BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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福岡・笹川賞TOPICS4日目

'THE勝負駆け

10R/涼ちゃん、撃沈'

 

 勝率6・00で落ち着いていた準優ボーダーが、9Rを終えて6・20に跳ね上がった。ギリギリ18位は山崎智也。だが、智也には11R1号艇という好枠が控えている。ランクアップこそあれ、落選はないだろう。そう思いつつ、10Rを観ていた。

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 勝負駆け選手は4人。記者のあちこちから、鎌倉涼を応援する声が飛ぶ。気持ちはわかる。SG初出場の初戦で1着=平成生まれのSG初1着だった鎌倉。それが初準優へ初優勝戦へとなれば、夢と話題性がぐんぐん膨らんでゆく。

 だが、SG常連のオッサンレーサーたちは、24歳の女の子に準優チケットを手渡すほど甘くはなかった。まず、もっとも険しいメイチ1着条件だった江口晃生がアタマで突き抜ける。名人の意地とテクニックと貫禄が入り混じった2コース差し。イン戦で差された吉田弘文が2番手を死守する。3着6・17では首筋が寒いから、文字通りの死守だ。

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 バック直線で涼ちゃんはその後ろ、団子状態の3着争いに食い込んでいた。3着なら6・33、4着なら6・00。その団子の中には井口佳典もいて、3着6・50、4着なら6・17。際どい。勝負の2マーク、最内から伸びた涼ちゃんが井口の前を横切るようにして先マイの勝負手を打った。いい度胸だ。が、それを冷静に行かせて、石渡、井口、辻の30代後半組がスボズホズホと差してゆく。涼ちゃんは流れながらも必死に粘ったが、終わってみれば6着だった。4着6・17で18位まで下降した井口は、それから最終レースまで肝を冷やし続けることになる。

 

11R/1号艇の智也が……

 

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 続く11R、事件が起きた。インで2着もあれば十分だった智也が、スリットで完全に遅れた。スリット後に1艇身出切った2コースの峰竜太が、このチャンスを逃すわけもない。

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1着でわずかに予選トップの可能性を残す峰。舳先数十センチで追いすがろうとする智也を容赦なく振り払い、智也はその引き波ではるか彼方に流れ去ってゆく。今節は関東勢が珍しく大活躍しているのだが、憲吾&智也の“2枚看板”はV戦線から消えた。

 峰は1マークで中島孝平のマーク差しを食いつつ、例によって人間離れした悶絶ターンで大逆転の1着。なんとか最終レースまで、予選トップの可能性を残した。

 

12R/やまとの明暗

 

 いつものことだが、準優ボーダー付近も予選トップ争いも最終レースまでもつれ込んだ。勝負駆け4人の条件をまとめると

 

12R

①石野貴之…②着で準優

②瓜生正義…④着で準優

③海野ゆかり…×

④新田雄史…②着で準優

⑤日高逸子…×

⑥桐生順平 …⑤着で予選トップ

 

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 つまりは1425あたりの着順で4人のノルマがすべて満たされる(=井口が落選)のだが、もちろんそんな予定調和のレースになるわけもない。まず2コースの瓜生正義が、イン石野貴之を直まくりで潰しに行った。11Rは智也のドカ遅れがあっての峰まくりだったが、今度は違う。スリットほぼ同体から、瓜生だけがぐんぐん伸びていった。日に日に良化していく瓜モーター。ついに怪物級の行き足に仕上がったのかも?? 必死に艇を合わせて粘ろうとする石野だが、届かない。無念の引き波。智也に続いて、石野も1号艇で敗れ去った。

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 レースは石野に抵抗された瓜生もやや流れ、超人気薄の海野ゆかりがズボ差しという大波乱になった。それでも新田は2着、瓜生は4着、ギリギリながらも勝負駆けを成功させた。そして、ピットで見守っていたであろう井口も18位で滑り込み。井口・新田の三重支部コンビは、最後の最後で仲良く明日のチケットを手にしたのである。

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 一方の予選トップ争いは……これはもう、危なげがなかった。鋭いピットアウトで5コースを奪った桐生順平は穏やかに艇を流しつつ、冷静に差し場を探して舳先を入れた。それだけで、もう瓜生との3着争いになっている。今節の桐生は「ちょいと目を話している隙に、こんな最前線に??」というパターンが多い。パワーなのか、天性のターンスピードなのか。その両方だろう。桐生は2マーク全速マイで瓜生に競り勝ち、楽々3着を取りきってしまった。文句なしの予選トップ当選。このまま優勝戦までイン水域を突っ走れば、2010年笹川賞の岡崎恭裕以来、3年ぶりの「新鋭リーガーSG制覇」となる。岡崎は予選3位。優勝戦での26歳・直接対決が現実味を帯びてきた。(photos/シギー中尾、text/畠山

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