'前付け選手、躍動!
今日のイン成績
⑤①①④③⑥②L②⑥⑤①'
いやぁ、負けた負けた。今日のイン選手は、わずかに3勝止まり。残りの9選手は出遅れ欠場も含め、他艇の引き波に甘んじた。原因はさっぱりわからんが、山崎智也や今村豊など起こしから立ち遅れるケースが目立った。
で、最近のSGは「インの1着は少なくても、2・3着にはきっちり粘り切る」というパターンが多いのだが、今日は舟券にも絡めない惨敗大敗が相次いだ。常滑のイン水域に、魔物が潜んでいいたのか……明日以降もこの傾向が続くのか、それとも「スタートが揃ってイン逃げラッシュ」といういつものSGモードになるのか。その判断を誤らぬようにしたい。
さてさて、インを脅かした選手たちの中でも、とりわけ目立ったのが前付けレーサーだ。まずはいきなりの1R。5号艇から気迫満々の動きで3コースを奪った田村隆信が、スリットほぼ同体から一気にまくりきってしまった。前付け3コースは起こしも深くなるし、スタート勘も難しいとしたものだが、田村の気合が上回ったということか。ちなみに田村の勝ちタイム1分47秒7は、今日の断トツ時計だった。気力だけでなく、機力にも注目するとしよう。
今節のミスター前付けといえば、もちろん西島義則だ。今日の6Rは“絶好”の6号艇。ピットアウトから嬉々として?飛び出し、例によって2コースを取りきった。最近の西島は「イン屋」というより「2コース屋」と呼ぶべきかもしれない。そして、90m起こしからバチッとコンマ08。襲い掛かる3コースの菊地孝平をしっかりブロックして、十八番の2コース握り差しである。これぞ、まさに名人芸。全12Rで唯一の「2コース差し」を決めたのだから、この1勝の価値は高い。
さらに、前付け常連レーサー深川真二も元気いっぱいだ。今日の4Rは微妙な4号艇ということもあって、素直に4カドを選択。前付け屋の多くは、ダッシュ戦になると握って攻める。今日の深川も、内3艇を握り倒してしまった。スリットでは1・2コースより半艇身ほど遅れていたのに……。
「今日は枠なりだったけど、外枠ならもちろん動きます」
勝利インタビューで、高らかに宣言した深川。明日以降も目が離せないぞ。イン屋や前付け屋が元気に“暗躍”するシリーズ、私は大大大好きだ!
'岡P、神差し!
今日のコース別勝利数
①3勝②3勝③3勝④1勝⑤1勝⑥1勝'
1~3コースまで各3勝、4~6コースが1勝ずつときれいな並びになった。中には「2コース逃げ」なんて珍しい決まり手も(8Rの佐々木康幸)。
ここで特筆すべきは、やはり6コースの1勝だ。大技を決めたのは、7Rの岡崎恭裕。このレース、岡崎は4号艇だった。が、ピットアウトで立ち遅れ、泣く泣く6コースへ。この瞬間、岡崎のアタマ舟券を買っていたファンは絶望的な気分になったことだろう。だが、この男のターンセンスは、いつだって常識を覆すのである。
スリットは美しいまでの横一線。こんな隊形の場合、6コースの選手は5コースが握っても握らなくても、スリットからしばらく艇を直進させることが多い。それで十分に
マイシロを取って、全速でターンマークに向かう。それが、アウト差しの定石だ。
が、岡崎のターンはまるで別物だった。5コースの田村が握ったとき、すでに岡崎の舳先はターンマークを目指していた。直進するのでも、田村をマークするのでもなく、舳先をグイッと左に傾けたのである。おそらく、岡崎は「5コースの田村さんは同体からでも握ってくれる」と確信していたのかもしれない。それにしても、ハンドルを入れるタイミングの早いこと! もちろん、ターンスピードの速さは書くまでもない。最短距離で1マークを通過した岡崎の舳先は、バック中間のはるか手前で逃げる原田幸哉を捕まえてしまった。その追い付き方は、2コース全速差しと遜色なかった。
うわ、神差し??
私は思わずこんな言葉を発していた。6コースから、2コース差しのような塩梅で勝つ男。マジで神がかって見えたぞ。
「狙っていたターンでしたが、今日はタイミングがバッチリ合いましたね。機力とかじゃなく、タイミングです。バッチリでした!」
嬉しそうにインタビューに応える岡崎。狙っていたのか、岡P。この必殺技が常にバッチリ決まるようになれば、ボート界の常識が根底から変わるかも?? そんな夢が膨らむ“神差し”だった。
常滑ツートップ、不覚!
「好事、魔多し」ということなのか? 常滑の2トップエンジンとして期待された50号機と20号機が、相次いでアクシデントを引き起こした。
まずは、2Rの平尾崇典50号機が2周2マークで謎の?転覆失格。ごく普通に回ったように見えたのだが、ターンの出口で艇が左右に暴れてそのまま真横に反転した。他艇との接触もなく、無念の選手責任失格だ(減点5)。
さらに謎めいていたのが、8Rの吉田俊彦20号機である。絶好の1号艇で、負けられない一戦。俊彦はガッチリとインを主張し、ゆっくり艇を流していたのだが……ダッシュ勢がピット方向へと艇を引きはじめたあたりで、いきなりエンストに陥った。必死にエンジンを再始動させた俊彦だったが、間に合わない。他の5艇に置き去りにさながら、虚しくスリットラインを通過した。選手責任の出遅れ欠場。もちろん、賞典除外。
「20、50、喜んで♪」(byカクロー)と多くの選手が狙っていた2トップが、まさか初日で絶望的な状況になってしまうとは。日本代表の本田と香川が前半5分に一発レッド、みたいな感じなわけだが、不動のエース50号機を駆る平尾には微かながらも予選突破の可能性が残っている(4連勝すれば、節間勝率6・17)。素性的には「明日から怒涛のピンラッシュでミラクルV」なんてことがあっても不思議じゃないのだが……。(photos/シギー中尾、text/畠山)