台風63号
東風吹かば……。西国の水面を、秒速100m級のイースタン・タイフーンが駆け抜けた。東都のエース・濱野谷憲吾×63号機。11Rの憲吾は、伸び型のパワーを生かしにくい2号艇だった。
「本番までに、いぢっちゃうのかなぁ。乗りやすさを求めて、伸びを殺しちゃうのかなぁ。やめろよ憲吾、そのまま据え置きでジカまくりしちまえ、憲吾、なっ」
昨晩、安酒をあおりつつ黒須田のハゲ頭をペシペシ叩いたものだが、どうやら私の祈りが通じたようだ。憲吾は相棒の底力を信じ、(おそらく)何も手を付けずに実戦に向かった。そして……この11Rにキャッチコピーを付けるなら、
「君は63号機を見たか??」
見逃した方は、リプレイやレジャチャンなどで堪能していただきたい。スリットほぼ同体から、1マークまでにインの池田浩二を1艇身半ほどやっつけてしまった。2コースからの、ハコまくり。無類のイン巧者が、何もできずに敗れ去った。新ペラ制度になってから、これほど圧倒的に伸びるエンジン&ペラが他にあっただろうか。
「明日からもまくれるように、頑張ります」
台風63号に乗って、東都のエースもすっかりその気になったようだ。「競ったときが心配」とも吐露したが、なんのなんの、今日のような攻め一本のレースに徹すれば、競りになんかならないのだ。この超大型で超強力な台風63号は、7月28日の夜中まで若松水面に停滞することだろう。
確変、ブスジマ君!!
赤城の若大将・毒島誠も、凄いことになっている。まずは5R、5コースからちょっと握ってみたら先頭に立っていた。そんな勝ち方。決まり手は「まくり」だが、ハナからゴリゴリ攻めたわけではない。最初はやんわりと直進し、4カド白井英治のまくり差しなどで内が立て込んでいるのを見てから、「じゃあ、外をぶん回しておきますか」という風情で握ったのである。タイミング的には、外から付け回って2・3着が精一杯に思えた。
だが、いざぶん回してみたら、必死に逃げ込みを図る田村隆信を軽々と追い越していた。田村が非力だったとしても、ちょっとありえないスピード&パワーだった。
後半の9Rもヤバい。スリット横一線の3コースから毒島1艇だけがぐんぐんと突き抜け、あっさりまくり差しを決めた。まるで、2コースの鎌田義が存在しないかのような、差し抜けだった。それほど1マークまでに突出していた。スリット同体だったのに。いきなり初日から確変モード突入でピンピン連勝。今節の東風はマジでモノが違うぞ!!
こうなると、気になるのは「憲吾と毒島、どっちがどれくらい伸び~~るの??」なのだが、この究極の伸び比べは最終日の最終レースまでとっておきたいなぁ。私の独断では、やっぱり憲吾が半分ほど伸び勝っているように思うのだが、どうか。
怒涛の赤城下ろし
激しい東風は、最終レースまで続く。はじめてSGドリーム戦に名を連ねた秋山直之が、5コースから一気に内4艇を呑み込んだ。3人の賞金王と若き昇竜を、まとめて引き波に沈めてしまったのだ。
「スリットは無理をせず、道中でガンガン追い上げる」が直之パターンとしたものだが、ドリーム戦の桧舞台で唯一のコンマゼロ台、文句なしのトップS。そして、一片の迷いもない一撃まくり。これまでに誰もが思ったであろう「ターンの天才・秋山が、もっともっとスリットから攻めるようになったらなぁ」というレースを、しかと魅せてくれたわけだ。
伸び~~~~る憲吾&毒島に、攻め~~~~る秋山。ここ数年は西高東低の波に押されっぱなしだった関東勢が、いつもとは一味違うスタイルで反撃の狼煙をあげた。さらに、石渡鉄兵の足も上々だし、例によって山田哲也のスタートもバッチリ見えている。去年の賞金王・山崎智也も発奮することだろう。選手会長の上瀧和則は常々こう言っている。
「関東が強くならなければ、艇界の未来は暗い」
今節、私も含めた関東在住者は、舟券で大いに応援しようではないか。(photos/シギー中尾、text/畠山)