BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――リベンジ!

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 昨年の新鋭王座、末永由楽はオール6着で一節を終えている。オール6コース、スタートも行かず、いわゆる「レースを降りた」状態だった。F2での参戦で、事故パンだったのだ。期末(4月、10月末)には一般戦でもそんなレースは見かけることはある。だが、それを新鋭王座でやるか? いや、一般戦でもガッカリさせられてしまうわけだが、晴れの新鋭王座でまったくレースに参加していない由楽に、僕は落胆よりも憤りを感じたものだった。BOATBoy『BR時評』でもこの件を取り上げ、批判的に語ったりもした。事故パンの選手の気持ちはもちろん理解するが、新鋭王座でそんなの見たくない!

 由楽は、その時期の6着ラッシュが尾を引いて、今年の新鋭王座は選出予備1位に留まってしまっている。残念だった。去年の借りを返す走りを、今年の王座で見せてほしかったのだ。ところが、8月になって由楽の繰り上がり出場が報じられた。嬉しかった! 由楽は今年が新鋭卒業期ではあるが、そうでなくともこれが最後の新鋭王座。そこにギリギリ名を連ねられたことは、去年のことがあるだけに、大きな意味をもつことだと思えたのだ。

 批判的なことを書いた気まずさももちろんあったので、あえてこちらから声をかけた。由楽にわだかまりがあるか、といえばそれはわからなかったが、とりあえず由楽は笑顔を向けてくれている。由楽はなんたることか、今年もF2での参戦。それも、前々節で2本目を切ってしまった。それでも!

「去年のことは、本当に勉強になりました。またF2ですけど、今年はやります! 頑張ります!」

 事故点に若干の余裕があるのが去年とは違う点ではあるが、それはともかくとして、由楽は去年、徳山に置き忘れてしまったものを取り返そうとしている! 去年の由楽は、ひたすらぶっ離された後方を走っていたので、その走り自体を覚えていない方も多いかもしれない。しかし、今年の由楽はそんな“消えた”レースを繰り返すことは絶対にない。そんな屈辱をもう二度と味わうことはない!

 思えば、MB記念の毒島誠は予備1位から繰り上がって出場して、SG初制覇を果たしたのだった。その毒島の地元プールで、同じことが起こらないとも限らないぞ。ぜひとも末永由楽に注目を! 僕も追いかけます!

 

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 去年のリベンジ、といえば、やはり佐藤翼を忘れるわけにはいかない。いまだ記憶に鮮明な、優勝戦1号艇でのフライング。あのレース後の号泣シーンは、忘れようったって忘れられるものではない。

 BOATBoy10月号のインタビューをご覧になった方なら、すでにあの失敗を消化し、前を向いている翼を感じ取っていただけたことだろう。この男、想像以上に芯が強い! いつかあの号泣をひとつのエピソードとするべく、翼はただただ上を目指して走り続ける。

 レース場入りの際には、なんとも柔らかな笑顔を向けてくれた翼だったが、作業が始まれば表情はぐぐっと引き締まる。たっぷりの時間が設けられているわけではない前検日、そのすべてをしっかりと使い切るべく、鋭い目つきで駆け回っていた。去年はピットでもむしろ好青年っぷりが際立っていたという印象が強いが、今年は一味違いますな。先輩の桐生順平が大本命視されていても、怯むことも諦めることもまったくない。いや、今年はさらに本気で獲りに来ているだろう。それがぎゅんぎゅんと伝わってくる翼の表情。やっぱりこの男も追いかけなきゃいけないだろうな。

 

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 さて、名だたる若武者たちのなかで、やはり雰囲気が違いすぎるのは、SG経験組である。桐生順平、松尾昂明、篠崎仁志、前田将太。このうち、松尾以外の3人はドリーム戦に出場、内枠を占めている。つまりは、今節の絶対的主役となる3人であって、大舞台の経験の数もあってか、どこにいても目立ってしまうオーラを発している。また、ドリーム記者会見でも、外枠の3人とは受け答えの余裕が違う。片岡雅裕が終始視線をきょろきょろと落ち着けていなかったのはちょっとかわいかったけど(笑)、そうした様子を見るだに、SG組のドッシリとした様子には唸ってしまうわけだ。

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 桐生は低勝率機を引いてしまっているが、乗ってみたら想像ほど悪くなかったという。篠崎は、「明日は時間があるので朝から本体を割る」と言っていたが、今日さっそく本体を点検し始めており、明日の準備に取り掛かっている。この素早さも、現在の絶好調ぶりを支えているものかもしれない。

 

 

 

 

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 前田は「歴史に名を残すチャンス」という言葉を使った。これが最後の新鋭王座だということを意識した発言だし、それを言い切ったのは素晴らしいと思う。同時に「総理杯への通過点」とも語った。ここはゴールなどではなく、SG出場権を自力で手にするための関門なのだとも理解し切っているわけだ。こうした言葉をあっさりと言ってのけられるのも、大きな舞台を経験したからこそだろう。

 やっぱりこの3人が圧倒的にシリーズを引っ張っていくのか。それとも一角を崩してシンデレラボーイとなるべく3人に立ち向かう若武者があらわれるのか。最後の新鋭王座、いろいろな構図が浮かび上がる、興味深い一戦であるのは間違いない。あ、もちろん松尾も2度目の新鋭チャンプとなるべく、豪快にまくっちゃえ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)