BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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若松オーシャンTOPICS 2日目

今日の台風63号

 

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 あの平和島のレジェンド36号機を彷彿させる今節の63号機。「まさか、憲吾のパーフェクトVまであるのかっっっ??」などと昨夜の酒席で盛り上がったものだが、いきなり前半の5Rでその夢は潰えた。絶好の3コース、内の平山智加を100mで2艇身ぶっちぎったスタート展示、暴力的な展示時計……イコール負ける要素ゼロ。スリット同体なら、昨日同様のハコまくりが約束される。そして、スリットは同体どころか憲吾がトップ時計だった。

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 ところが、憲吾63号機はスリット付近で沈黙した。それもそのはず、スタートのはるか手前から憲吾は上体を高く浮かせて、露骨にアジャストしたのである。憲吾がこんなに伸びるモーターを駆るのは、何年、あるいは何十年ぶりだろう。普通に起こしたつもりが、想定(経験則)をはるかに超える行き足だったに違いない。上半身を屹立させた憲吾の姿は、のっぴきならない非常事態を連想させた。そして、この露骨なアジャストは、間違いなく大正解だった。憲吾のスタートはコンマ03。握りっぱなしでスリットを通過したら、コンマ10くらいハミ出したことだろう。

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 半端な伸びで仕掛けきれなかった憲吾は、4・5番手争いを強いられた。3番手を行くのは、太田和美。逆転の難しい強敵だが、憲吾63号機はわずか1周の間に3艇身差をひっくり返していた。やはり、凄い。

 後半の10Rは、スタートがもっとも心配されたインコース。だが、今度はバチッと決めた。コンマ08でスリットを通過すると、伸びるわ伸びるわ。1マークまでに他艇を1艇身半ほど置き去りにした。ただ、加速度がもっともついた状態での先マイだけに、ターンの塩梅が難しい。落としたつもりでも落としきれなかったが、憲吾のインモンキーはわずかに流れた。その間隙に、飯島昌弘と峰竜太が殺到する。憲吾を応援しつつも531・513というスケベな舟券を握りしめていた私は、バック中間で絶叫した。

「でけたーーーーーーーっっっ!!!!!!」

 内から順番に5→3→1。それぞれ舳先が掛かっているから、私の舟券が何万円かに変わる可能性は極めて高い。はずだったのだが……ほぼ3艇横一線から、大外の憲吾だけがスパーーーーンと突き抜けた。その間、わずか5秒ほど。そのままパワー任せに2マークを回って、節間2勝目を確定させた。うん、わかっちゃいたけど、あの伸びはエゲツなさすぎるぞ、63号機!!(涙)

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 連日、憲吾63号機のことばかり贔屓して申し訳ないが、きっと私は明日も書いてしまうだろう。書きたくて仕方がない。ここ数年のSGで、スリットからこれほど暴力的に伸びるエンジンはなかった(と思う)。突出して伸びる艇がひとついるだけで、脳内レースが鮮明に刺激的に動きはじめる。6艇が生き物のように躍動する。その6艇とともに、止めどなく脳汁が噴き出す。昨晩の酒席は、今日の5Rと10Rの展開推理だけであっという間に2時間が過ぎ去っていた。黒須田と私は興奮しながら、あーでもないこーでもないと饒舌に喋り続けた。昔のように。

 明日の台風63号は、緑色。1マークのはるか遠くから、どんな暴風を吹かせてくれるのか……今晩の酒も美味いに決まっている。

 

田村警報

 

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 銀河系きっての勝負師・田村隆信が大暴れだ。いろんな意味で。まず1Rは、6号艇の6コース(スタート展示は3コース)から決め撃ちのまくり差し。バック直線で湯川浩司と激しくツバ競り合いを繰り広げた末に、大きな1勝をモノにした。

 5号艇だった9Rは2コースを奪い取り、しかもインの新田雄史をジカまくりで潰しに行った。これが小競り合いになっているうちに人気薄の2艇がスブズブ差し抜け、2連単万シューの“立役者”に。さらにもつれにもつれた3着争い、最終ターンマークで田村はまたしても新田にガツンと突進し、消波装置ギリギリまで弾き飛ばしてしまった。文句なしの不良航法だ。あの危険な突進は批難してしかるべきものだが、それはそれとして、「田村が無類の勝負師である」ということを、我々は改めて肝に銘じるべきだろう。

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 今節の田村は、優勝という当たり前の大目標の他に、「崖っぷちのダービー勝負駆け」という一大ミッションを抱えてやってきた。昨日の時点で、ジャストボーダーの52位。決算日は、今節の最終日。そんな土俵際に追い込まれた田村が、闘魂を露わにしないわけがない。舟券的には、それが田村隆信という男の最大の魅力だと俺は思っている。今日のラフプレーは大いに反省すべし。その一方で、決め撃ちの全速アウトまくり差し、果敢な前付け、気合のジカまくりは闘魂120%のプレーとして高く評価したい。

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 もちろん、田村は明日以降も凄まじい気合を水面に投影させるだろう。舟券を買うか買わぬかはお任せするが、とにかくこの勝負師が何をやらかすのか、油断することなく警戒し続けてほしい。

 ちなみに、平山智加もボーダー50位前後、のっぴきならないダービー勝負駆けに挑んでいる。回り足が仕上がっているだけに、明日の6号艇1回乗りは「智加ちゃんで大穴ゲット」のチャンスかも??(photos/シギー中尾、text/畠山)