BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――がんばれ若武者

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 昨日の共同会見(トライアル1、2戦は1着&2着の選手が行なう)で新田雄史のテンションの低さが気になった。ファインプレーと見えた2マークの先マイ逆転。しかし、それは選手の目線で見れば「不意打ち」となるらしい。ファン目線と選手目線が違うのは当然だが、ファンとしては入れる隙間に入らないほうが不満だし、だから新田はトライアルらしいレースを見せてくれたと思った。選手間では「きたないレース」と言われようとも、だ(昨日の会見での新田の第一声がそれだった)。

 今朝話した感じでは、多少引きずっている感じは否めない。もちろん、反省という意味もあろう。ただ、新田は最後に言った。「ビビってもしゃあないんで」。そう、これは1億円の奪い合いなのだ。ビビってなどいられない。今日は1号艇。先に回って後続を突き放せば、誰にも文句は言われない(きっと穴狙いに走る畠山はうがぁぁっとかうめくだろうけど)。今日は怯むことのない堂々たるレースを見せてくれると信じているぞ。

 

 

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 同期の篠崎元志の姿が整備室にあった。本体整備だ。シリーズ戦記事で平石和男のことを書いたが、元志も本体整備を頻繁にやるほうではない。部品交換も機会は多くなく、今年のSGでは一度もしていない。なにしろ、昨日のコメントはポジティブに寄ったものだったのだ。パワーへの不満は感じられない。にもかかわらずの本体整備。珍しいものを見た、と言っていいだろう。

 これが賞金王決定戦、ということだろうか。短期決戦をクリアすべく、やれることはすべてやる。しかも早い段階から動く。普段やらないことをやっても……という不安や意見もわからないではないが、選手を駆り立てる何かがあるのが賞金王だ。そして、これまでの取材の経験では、黄金のヘルメットを強く欲する者にしか栄誉は降り注がない、と思う。ただでさえプレッシャーがかかる舞台であり、それをいつも通り、平常心で乗り切ろうとすることに意味はない、ということだ。勝っている選手の大半からは、何としても勝ちたいという気持ちが伝わってきていたし、むしろ緊張を隠さない選手のほうが結果を残しているような気がする。

 つまり、元志の動きはそれで良し、と思うのだ。もちろん、さらに上積みがはかれたとするなら、文句なしである。

 

 

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 などと言いながら、毒島誠の自然体もまた、頼もしいものである。今日の毒島はかなり余裕の動きであった。その意味では、元志と正反対だ。普段通りにしているようにも見えるし、少なくとも重圧を感じているふうはない。モーターボート記念の優勝戦では、緊張を隠さないでいながら、しかし柔らかな表情もしていたから、そのときに似ているという感じもしないではない。

 ただ、今日の余裕の動きには理由がある。前検、初日の2日間、もっとも慌ただしく、あるいはもっとも忙しく動いていたのは毒島なのだ。前検では最後まで試運転をし、整備もし、だから共同会見は大トリとなった。昨日の朝も整備をとことんし、地上波放送のインタビューを受けるのもラストだった。そして、ペラ調整を展示ピットにつけるギリギリまで行ない、さらに「プラグを乾かすために1周した」という試運転まで行ない、結果、展示ピットにつけたのもいちばん最後だった。そうした道程があったから、今日は余裕をもてているのである。

 あれほどまでに忙しく動いている毒島は、あまり見た記憶がない。つまり、毒島も特別な戦いをまっとうしているのだ。だからこそ、今日の余裕は相当に脅威だと思うのだが。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)