパレードか……。

 2人で3勝を挙げた桐生順平&鎌倉涼の100期生コンビはじめ、「やまと軍団」が6勝の大暴れだ。しかも、その勝ちっぷりがどれも実に気持ちいい。

 まず、口火を切ったのが1Rの桐生。4カドから半艇身覗くとすぐに絞りはじめ、カド受け寺田千恵の抵抗を振り切ってから俊敏なまくり差しハンドルを突き刺した。先マイするイン日高逸子とターンマークの間隔はかなり狭く、強引にこじ開けるようなターンだった。度胸とテクニック、どっちも高いレベルで兼ね備えた順平ならではの悶絶ターン。「新鋭で唯一のSGファイナリスト」の肩書きは、伊達ではない。

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 続く2R、この桐生の圧勝に触発されたかのように、同期の鎌倉が大技を繰り出す。スリット同体からの3コースまくり。見えない所から飛んでくるこの強襲は、イン平石和男と2コース服部幸男のSGレーサーをものの見事に呑み込んだ。

「どうよどうよ、順平クン」

 バックで抜け出した背中が、そううそぶいているように見えた。

「なんの、まだまだ!」

 6R、今度は桐生がインからしっかりと逃げきり勝ち。イン受難の福岡水面でスリット隊形も厳しかったのだが、天性のターンスピードで大先輩たちの猛追を凌ぎきった。なんとなんと、前半6レース中に100期コンビで3勝30ポイントゲット!

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 もちろん、やまと学校の先輩も黙ってはいない。4Rの2周1マークでは、95期の峰竜太が恐るべき必殺技を披露した。なんと表現したらいいのか……うむ、ちょっと表現しようがない。この手前のホーム直線で、峰は去年の当地ダービー覇者・丸岡正典と完全なラップ状態になった。内は丸岡、外に峰。もちろん、内の丸ちゃんが断然有利だ。が、そこから峰リューはちょっと得体の知れないツケマイを放つ。丸ちゃんからわずかに艇を開き、上半身全部を左側に激しく倒し、丸ちゃんの描く航跡とはまったく違う超鋭角の放物線を描いて一気に抜き去った。「峰のターンは初動のタイミングから重心の移動の仕方から、他の選手とはまったく違う」というのはすでに定説ではあるが、それにしてもあの頂点がトンガったような放物線は驚きを禁じえない。かの『モンキーターン』のVモンキーを実現できるレーサーがいるとするなら、その最有力候補は間違いなく峰竜太だ。そんなことを思わせる、かなり現実離れのモンキーだった。

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 さらに5R、今度は96期の篠崎元志が魅せる。5コースからのまくり差しだったが、単なるまくり差しではない。云わば、2段ロケット噴射まくり差し。この1マーク、まずは4カドの濱野谷憲吾が田口節子のまくりに乗ってまくり差しを打った。狭い間隙を突き抜けるスピードもタイミングも完璧、「憲吾の圧勝だ!」と誰もが確信するマーク差しだった、はずだ。が、憲吾の外からぶん回していた元志が、憲吾によってさらに狭く狭く狭くなった隙間に、全速のまま舳先をブッ刺した。まさに「ブッ刺した」としか言いようがない。体操でいうなら何度Eの大技。思えば、「5コースから全速握りっぱなしで狭いところをまくり差し」という離れ業は、憲吾の専売特許だった。それは「憲吾スペシャル」と呼ばれた。元志は、さらに難度の高い「憲吾スペシャルver2」みたいな2段まくり差しで本家本元の大先輩を引き波に沈めてしまったのである。憲吾が福岡ダービーを制してから15年。元志の超絶ターンとともに、時の流れをしみじみ実感したのは私だけだろうか。

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 後半の9Rでも、元志は3コースから鮮やかなまくり差しを決めた。もう、惚れ惚れ見とれてしまうようなターンスピードだった。桐生、鎌倉、峰、篠崎の4人で6勝。決まり手は、逃げ、まくり、まくり差し3発、抜き……色とりどりの勝ちっぷりは、そのまま彼らの才能の発露だ。それを見続ける私の脳みそは、「百期夜行」という冴えない駄洒落とともに、まだ底の知れぬもののけ達が楽しげに行進するイメージを長くぼんやりと映し出していた。

 

パワー評価一口メモ

 

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 昨日、大絶賛した山川美由紀22号機だが、今日の実戦の気配はイマイチ~イマニだった。スリットからあまり伸びず、ターンマークの手前まで行ってからやっと伸びるような……前検の俊敏さが嘘のような、もっさりとした後伸びパワーだった。『西日本スポーツ』の森記者は「昨日より気温が上がった分だけ反応が遅く(鈍く)なったのではないか」との見解を示してくれた。なるほど、この時期は季節の変わり目で寒暖の差が激しいだけに、明日以降も気温&気配&展示タイムのチェックをしっかりやっていきたい。

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 今日の実戦を見て「うむむ」と唸らせたのが石渡鉄兵、田口節子のふたりだ。石渡は2コースで勝った唯一のレーサー。差しハンドルを入れてから加速していくレース足が、相当ご機嫌に見えた。

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 田口は全部が上位のバランス型。ターンすることにぐんぐん追い上げていくパワーは「節イチか??」と思わせるほどだった。最近、パワー出しに苦労して泣きコメも多い節っちゃんだが、今節はひと味も二味も違うぞ~!(photos/シギー中尾、text/畠山)