BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――奮闘!

f:id:boatrace-g-report:20171212110053j:plain

 

f:id:boatrace-g-report:20171212110103j:plain

昨日、空手家として紹介した吉村正明だが、なんと好角家であることも判明した。

 プロペラ装着作業をしていた吉村のウェアの背中が、番付っぽいことに気づいた。「自分で作ったんですよ。相撲が好きなんで」。番付の、東の正横綱が吉村正明! 西の正横綱が白鵬で、先場所の千秋楽では白鵬を下して優勝したらしい(?)。よく見ると、ウェアの右胸には軍配があしらわれており、「ヘルメットも雲竜型なんですよ」。後部が横綱の締める雲竜型の綱のデザインなのだ。さらには「第88代横綱 吉村正明」ともしるされている(もっとも新しい横綱・日馬富士は第70代です。吉村は88期生であります)。よーし、これから吉村を「横綱」と呼びましょう!「横綱相撲、したいっすけどね~」と吉村。艇界の横綱めざしてドスコイドスコイ!

 

f:id:boatrace-g-report:20171212110148j:plain

 さて、3日目ともなればすでに勝負駆けは始まっており、選手たちの気合も高まってくるタイミング。朝イチで峰竜太と会ったので挨拶すると、なんだか素っ気なかった。昨日は峰のほうから声をかけてきて、「勝負できます!」と元気いっぱいだったのに、今日はこちらの「おはようございます」にも小さな声で挨拶を返して、さっと目をそらしてしまったのだ。俺、何か悪いことしたかなあ……とは思わない(したかもしれんけど)。勝負のかかるレースの前には、峰は自分の世界に没入するのだ。もちろん緊張もしているだろう。峰は4Rに出走。すでに勝負モードに入っているのも、ぜんぜん不思議なことではない。もし1Rや2Rに出走だったら、僕は挨拶もせずに通り過ぎているところだ。それが勝負直前の選手への礼儀だと僕は思っている。

f:id:boatrace-g-report:20171212110205j:plain

 12R1回乗りの田村隆信も、わりと素っ気ない様子だった。自艇のもとで作業をしていたので挨拶をかけたら、「ども~」と表情を変えることなく言うのみだったのだ。もしかして整備に向かおうとしているところだっただろうか……と思ったら、案の定。田村はギアケースを外し始めて、そのまま整備室へと向かったのだった。ちょうど水面での感触や、それに伴う整備の方向性などを思案しているところだったんだろうな。12Rまでたーっぷり時間があるじゃん、なんて物言いは、このクラスの選手にとっては的外れでしかない。時間があろうがなかろうが、動くべきときに素早く動くからこそ、この舞台に立てているのだろう。12Rは1号艇、有利な枠ではあっても、田村はまったく気を緩めることなどないのである。

f:id:boatrace-g-report:20171212110344j:plain

 2Rの展示が終わったあと、それまで試運転をしていた吉田俊彦がボートを陸に上げている。実に慌てた様子だったので、出走表を確認すると、3Rに登場。ということは、2Rの展示後というのは本来、ボートを展示ピットに移動させるべきタイミングである。だが、トシは陸へと戻った。試運転で気になる箇所があったようだ。

 装着場では、速攻でギアケースの調整を始めている。モーターをボートに装着したまま、しゃがみ込んでの大急ぎの作業。急ぎながらも、丁寧な作業で、ものの数分で調整を終えたトシは、またまた急いで水面へと出ていった。田村のように、時間があっても整備。トシのように、時間がなくても整備。選手たちはやるべきことをきっちりやって、レースへと向かう。トシはあと1勝で通算1000勝。中島孝平につづく水神祭に声援を!

f:id:boatrace-g-report:20171212110411j:plain

 2R、3走オール6着の徳増秀樹が、シンガリ街道から脱出した。芝田浩治の逃げ切りは許したものの、2着。ピストン1本、ピストンリング3本を交換した効果だったのか、なんとか悪すぎる流れを断ち切った格好だ。ピットに戻った徳増は、出迎えた今坂勝広に小さな微笑みを向けた。破顔一笑とならなかったのは、もちろん1着ではなかったからだろうし、まだまだ満足の域に達していないからでもあろう。それでも、6着の連鎖から解放されたことで安堵はあったはずで、それが控えめな微笑というかたちになったのだろう。ひとまず努力は形となった。徳増だけでなく、すべての選手がこの瞬間を迎えるべく、ピットでも奮闘するのである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=吉村 TEXT/黒須田)