BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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鳴門・女子王座 準優ダイジェスト

 

'10R

①金田幸子(岡山) 10

②谷川里江(愛知) 13

③田口節子(岡山) 12

④西村美智子(香川)23

⑤日高逸子(福岡) 15

⑥滝川真由子(長崎)20'

 

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 逃げる金田、差した谷川の一騎打ち。結果としては「行った行った」の順当な“準優決着”になったが、危ういシーンもあった。1周2マーク、逃げる金田を捕えるべく再び差しに構えた谷川が、ズルリと滑るように振り込んだ。幸いにも他艇との接触はなかった(接触して被害を与えれば100%不良航法=賞典除外だったろう)が、尻餅をつくような大失速。その異変を察知した田口、日高ら後続艇は危険を回避すべく慎重に2マークを回った。

 

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 こうなれば、金田の一人旅。になるはずなのだが、金田は金田でターンの出口でバランスを逸し大減速していた。競ってもいないのに、別々の場所で同時多発振り込み。やはり、“プレミアムGI”準優のプレッシャーがあったとしか思えない。

この金田の失速で、尻餅をついた谷川が息を吹き返した。内からするすると伸び返して、ありえないような2-1態勢になってしまった。

「まさか、ふたりとも不良航法かっ??」

「単なる失速だとしても、谷川は2度目の失速だろ、それって賞典除外になるっ??」

 

 

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 記者席はすったもんだの大騒ぎ。その裁定が分からないまま、レースは進む。己のミスを挽回すべく、あの手この手で再逆転を狙う金田。だが、その渾身の反撃はわずかに届かなかった。1-2を買っていたファンは激怒したことだろう。逆に2-1を買っていたファンは、ほくそ笑んだに違いない。どちらの舟券も買っていない私は、レース後の裁定を気にしつつ、ふたりのパワー比べを興味深く眺めていた。ストレートは谷川が上。展示時計(コンマ01秒差)以上の開きを感じた。逆に、回り足は金田の方が力強く見えた。ただ、ターンスピードでわずかに金田に分があるので、実際は互角くらいか。総合評価では10対9くらいで谷川、と見た。

 

 

 1着・谷川、2着・金田。

 レース後、谷川は今節2度目の“失速”で減点7の罰則を受けたが、賞典除外が適用されない範囲のお咎めだった。逆転された金田も大丈夫。状況によっては不良航法になっても不思議ではないアクシデントだっただけに、素直に幸運と呼ぶべきだろう。こういう運が、最後の大一番では武器になることもある。

 私が期待した西村美智子、滝川真由子は完全なスタート負け。まだここで互角に闘うだけの経験値が足りなかった。

 

 

'11R

①大瀧明日香(愛知)18

②山川美由紀(香川)13

③守屋美穂(岡山) 13

④魚谷香織(福岡) 16

⑤寺田千恵(岡山) 11

⑥宇野弥生(愛知) 09'

 

 初優勝を狙う4人の美女レーサーが、歴代女王の分厚い壁に弾き飛ばされた。インの大瀧は、山川の有無を言わせぬジカまくりを浴びた。今日の山川の行き足は、半端なものではなかった。スリットからあっという間に1艇身抜け出し、力任せに上から押し潰した。

 

 

 

 

 

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 この2コース強襲は、内に美味しいスペースを生む。3コースの守屋が、4カドの魚谷が、唯一のゼロ台を決めた6コースの宇野が、この広い水面に殺到した。が、そこからスルスルと抜け出したのは、二番差しの寺田だった。守屋が全速全速で同県の先輩に追いすがるが、届かない。届く気配がない。テラッチのターンは精緻で、冷徹で、激辛だった。「百年早い!」と威圧するようなターンだった。力でねじ伏せた山川、完璧な立ち回りで後続を完封したテラッチ。今日のところは、役者の違いをまざまざと見せつけた。

 

 

 

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 1着・山川、2着・寺田。

 すでに書いたが、特筆すべきは山川の行き足だ。前検も含めた6日間で、今日の行き足が図抜けていた。3コースが濃厚な明日は、さらにこの部分~伸びを強化する可能性は高い。センターから伸びる山川の怖さは、今さら何も言う必要はないだろう。

 一方のテラッチは、伸び一辺倒に見えたパワーに出足・回り足の“活”を入れた感がある。1マークの出口で何本もの引き波をぐいぐい乗り越えたレース足は、たとえ6コースでも脅威になるだろう。

 

 

'12R

①平山智加(香川) 04

②浜田亜理沙(埼玉)08

③落合直子(大阪) 10

④淺田千亜希(徳島)08

⑤海野ゆかり(広島)08

⑥香川素子(京都) 08'

 

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 平山が逃げた。スリット通過は、コンマ04。不退転の覚悟を見せつけるスタートだった。さらに、スリットから伸びる伸びる。1マークの手前では、外の5艇を1艇身半ほど突き放していた。影をも踏ませぬアドバンテージ。

 だが、今節の鳴門のイン水面は、この覚悟とパワーをもってしても圧勝を許さない。平山のインモンキーがわずかに流れただけで、その内側に二番差しの淺田の舳先が突き刺さっていた。今日の淺田にもうひとつくらいの伸び足があれば、ふたりの着順は入れ替わっていただろう。バック中間、平山が高速で屈伸するように、伏せた上体を上下に激しく揺らした。

「振りほどけ、振りほどけ、振りほどけ、振りほどけ!」

 背中が、こう叫んでいた。2マークの手前で淺田の舳先が抜け落ちたのは、この祈りの儀式が通じたせいではない。両者の伸びが、違いすぎるのだ。なんとか2マークを先取りして、それで平山の優勝戦1号艇が決まった。最後は千切られたが、淺田もしっかりとした足取りで2着を取りきった。前検ではワースト級だったエンジンを、優勝戦まで引き連れた。もちろん、整備力だけではない“心の力”が、思うにままならないエンジンの背中を押し続けていた。まだ終わってはいないが、今節のチャッピーの走りっぷりには、ただただ頭が下がる。

 1着・平山、2着・淺田。

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 去年同様、平山は5日目までの頂点に立った。そして、今の平山は去年の平山ではない。超ハイレベルの周年記念を制覇するほどの強い女になった。さらにあとひとつ、あとひとつだけインコースから逃げ切れば、これまでの幾多のリベンジを果たすとともに、横西奏恵の後を継ぐ最強の女へと進化を遂げることだろう。

 だが、その“あとひとつ”が難しいのだ。今日は覚悟を決めたスタートから圧倒的なアドバンテージを得ても、ギリギリの勝利だった。明日の3号艇は、行き足がモンスター級になりそうな山川先輩。今日で辛勝ならば、明日はそれ以上の覚悟と度胸をもってスタートを行かなければいけない。今日よりも完璧なインモンキーを決めなければいけない。そんな「なければいけない」という思いが、平山の心を千々に揺らすかもしれない。

 インは、心が走る。

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 強くなった平山がさらにもうひとつ強くなるために、明日は極限の心を試される。相手は、山川ではない。(photos/シギー中尾、text/畠山)