BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島ダービーTOPICS 2日目

『新王者』の予感

 

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「山口達也って、誰っ??」

 なんていう舟券オヤジも多々いることだろう。それくらい、この若者はここ数カ月でいきなり強くなった。そして、今日1日で山口達也の名前は、全国に売れ渡ってしまった。

 まずは1R、2コースからイン白井英治をズッポシ差しきって嬉しい嬉しいSG水神祭。今日はやたらと2コースが強い1日ではあったが、それにしても冷静かつスピーディーな差しハンドルだったな。最近の強さがフロックではないことを、証明するに十分な差し抜けだった。

 

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続いて5R、今度は一変して3コースから強烈な全速ツケマイに打って出た。これでギリギリ先頭に立つと、2マークでも再び豪快な握りマイで他艇を置き去りに。見た目にもなかなか派手な勝ちっぷりであり、この握りマイ連発で山口達也ファンは激増したことだろう。

「差して俊敏、握って峻烈」というふたつの能力を1日で見せつけた達也君。なぜこれほどいきなり強くなったのか、恥ずかしながら、私は何の情報も得ていない。ただ、女子レーサー界でどんどん頭角を現している守屋美穂との結婚が、大きな発奮材料になったような気がするな。それとも、重量挙げの選手だったミポリンが、とんでもない“挙げまん”だったりして??

 はい、戯れ言はさておき、初日から④①①でシリーズ4位まで急上昇した達也君。今節のキャッチコピー『新王者、生まれる。』は、あるいは王国・岡山の超新星プリンスを暗示しているのかもしれないな。とりあえず、このシンデレラボーイが「ヤマタツ」の愛称で全国のファンに連呼される日は、そう遠くはないだろう。

 

艇聖、ぶっちぎり。

 

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 ヤマタツの差してまくっての連勝も天晴れだったが、この男の3連勝は観衆の度肝を抜くものだった。艇聖・瓜生正義。ドリーム勝利から台風を挟んで臨んだ今日2日目、瓜生の行き足はまさにタイフーーーン級に仕上がっていた。

 まずは6R、2号艇の瓜生は深川真二の前付けを入れて、3コースに構える。で、スロー3選手のスリット隊形はというと

①寺田千恵 0・13

②深川真二 0・15

③瓜生正義 0・13

 ほぼ同体、横一線と言っていい。圧巻はこの直後。わずか100mほどの間に、瓜生は完全に1艇身以上も出切ってしまったのである。内2艇の起こしがソコソコ深かったとはいえ、同体からここまで獰猛に伸びきる光景は珍しい。モーター性能が極端に違った20年前の“競艇”のようだった。もちろん、瓜生はそのまま軽々とまくりきって2連勝。

 

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 後半12Rもヤバかった。「伸びは抜群、回り足はしっくり来ない」と本人が漏らす通り、瓜生のインモンキーはやや流れ、そこに3コース魚谷智之のまくり差しがズバッと入った。完全にしてやられた。ただ、私が「ヤバかった」と言うのは、ここではない。その直後だ。魚谷の外で半艇身ほど遅れていたはずの瓜生が、ずんずんずんずん伸びて伸びて伸びて伸びて、2マークの手前で魚谷の舳先を抜ききってしまった。バックでは内の水域が伸びるはずの平和島で、外から1艇身半もやっつけてしまった。魚谷の舳先が抜けた瞬間、記者席のあちこちから異様などよめきが湧き上がった。そう、これまた近代ボートレース(特にSG)では、ほとんどお目にかかれないストレート勝負だけでの大逆転劇だった。マジで、あれはヤバいだろ~~瓜君!!??

 あとは、2マークをくるりと回って無傷の3連勝。恐るべき強さ。瓜生に『艇聖』というニックネームを勝手に付けたのは私であり、その呼称はまったくと言っていいほど浸透していないけれど、彼のクリーンな勝ちっぷりと今日のような呆れるほどの強さを見ていると、やっぱり『艇聖』という言葉が浮かんでしまうのである。

 直近3カ月の勝率、9・20超。強い強い強い瓜坊が帰ってきた。

 

やまと波動砲

 

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 今節、2マーク寄りの記者席を離れて、できる限り隣接している4Fスタンド(特別観覧席だが)からレースを見るようにしている。舟券オヤジたちの、素直な喜怒哀楽の声が耳に心地よいのだな。

 で、そんな舟券オヤジたちが道中で熱狂したレースには……ほとんど「やまと軍団」が絡んでいた。初日は桐生順平。8Rでバック5番手だった桐生は外から全速握りマイの連続で追い上げ、3番手・三井所尊春の後方2艇身まで接近した。3周1マークでは一転して突進気味の切り返しを見せ、さらに半艇身ほど差を詰める。他は縦長だっただけに、オヤジたちの視線はこの3着争いに釘付けになっていた。そして、最終ターンマークのはるか手前で、桐生が全速ツケマイの初動を起こした瞬間、ボルテージは最高潮に達した。

「うっわーーーーーっ!!」

 ほぼ一致して、こんな声だった。まさか、あんなところから握るのか、なんだコイツは、これが届くのか?? 届いてしまうのか、おいっ?? そんな思いが入り混じっての「うっわーーーーーっ!!」だ。あのターンに関しては、おそらく秋山直之のいつもの初動よりさらに早かった、と思う。オヤジどもを戦慄させた桐生のターンは、思いっきりぶん流れて逆に5着へと戻ってしまった。必死の追撃は、着順的には徒労でしかなかった。だが、あの2周を見続けたファンと、どんどん追い詰められた先輩レーサーの心に刻まれたもの。それを考えれば、決して徒労の5着ではなかったのだ。

 

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 2日目の今日は、3着の写真判定が2度あった。5Rでは4番手の茅原悠紀が、すぐ前を行く池永太を追って追って、最終ターンマークで渾身の強ツケマイを放った。わずか10センチ届かなかったが胸のすくような追撃だったし、見応え十分な「やまと競り」でもあった。

 

 

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 12Rの3着争いでスタンドを沸かせたのも、やまと91期の山口剛だ。前を行くエース西山昇一を全速マイで追って追って、最後の最後に一発勝負の切り返し。これぞ広島、これぞツヨポンという猛追撃はやはり10センチ足りなかったが、「手に汗握る」とは、こういうチェイスのために存在する言葉なのである。古豪から新鋭まで、年間を通じて高いレベルで勝ち続けたレーサーが集うダービー。それぞれの世代の色、技、心が鮮明に反映されるシリーズだなぁ、としみじみ思う写真判定でもあった。うん、やっぱダービーの道中は深く、おもしろい。(photos/シギー中尾、text/畠山)