BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ゲージ擦りと整備

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 篠崎仁志がゲージ擦り。「早い段階でのゲージ擦りはエンジン出ている」の法則によれば、仁志は機力に手応えを感じている、ということになる。ドリーム戦は6着大敗。だが、それは足負けではなかったということか。最初の出番が前半5Rと、時間が充分にあるわけではないのに、整備や調整ではなくゲージ擦りを優先させられるということは、文句なしに好感触ということである。

 それにしても仁志、かわいいな~。今節、僕のピットでのレース観戦ポイントは「検査員室のテレビを外からガラス越しに覗き込む」。桐生ではたいがいこのパターンだ。検査員室の隣には選手の休憩所があり、ここには多くの選手の姿がある。検査員室は整備室内、整備中の選手や整備室近くで作業をしている選手は、休憩所か整備室内に入ればレースは観戦できるわけだ。ようするに、僕と同じ場所でレースを観戦する選手はほぼ皆無。そう、仁志以外は。

 ときどき仁志はここでレースを観戦。「あぁっ、1が遅れたっ!」とか「おぉっ、逃げてる!」とか、まるでファンみたいに声をあげてレースを眺めているのだ。出走表は持参しておらず、そっと僕が広げているのを覗き込んで、誰が1なのかを確認。ふんふんふんとうなずきながら、1周2マークを全艇が通過した頃にはどこかに行ってしまう。なんか、とっても微笑ましいのである。

 元志とはまるでタイプが違うように見えるが、それでいてメキメキ強くなっているあたりがなんとも興味深い。ともかく、またここでお会いしましょうね、仁志選手。

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 ゲージ擦りは、島田賢人も行なっていた。充実埼玉軍団の精鋭にして、新鋭王座初出場の男だ。やまと学校で好成績を残したことから、デビュー当初はおおいに注目されていた島田。しかしなぜか成績はなかなかアップせずに、最後の新鋭王座にようやく間に合った。1期後輩の秋元哲や黒井達矢がすでに3回目の王座なのだから、島田自身も「ようやく」という思いは強いだろう。初日は3、4着。中間着は確保して、今日は9Rに臨む。初顔だからといって、決して侮れない存在だぞ。

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 それにしても、埼玉勢は誰もがいい雰囲気ですな。桐生順平が牽引している部分は大きいだろうが、現場で精神的支柱になっているのは黄金井力良のように見える。後輩たちとともにいて、アドバイスを送っているシーンを何度か見かけているのだ。2Rの後、逃げ切った佐藤翼がすぐに黄金井のもとに歩み寄ってもいたし。そういえば、昨年の優勝戦後、泣き崩れる翼を支えていたのは黄金井だった。水の上で桐生、陸の上で黄金井、この100期コンビが埼玉大躍進の原動力であるのは間違いないように思えるぞ。

 

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 さて、ゲージ擦りの篠崎や島田とは対照的に、本体を割っていたのは後藤翔之だ。昨日の足色、悪くないように見えたけどなあ。今日は11R1回乗り、時間がたっぷりあるからじっくり点検、の可能性ももちろんあって、直前情報にはご注意ください。ただ、本体整備が緊急に必要な選手とは思っていなかったから、後藤の様子にちょっと驚いたという次第だ。

 で、後藤のボートは、装着場の真ん中へんに置かれていた。ボートにはキャリーボディーより下の部分が装着されたままだ。ということは、後藤はここで本体を外し、おおよそ3~40mの距離を自力で運んだということか? ということで整備を終えた後藤の動きを観察していたら、たしかに本体を両手で抱えて、えっちらおっちらとボートまで運んでいるのだった。もちろん、とても重そうに。手伝ってあげたいけど、言うまでもなくそれは許されない。僕にできることは、落とさないように気をつけてね!と祈るだけである。

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 よっ、力持ち! などと眺めていたら、今度は前田将太が本体を外して、えいやっと持ち上げて両手に抱え、整備室へと運んで行ったのだった。いや~、みんな若いっすね!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)